【ヘルスケアビジネスモデル20】在宅医療クリニック vs 訪問看護ステーション~「住み慣れた自宅で療養生活を送りたい高齢者に在宅で医療ケアを提供」連携が重要~

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ヘルスケアビジネスモデルを紐解くワークショップ

ビジネスモデルイノベーション協会(BMIA: http://www.bmia.or.jp/ )主催の

[ヘルスケア業界のビジネスモデルを紐解くワークショップ] https://hbmia010.peatix.com/view

に参加しました。

複数の医療・介護ビジネスのビジネスモデルを一気に描くことで、ヘルスケア業界の特徴や課題、今後のビジネスチャンスを議論し、学びや気づきを得ようというものでした。

本日はその中から、下記2つのビジネスモデルを比較します。

「在宅医療クリニック」 vs 「訪問看護ステーション」


在宅医療とは?

在宅医療とは、医師や看護師、理学療法士などの医療従事者が、自宅や老人福祉施設などの患者の住まいを訪問して行う医療活動のことです。

往診と在宅医療の違い

往診と在宅医療は以下のような違いがあります。

  • 往診

患者側の要求により患者の居宅に医師などが不定期に出向いて診察や治療を行う

  • 在宅医療

計画にもとづいて定期的に訪問し、治療や経過観察をする医療行為。在宅医療には、医師が訪問して診察や経過観察を行う訪問診療、看護師が訪問してケアを行う訪問看護、理学療法士や作業療法士が行う訪問リハビリテーションなどが含まれます。

在宅医療にかかわるプレイヤー

主なプレイヤーと報酬体系が下記にまとめてあり、非常に分かりやすいです。

要介護の高齢者が在宅医療を受ける生活を続けるためには、

在宅療養支援診療所、訪問看護ステーション、保険薬局、歯科診療所(あくまで下記のケース)、介護支援サなど複合的にサービスを受ける必要があります。また登場するプレイヤー間の連携が非常に重要になることが分かります。

引用元:「在宅医療・介護連携における診療報酬と介護報酬(平成29年2月15日)」厚生労働省ホームページ


在宅医療クリニックのビジネスモデル

在宅医療クリニックとは?

「在宅医療クリニック」というのはネットで調べても完全にヒットしません。調べると、上図に出てくる「在宅療養支援診療所」ということが分かりました。「在宅医療クリニック」という方が、在宅医療を提供するクリニック(診療所)ということで分かりやすいですね。

「在宅療養支援診療所」が満たすべき要件は下記です。「24時間体制の医療ケアを提供する」というのがポイントです。

  1. 24時間連絡を受ける体制の確保
  2. 24時間の往診体制
  3. 24時間の訪問看護体制
  4. 緊急時の入院体制
  5. 連携する医療機関等への情報提供
  6. 年に1回、看取り数等を報告している

在宅医療クリニックの届出数

下図は在宅医療クリニックの届出数の推移です。

届出数は、概ね増加から横ばいで、H27年度で約14,000施設です。平成27年度の全国の一般診療所の数が約10万施設なので、そのうち14%が届出している計算になります。意外に多いですね。

また、訪問診療を行っている患者数は施設あたり「1~9人」が最も多く約30%です。

引用元:「在宅医療その2」厚生労働省ホームページ

在宅医療クリニックのビジネスモデルキャンバス

対象は、在宅医療を希望する以下のような高齢者です。

  • 住み慣れた家庭や地域で療養生活を送りたい
  • 自宅で最後を迎えたい
  • 通院できない

下記調査の結果、自宅で療養して必要になれば緩和ケア病棟や医療機関に入院、ということまで含めると、何らかの形で自宅療養希望は約6割です。

やはり住み慣れた家庭や地域で療養生活を送りたい高齢者」というのが一番のターゲットになります。

「自宅で最後を迎えたい」の回答は1割と少ないです。その理由として、家族への負担や、症状が急変した時の不安、などがあげられています。

引用元:「在宅医療その2」厚生労働省ホームページ


提供価値は「在宅で24hr体制の医療ケアを受けられること」です。在宅での医療は医療機器や材料、スタッフなどに制約があるため、治療というよりは診断やケアに重点が置かれています。

住み慣れた家庭や地域で療養生活を送りたい高齢者」のニーズにマッチした価値となっています。

計画にもとづいて定期的に訪問する関係ですが、24hrの往診体制がとれらています。

収益が複雑ですが、上に示した「在宅医療の主な報酬等算定相関図」に分かりやすくまとめられています。

医療保険でカバーされ在宅医療の基本料は以下の2です。

  • 在宅患者訪問診療料(1日につき):833点(8,330円)
  • 在宅時医学総合管理料(月1回):3,800点(38,000円)

これに診療の内容に応じた診療費がプラスとなります。

私が一番大事だと思ったのは、関係パートナーとの連携です。

「在宅医療の主な報酬等算定相関図」にも示したように、在宅医療では、在宅療養支援診療所(在宅医療クリニック)、訪問看護ステーション、保険薬局、、介護支援サなど複合的にサービスを受ける必要があります。そのため、これらのサービス提供者の連携が非常に重要となります。


訪問看護ステーションのビジネスモデル

訪問看護とは?

訪問看護とは、看護師がお宅に訪問して、その方の病気や障がいに応じた看護を行うことです。健康状態の悪化防止や、回復に向けてお手伝いします。

主治医の指示を受け、病院と同じような医療処置も行います。自宅で最期を迎えたいという希望に沿った看護も行います。

訪問看護ステーション

訪問看護ステーションは、保健師または看護師が管理者となって運営する事業所で、看護師・准看護師・保健師・助産師などがいます。また、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問看護師に代わってリハビリテーションを行っているところもあります。

訪問看護ステーションは、利用者の主治医の所属機関を問わず、訪問看護指示書の交付によってサービスを提供する地域に開かれた独立した事業所です。

保険医療機関ではありませんが、介護保険や医療保険が使えます。

訪問看護ステーションは、全国に約9,000ヵ所(2016年4月1日現在)あります。

人員基準は下記で、2.5人以上なので、3人集めればスタートすることが可能です。

人員基準 看護職員(保健師、看護師又は准看護師) 常勤換算方法で2.5以上
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士 指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数
管理者 原則として常勤である保健師又は看護師

引用元: https://www.care-advice.net/category/1473113.html

訪問看護ステーションのビジネスモデルキャンバス

訪問看護は、在宅医療のうち看護師が訪問してケアを行う訪問看護に特化したものなので、在宅医療クリニックのビジネスもモデルキャンバスと似ています。

在宅医療クリニックとの一番の違いは、提供価値やサービスが訪問看護に特化されている点です。24hr往診体制の義務もありません。

在宅医療クリニックよりもさらに療養に重点が置かれたモデルだと考えられます。

もう一つ在宅医療クリニックとの大きな違いは収益です。

上に示した「在宅医療の主な報酬等算定相関図」に分かりやすくまとめられています。

訪問看護の場合、介護保険と医療保険が利用できますが、介護認定を受けた場合は介護保険が優先されます。

介護保険の場合は、訪問看護費となり、サービス時間などにより費用が異なります。

1回20分未満のケースは3,100円です。

医療保険の場合は、訪問看護医療費となり、基本料は以下の2です。

  • 訪問看護基本療養費(1日につき):555点(5,550円)
  • 訪問看護管理療養費(1日につき):740点(7,400円)

下記に訪問看護ステーションの利用者推移を示します。

利用者が急増しているので、ニーズが高いことが分かります。

また50歳未満の利用者が全体の約1/4を占めることに驚きました。

引用元:「在宅医療その4 (2017年11月15日)」-厚生労働省

始めるのは簡単、維持するのが難しい

ワークショップ議論の中で「始めるのは簡単、維持するのが難しい」というコメントが印象的でした。

何故でしょうか?2つ理由があるそうです。

人数の維持

人員基準は2.5人以上なので、3人集めればスタートすることが可能です。

下図は、訪問看護ステーション毎の常勤換算従事者数の推移を示したものです。施設当たりの看護職員数は年々増えてきていますが、それでも平成28年度で平均4.9人です。3人や4人の施設も多くあります。

3人で始めた場合、1人かけると人員基準を維持できなくなります

看護師は女性が多く、結婚や出産などのライフイベントがあるので、人数を維持し続けることが大変です。

引用元:「在宅医療その4 (2017年11月15日)」-厚生労働省

看護師の宿命

これには驚きました。看護師は患者さんの病気を治したい、という気持ちを強く持っている方が多いそうです。訪問看護の場合は、治す(キュア)というよりはケアに重点がおかれるので、治したいけど治せない、という状況になります。そうすると精神的につらくなってやめてしまう方がいる、ということでした。


まとめ

在宅医療クリニックも訪問介護ステーションも、ターゲットは「住み慣れた家庭や地域で療養生活を送りたい高齢者」です。

いずれも提供価値は「在宅で医療ケアを受けることができること」です。

訪問看護は、在宅医療のうち、看護師が訪問してケアを行う訪問看護に特化したものとなっています。

いずれも「住み慣れた家庭や地域で療養生活を送りたい」というニーズにマッチしており、施設数や利用者数も伸びています。


参考資料

<https://carebook.jp/277>


ヘルスケアビジネスモデルを紐解くワークショップで描いたビジネスモデルキャンバス

[ヘルスケア業界のビジネスモデルを紐解くワークショップ] https://hbmia010.peatix.com/view

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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの49歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!