【ヘルスケアビジネスモデル13】手術室の効率的運用のためのサービスを提供することで消耗品の売上を伸ばす「サービス・消耗品ビジネスモデル」ホギメディカル

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ホギメディカルとは?手術用キットのパイオニア

ホギメディカル(以下ホギと略す)は、1961年に医療用記録紙の販売会社からスタートしました。

1964年には、その後の事業のベースとなる滅菌用包装紙「メッキンバッグ」を発売しました。院内感染防止に貢献する商品です。

そして次の事業として、1972年に医療用不織布を発売。当時病院では、手術着などは手術後洗浄して再利用していましたが、洗濯の手間と感染リスクがありました。そのため、同社はディスポーザブル(使い捨て)の手術用ガウン、キャップなどを開発し、感染防止を進めました。


キット化で看護師業務を効率化

さらに事業を拡大させたのが、1994年からの手術用キット製品です。

これは手術で使うディスポーザブルの医療材料をセット化したものです。手術の準備の手間を大幅に減らし、人為ミス防止、感染防止、ひいては手術の収益改善にも寄与しました。

それまで手術に必要な材料は、看護師がリストを見ながら集め、必要な材料の選択に関しては、経験と勘による所が大きかった。この準備には、ベテランの看護師が数人で作業しても、数時間かかっていました。

これをキットとして提供することで、手術直前にキットを開封するだけで済むようになりました看護師業務の改善、さらには手術室の稼働率改善などの経営上の価値を付加しました。

病院は個別部材より高いキットを購入しても、トータルで見れば効率が上がりコストが下がるためキット導入のメリットは大きいです。

またこのキットにはホギの不織布だけでなく、テルモの注射器、ファイザーのメス、ジョンソン・エンド・ジョンソンの縫合糸などの他社製品も含まれていることが特徴です。自社製品にこだわらず、顧客目線で必要な資材をキット化しているのです。

引用元:ホギメディカル ホームページ


オペラマスター

オペラマスターは、2004年にスタートしたサービスです。

手術用キット製品に手術室予定管理、適正人員配置、原価管理などの機能を持つ専用端末と、これらをサポートする社員(以下、コーディネーターと呼ぶ)が病院に駐在するサービスです。

コーディネータは、手術スケジュールなどの入力や手術用キット類の発注、手術後に原価計算を行い、必要に応じて病院の経営関連の会議において情報提供や改善提案などのコンサルティング的な役割も行います。

オペラマスターの業務フロー

オペラマスターの業務フローです(下図参照)

  • 医師は、手術予定が決まった時点で、病院に駐在するコーディネーターに連絡して相談する
  • コーディネーターは手術予定を専用端末に入力すると共に、必要な医療部材を病院に事務担当に依頼して発注する
  • キット品の発注は代理店経由でホギに連絡が入る。(キット品以外は各医療材料メーカーへ発注される)
  • ホギは発注指示に従い手術用キットを製造し、手術前日までに代理店経由で病院に納品する
  • 手術の準備ではコーディネーターがピッキングリストを作成する。そのピッキングリストに沿って看護師、看護助手がピッキング作業を行う
  • コーディネーターは手術終了後に使用した部材、人員数、手術時間などを入力し、原価計算を行い、必要に応じて経営者側に改善提案を行う

引用元 <https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/handle/10119/13948>


ホギメディカルのビジネスモデル

売上高

20163月期の売上は、366億円。1996年からの推移を見ると安定して右肩上がりの成長を続けています。

売上高の構成比率は下記3本柱で96%を占めます。

  • 滅菌用品 10%
  • 不織布 31%
  • 手術用キット製品 55%(オペラマスター含む)

主力製品はいずれも病院の手術室で使われる消耗品で、ホギは手術に特化した製品とサービスを提供しています。また粗利益率はホギが約5割にであるのに対して、同業他メーカーは12と言われています。

引用元 <https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/handle/10119/13948>

オペラマスター売上高(手術用キット製品含む)

オペラマスター(手術用キット製品含む)の売上高推移です。

2004年のスタート以来、増収を続けています

なお、オペラマスターの契約金額は病院あたり512万/月とのこと。

20163月期の契約件数は272件で、年間売上高はざっと1~3千万になります。

下記売上高構成の合計、2016年3月期で約140億と比べて、桁違いに小さいです。つまりオペラマスター単独の売上だけではビジネスとしては厳しいことが分かります。

一方、オペラマスターを通して販売される手術用キット製品の売上は20163月期で137です。手術用キット製品(図2の売上構成の赤色の部分 200億)の約7を占めます。

このことからオペラマスター単独の売上ではなく、オペラマスターの付加価値で病院との安定的な関係を築くことで、手術用キットの販売を上げ、成長につなげていると理解できます。

引用元:ホギメディカルIR資料

ホギメディカルのビジネスモデル・キャンバス

これまでの情報からビジネスモデル・キャンバスを描きました。

価値提案

提供する価値は3つあります。

  • 1点目は、キット製品と情報管理システムにより、看護師や看護助手の手術準備に関わる手間を減らすことです。
  • 2点目は、キット製品は前日までに納品されるので、病院の在庫管理の負担を低減することができます。
  • 3点目は、情報管理システムにより手術室関連の収益改善に貢献することです。

オペラマスター導入後は、コーディネーターが手術室の利用時間、手術方法ごとの部材使用状況、スタッフの配置などの情報を把握・分析し、病院経営側に提供します。

それまで不明瞭だった手術単位の会計(損益計算)が数値化され、原価管理が可能となり、病院は手術室に関する経営を効率的・効果的に行うことができるようになります。

ビジネスモデルのポイント

上記の3つの価値は、オペラマスターにより実現されます。

ところが、オペラマスター単独の売上は、主力製品の売上と比較して桁違いに小さいことが特徴です。

オペラマスターで付加価値を提供することで、病院に対しては単に医療部材の納入業者ではなく、重要なビジネスパートナーとしての関係を築くことができます。

病院と安定的な関係を築くことで、主力製品である手術用キット等の販売を拡大し成長につなげている点がこのモデルのポイントです。

この関係はジレットの「カミソリ本体+替え刃(消耗品)」やプリンターの「本体+消耗品」と類似しています。

ホギメディカルは、消耗品の販売機会を促進するために、本体の代わりにサービスを提供している点がジレットやプリンターと異なります。

すなわち「サービス・消耗品ビジネスモデル」というモデルになっています。

「手術キット製品」で手間のかかる作業をキットというモノで代替(サービスのモノ化」

「手術キット製品」の役割もポイントです。それまで手間のかかっていた看護師や看護助手の手術準備に関わる手間を削減したのは、「手術キット製品」の効果です。

顧客が困っている「準備作業」を外注化して「手術キット製品」というモノに代替したことで、顧客の困りごとを解決しています。

またこのキットには他社製品も含んでいることも特徴で、ホギの製品の押し売りではなく、純粋に顧客の困りごとをモノとして置き換え提供しています。「顧客の困りごとに着目した付加価値提供の良い例です。


まとめ

ホギの手術用キットは知っていて、オペラマスターも手術の管理システムぐらい、というイメージを持っていました。

今回ビジネスモデルを整理してみて、自社にも大変参考になりました。

自社も医療機器メーカーで主力は医療機器の販売です。新たなサービスを考えても、なかなかそのサービスだけでは大きな売上につながらない、というジレンマが生じます。

主力の医療機器の売上を拡大するための、付加的、だけれども付加価値の高いサービス、というのがポイントです。

特に「顧客の困りごとに着目した付加価値提供」という点が参考になります。

病院での自社製品の使用に際し、使用前、使用中、使用後の一連のプロセスの中で顧客の困りごとを探し、それを解決する。そこにチャンスがあります。

また、自社の製品も手術室でよく使われるので、ホギメディカルと手を組むことで、何か「顧客の困りごとに着目した新しい付加価値提供」ができるのではないか?と感じました。

ホギメディカルは、下記イメージのように、手術室だけでなく病院全体へのサービス拡充を図っています。この先の展開が楽しみな企業です。

【ホギメディカルが計画中の病院経営管理システム のイメージ】

貼り付け元  <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000021495.html>


参考資料

  • ホギメディカルIR資料

http://www.hogy.co.jp/ir/accounts.html

  • ホギメディカルにおける「サービス・消耗品モデル」 : 事例を通じた製造業のサービス化に関する一考察 ⑤

https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/handle/10119/13948

  • 「顧客は誰か」を問うことが、ビジネスモデルを考える原点

https://www.projectdesign.jp/201506/businessmodel/002156.php

  • 病院機能の向上、安全性のさらなる強化に向けた共同研究を3年計画で実施~順天堂大学とホギメディカル~

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000021495.html

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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの49歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!