2035年、日本は健康先進国へ~ポイントは量から価値への転換、患者の主体的選択を可能にする連携~

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保健医療2035~日本の保健医療の未来を描く提言書~

厚生労働省がサポートし、有識者を集めてワークショップ形式で議論を繰り返しまとめらた提言書です。

日本の保健医療の未来、つまり国の方向性が示されています

ヘルスケア業界で働く私にとって国の方向性を知ることは重要なので、整理してみました。

なかなか面白い内容です。

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/hokeniryou2035/


参加メンバー

平均年齢42.7歳という、次世代を担う30代から40代を中心とした、若手気鋭の有識者や、厚生労働省の職員等が参加

参加メンバー↓

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/hokeniryou2035/member/

医療政策の専門家の方だけではなく、国際的な視点や民間の視点をもった方など、多様なバックグラウンドを持つ参加者が、ワークショップ形式で議論を繰り返して策定したものだそうです。

日本医師会会長がアドバイザーとして参加しているのもポイントで、医師会としてもサポートする意図が読み取れます


何故2035年なのか?

下記が2035年とした理由です。

  • 段階ジュニア世代が65歳に到達し始める時期で、保健医療の一つの「発展形」が求められる
  • 今後20年は、社会経済状況やライフスタイルも大きな変化が継続する
  • 発展途上国の健康水準が先進国に急接近するとともに高齢化の課題に直面する
  • イノベーションサイクルが20年程度

パラダイムシフト

一番、分かりやすく、腹落ちしたのが5つのパラダイムシフトです。

量の拡大⇒質の改善

あまねく、均質のサービスが量的に全国各地のあらゆる人々に行き渡ることを目指す時代から、必要な保健医療は確保しつつ質と効率の向上を絶え間なく目指す時代への転換

インプット中心⇒患者の価値中心

構造設備・人員配置や保健医療の投入量による管理や評価を行う時代から、医療資源の効率的活用やそれによってもたらされたアウトカムなどによる管理や評価を行う時代への転換

行政による規制⇒当事者による規律

中央集権的な様々な規制や業界の慣習の枠内で行動し、その秩序維持を図る時代から、患者、医療従事者、保険者、住民など保健医療の当事者による自律的で主体的なルールづくりを優先する時代への転換

キュア中心⇒ケア中心

疾病の治癒と生命維持を主目的とする「キュア中心」の時代から、慢性疾患や一定の支障を抱えても生活の質を維持・向上させ、身体的のみならず精神的・社会的な意味を含めた健康を保つことを目指す「ケア中心」の時代への転換

発散⇒統合

サービスや知見、制度の細分化・専門化を進め、利用者の個別課題へ個別対応する時代から、関係するサービスや専門職・制度間での価値やビジョンを共有した相互連携を重視し、多様化・複雑化する課題への切れ目のない対応をする時代への転換


保健医療2035の全体像

1枚のまとめたものが下記です。

「ビジョン:2035年の保健医療が実現すべき展望」は3つの柱で構成されています。

  • リーン・ヘルスケア 医療保健の価値を高める
  • ライフ・デザイン 主体的選択を社会で支える
  • グローバル・ヘルス・リーダー 日本が世界の保健医療を牽引する

3つの柱についてポイントを整理します。


リーン・ヘルスケア 医療保健の価値を高める

パラダイムシフトの最初の2つの項目に該当するものです。

  • 量の拡大⇒質の改善

あまねく、均質のサービスが量的に全国各地のあらゆる人々に行き渡ることを目指す時代から、必要な保健医療は確保しつつ質と効率の向上を絶え間なく目指す時代への転換

  • インプット中心⇒患者の価値中心

構造設備・人員配置や保健医療の投入量による管理や評価を行う時代から、医療資源の効率的活用やそれによってもたらされたアウトカムなどによる管理や評価を行う時代への転換

具体的な内容としてNCDNCDNational Clinical Database」一般外科医が行っている手術の95%以上をカバーする症例登録)を更に普及させ、治療成績を評価し、治療成績を改善する、と記載されている点も見逃せません。

下記記事にまとめたような、医療ビッグデータの活用による質の改善が進みます。

リーン・ヘルスケアのもう一つの要素は、「地域主体の保健医療に再編する」というものです。地域のニーズに応じて、保健・医療・介護のサービスを適切の確保し、お互いが連携して、必要な人に必要なサービスを提供する、という考え方で、地域医療構想や地域包括ケアシステムともいわれています。

さらに、地域のかかりつけ医の「ゲートオープナー」機能の確立、と明記されています。これは身近な医師のところに行けば、患者の状態や価値観などを踏まえて、適切な医療を受けられるようにサポートが受けられるという考え方です。


ライフ・デザイン 主体的選択を社会で支える

患者が自らが受けるサービスを主体的に選択できる、という考えです。そのために必要な要素である、ヘルスリテラシーを高めることを支援する、と明記されました。

また自らが意識的に健康管理するための行動を支援する電子健康記録の普及も必要となります。

ライフ・デザインの中でで二つ驚きがありました。

一番驚いたのはQOD: Quality of Death(死の在り方)」の向上のための取組を進める、という記載です。いよいよ、死の在り方まで踏み込んだなあ、と感じました。

もう一つの驚きは、「たばこフリーオリンピック」「たばこフリー社会」の実現です。たばこを減らすというのはよく言われますが、「たばこフリー社会」というのは、これも踏み込んだ内容ですね。


グローバル・ヘルス・リーダー 日本が世界の保健医療を牽引する

日本が世界一の健康寿命国家となり、これを実現させる日本式保健医療サービスをグローバルに普及させる、という考えです。

「外国人が医療を安心して利用できる診療体制」という記載がありましたが、これはビジネスとしては大きなチャンスです。


安定した保健医療財源をどのように確保するのか?

私が一番課題と思ったのが、「安定した保健医療財源をどのように確保するのか?」です。

基本は、若年とシニアの負担の均衡を図ることです。

具体的な策として以下が挙げられていました。なかなか面白い案もあります。

  • 重症度に応じた負担比率

高額な手術で負担比率が低く、風邪などの症状が軽いものは負担比率を高くする、という考え方

  • 所得に応じた負担比率ではなく、所得に資産を加味して負担比率を変えるという考え方
  • 健康リスクに応じた課税

たばこ、アルコールは当たり前ですが、健康に害を与える砂糖に課税、というのが面白いです。

  • 環境税

環境により健康リスクが変わるので、環境に応じて課税するという考え方


まとめ

今後、自社がヘルスケア業界でどのような価値を提供していくのか?そのために何をすればよいのか?を考える上では下記2点がポイントになると思っています。

  • から価値への転換
  • 患者の主体的選択を可能にする連携

1点目の量から価値への転換については、下記のような「アウトカムベースの支払い」という考え方もでてきています。

2点目の連携については、企業、個人、医療機関、行政、様々な連携から患者の主体的選択をサポートすることができます。

自社の強みを生かして何ができるのか?是非考えていきたいと思います。

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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの49歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!