【治療イノベーション】様々な医療機器をインターネットでつなぐ世界初の「スマート治療室」SCOT

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様々な医療機器をインターネットでつなぐ世界初の「スマート治療室」

本日も日本外科学会からのイノベーションネタです。

東京女子医科大学などが導入するスマート手術室、別名「SCOT(Smart Cyber Operating Theater)」、

日本医療開発研究機構(AMED)の支援を受け、同大の村垣善浩教授と岡本淳講師らが12企業と5大学と開発を行っている近未来の治療室です。

引用元: https://passnavi.evidus.com/news/medical/16_10_03/170614/

各種の医療機器をパッケージ化し、ネットワークでつなぐことにより、手術中の患者の状況をリアルタイムに把握し、安全性と医療効率の向上を目指すというものです。

パッケージ化とネットワーク化による洗練された統合環境がポイントです。


スマート治療室のメリット

高度で高精度の手術を、安全かつ効率的に進めることができる

下図のように、手術に使用される医療機器をそれぞれの機能や役割に応じて、患部位置データ、術具位置データ、術野ビデオデータ、患者生体データ、その他機器データ、毎にパッケージ化します。

れらを「OPeLiNK(オペリンク)」と呼ぶシステム(下写真をクリックするとOPeLINKの動画に飛びます)で統合し、手術室全体をネットワーク化することで、手術室自体が、明確な機能を持つシステム化された「一つの医療機器」として機能します。

引用元: http://www.denso.co.jp/ja/aboutdenso/corporate/business/newbusiness/newbusinessdomain/movie/healthcare-opelink.html

これにより、医療機器の基本データや術中画像、手術器具の位置情報、患者の生体情報などを集約します。

手術の進行や患者の状態を統合的に把握するとともに、手術をナビゲートしたり、機器の稼働状況を監視したりすることで、治療の精度や安全性を高めます

また手術中に集めたさまざま情報は、術中に起きた事象の相関関係を解析するためのデータベースとして、治療のアウトカム改善や手術の効率改善につなげることができます。

このように、高度で高精度の手術を、安全かつ効率的に進めることができる手術室を実現します。

引用元: http://www.hbmeschool.info.hiroshima-cu.ac.jp/winter2017/standard7.html

医療機器の設定ミスの削減による安全性向上

電気メスやX線、麻酔器などの医療機器をインターネットでつないで連携させることで、医療事故の25%程度を占める医療機器の設定でのミスを防ぎます。

手術スタッフの負担軽減

日本が強みを持つ産業用ロボットなどの最先端の技術を活用し、手術に関わるスタッフの負担を減らします

下記動画(写真をクリックすると動画ページに飛びます)では、ロボットが術者の手の動きに追従して下から支えるようにサポートしている様子が分かります。

引用元:http://news.tv-asahi.co.jp/sphone/news_economy/articles/000077138.html


具体的な手術イメージ

迅速診断フローサイトメータで術中に迅速診断した腫瘍の悪性度の情報が、術中MRI画像に重畳して数値で表示される。筋電位(MEP)の情報も表示され、ある処理に対して術後に麻痺などの後遺症が残るリスクがどれくらいあるかを把握可能だ。

術者はこれらの情報を基に、腫瘍のどの部分をどれくらい切除するかを最適に判断できる。

切除時の電気メスの軌跡も、画像内にプロットとして表示

「手術が終わった後に、あそこの処理はどうだったと振り返るのではなく、術中にリアルタイムにフィードバックが得られる」

また2つのアームを備えたロボットで、術者の腕の動きをサポートすることで、手のふるえや疲労を軽減する。

「ロボティック手術台」は、患者を術中MRI装置のガントリー内へ自動搬送し、撮影後に元の手術位置へ正確に復帰させる。


なぜイノベーティブだと思うのか?

IoTが進んでいる現在では、このようなスマート手術室は多くの人が考えるアイデアだと思います。

病院組織は基本縦割りで、診療科が異なると手術のやり方や使う医療機器も全く異なります。そういった状況で、複数の診療科をまたいで横断的なスマート手術室を実現している点がイノベーティブです。

下記動画で、村垣教授の話がコンセプトを端的に表しています。
「これまで独立していた医療機器をネットワークでつなげ、スマート治療室そのものが単体の医療機器として機能すること。様々な情報がナビゲーションに乗ることで、判断がより早く正確にでき、不具合などのインシデントを減らすことができる。」

スマート治療室そのものが単体の医療機器となり、様々な診療科や術式への対応が可能となっています。

またコンセプトだけでなく、多くの利害関係者を巻き込むリーダーシップが重要であることは容易に想像がつきますね。


人々の暮らしをどう変えるのか?

高度で高精度の手術を、安全かつ効率的に進めることができる手術室ということで、手術のアウトカムが向上するというのが最大のメリットです。

その結果、手術を受ける患者さんのQOLが向上するという点で、人々の暮らしを変えていきます。


応用できる発想は?

様々なメーカーを巻き込み、診療科を越えた統合型の手術室ソリューションは、日本が得意とするところではないでしょうか?

開発した治療室をパッケージ化し、「”治療室産業”として、自動車に続く日本の輸出産業に育てることを目指す」(村垣氏)

というのも納得です。既に海外では、米国やロシアの医療機関がSCOTに興味を示しているということで、今後に期待できます。


2019年年度末から販売へ

基本モデルの「ベーシックSCOT」、標準モデルの「スタンダードSCOT」、最終形の「ハイパーSCOT」3モデルが開発されています。

信州大学医学部附属病院に、次世代手術室プラットフォーム「スマート治療室」のスタンダードモデルが完成しました。

引用元:https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/feature/15/327441/071100538/?ST=SP-health&P=2

2018年7月末に最初の症例として脳腫瘍摘出手術を実施し、約2年間にわたって臨床研究を行う予定です。

スタンダードSCOTは信州大学での臨床研究を経て、2019年度の事業化を目指しています

「(同モデルは)普及版であり、2019年度末から販売していく計画で、海外展開の中心的なモデルになる」(東京女子医科大学先端生命医科学研究所 教授の村垣善浩氏)

一方、東京女子医大に設置されたプロトタイプで開発が進められているハイパーSCOTは、スタンダードSCOTに加え、新規開発のロボットベッドなど治療機器のロボット化、情報のAI化を目指しています。

これらにより、高密度集束超音波(HIFU:High Intensity Focused Ultrasound)など、「全く新しい精密誘導システムを開発し、最終的にはロボットを操作する治療法に発展させたい」(村垣氏)とのこと。


参考資料

  • これが東京女子医大「スマート治療室」の全貌だ:日経デジタルヘルス

http://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/feature/15/327441/062100087/?ST=health

  • opelink Healthcareサービス紹介 /デンソー動画

http://www.denso.co.jp/ja/aboutdenso/corporate/business/newbusiness/newbusinessdomain/movie/healthcare-opelink.html

  • 東京女子医科大学 スマート治療室「Hyper SCOT」プロトタイプが完成

https://passnavi.evidus.com/news/medical/16_10_03/170614/

  • 世界初「スマート治療室」 ネットで医療ミス防止へ

http://news.tv-asahi.co.jp/sphone/news_economy/articles/000077138.html

  • スマート手術室の開発コンセプト

http://www.hbmeschool.info.hiroshima-cu.ac.jp/winter2017/standard7.html

  • 信州大にスマート治療室「SCOT」、脳腫瘍摘出手術を実施へ

https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/feature/15/327441/071100538/?ST=SP-health&P=2

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1969年生まれの49歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!