【治療イノベーション】医師の手技向上に寄与するシミュレーターの最前線

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医師の手技向上に寄与する模擬臓器&シミュレータートレーニング

本日も日本外科学会からのイノベーションネタです。

医師の手技向上のためのトレーニングについての講演が数多くありました。

手技を向上するためには訓練と経験が必要です。でも実際の患者さんで練習、という訳にはいかないですよね?

そもそも、医師はどのように手技向上を図っているのでしょうか?

いくつかトレーニングの種類があります。

  • 模擬臓器やシミュレーターを使ったドライラボトレーニング
  • 動物などの生体組織を使ったウェットラボトレーニング
  • 生きた動物を使ったアニマルラボトレーニング

ドライラボ→ウェットラボ→アニマルラボという順序で、より実際の臨床に近い状態になります。その一方、よりコストがかかり、制約が多くなります。できる施設も限られます。アニマルラボは動物愛護の問題もあり、必要最小限にとどめることが重要です。

そこで注目を浴びるのが、模擬臓器やシミュレーターを使ったドライラボです。

実臨床とは違いますが、比較的低コストで簡便に実施することができるため、繰り返しトレーニングに最適です

学会でも、ゴルフに喩えるとドライラボは打ちっぱなし実臨床であるラウンドとのギャップはあるが、打ちっぱなしの練習も効果があるので非常に重要です、と強調していました。

本日はそのドライラボに欠かせない模擬臓器やシミュレーターをいつくか紹介します。


腹腔鏡手術シミュレーター BIOTEXTURE「ファソテック株式会社」

ビデオでは、実際に腹腔鏡下手術を行うように、医療機器をお腹のポートから挿入し、棒状の医療機器を操作しながら必要な処置を行っている様子がよく分かります

  • 胆嚢摘出術

胆嚢を丁寧に切除する様子がよく分かります

  • S状結腸切除術

腸と腸間膜の展開がよくモデル化されています

  • 膵管空腸吻合

こちらは腹腔鏡下ではありませんが、吻合の具合がよくモデル化されています。

これ以外にも3次元生体モデル、臓器モデルなど、幅広いラインアップが揃っています。


心臓の拍動パターンを再現するシミュレーター BEAT「イービーエム株式会社」

心臓の拍動パターンを機械的に再現するBEAT。これに吻合手技訓練用モデルYOUCANを組み合わせて使うことで、拍動下冠動脈バイパス手術(Off-Pump Coronary Artery Bypass :OPCAB)のトレーニングができます

心拍数は(50、55、 60、 70、 80 bpm)の5段階。拍動パターン(縦揺れ、横揺れを含む)は3パターンです。拍動の振幅も(弱・中・強)の3段階に調整できます。拍動する駆動部は特殊なフレキシブルジョイントに固定されており、ワンタッチで心臓表面のあらゆる血管ポジションを再現することができます。


精密血管モデル「EVE」を用いたIVRトレーニング「FAIN-Biomedical」

テーラーメイド血管モデルの3次元造形技術 (特許技術)により、実際のCTやMRIデータから脳動脈・冠状動脈・肝動脈・腎動脈を含む全身血管を精密に再現したものが「EVE」。下写真でベッドに横たわる人型の模型です。

この「EVE」を用いることで、IVR(アイ・ブイ・アール:Interventional Radiology=インターベンショナルラジオロジー)のトレーニングが可能となりました。IVRとは、X線(レントゲン)やCT、超音波などの画像診断装置で体の中を透かして見ながら、細い医療器具(カテーテルや針)を入れて、標的となる病気の治療を行うもので、脳血管をはじめとして、様々な血管のカテーテル治療で使われています。

引用元: FAIN-Biomedical ホームページ

IVRのトレーニングシステムも開発されています。(下動画参照)

下の動画では、血管内に詰まった血栓をステントでからめとって引き抜いている様子がよく分かります。


世界初の先天性小児心疾患モデル「株式会社クロスメディカル」

CTスキャンデータを基に製作された、先天性小児心疾患の手術手技トレーニング専用モデル。

実際の手術に近い状態で切開や吻合のトレーニングが可能な、世界初のドライラボ用モデルです。

実際の手術との比較動画です。(下記リンク先、中段)

http://www.xcardio.com/products/surgery/

クロスメディカルは、心臓モデルで有名な会社です。

患者のCTデータから作製する、精密で軟質なオーダーメードの心臓モデルです。

実際の心臓に近い硬さのウレタン、また血管はそれよりも少し硬いウレタンを使用することで、実際の心臓に近いモデルとなっています。このモデルを使って、実際手術を行う心臓に近い状況で術前確認することができます


町工場が模擬臓器にチャレンジ

WBSで2つの町工場が紹介されました。

前半が「寿技研」、後半が「レジーナ」です。

食品原料を使った模擬臓器「寿技研」

凸版印刷と寿技研(埼玉県八潮市、高山成一郎社長)は、医師や医学生が手術の練習に使う「模擬臓器」を食品原料を使って共同開発しました。

柔らかさや感触が本物の臓器に近く、肝臓や胃などさまざまな臓器の形状や病態などを再現できます。

手術に使う「電気メス」や「超音波メス」といった道具を使っても実際の臓器に近い挙動を再現できるため、実践に即した練習が可能になります

また植物性食品を原料としているため使用後の廃棄が容易なほか、常温で長期保存できるというメリットもあります。

引用元 <https://newswitch.jp/p/11315>

高性能人体皮膚バイオスキン「レジーナ」

レジーナの「バイオスキン」医療教材シリーズは、独自のエラストマー樹脂加工技術により皮膚の質感や肌の弾力をリアルに再現した医学用人体模型です。

年代に合わせて人口肌の質感を変える、というきめの細かさが特徴です。

注射を指す感覚は、まさに人間の皮膚そのものまた模擬血液も出てくるというのが驚きです

引用元: https://www.bioskin.jp/item-info/bp_series/


なぜイノベーティブだと思うのか?

それぞれの模擬臓器、シミュレーターは、独自の工夫が詰まっていて、いずれもイノベーションです。いかに実際の人体に近づけるのか?がイノベーションのポイントです。試行錯誤を繰り返しながら、少しづつ人体に近づけていく、忍耐と努力の職人技ですが、この試行錯誤からイノベーションが生まれます


人々の暮らしをどう変えるのか?

医師の手技向上のトレーニングを、比較的低コストで簡便に、かつ実際の人間の身体に近い状況を模擬して実施できることで、医師の手技向上に貢献できますその結果、手術のアウトカムが向上し、手術を受ける患者さんのQOLが向上するという点で、人々の暮らしを変えていきます。


応用できる発想は?

応用というよりは発展の可能性をまとめます。

2つ方向性があると考えます。

一つ目はVR, AR, MRなどの画像シミュレーションの発展です。物理的な実物がなくても画像シミュレーションだけで、実臨床と遜色ない感触が得られるようになる日が来るかもしれません。

もう一つは、3Dプリンタと上記の模擬臓器、シミュレーターを組みあわせて、対象となる患者さんの状況を忠実に再現した模擬臓器、シミュレーターです。

すでに3Dプリンタを活用した、個別臓器モデルは使われてはじめています。

いずれも、今後急速に発展することが予想されます。


参考資料

  • 「ファソテック」「サンアロー株式会社」生体質感模擬臓器 ~BIOTEXTURE~

http://biotexture.com/service/training.html

  • イービーエム株式会社 : FUKUSHIMA PROJECT

https://ebmc.sakura.ne.jp/fukushima/index.php

  • 「FAIN-Biomedical」手術シュミレーターEVE〜IVR手技の 総合的な手術シミュレータ 「イブ」

<http://fain-biomedical.com/>

  • 「寿技研」食品原料で模擬臓器、手術練習にリアル感

<https://newswitch.jp/p/11315>

  • 株式会社クロスメディカル|心臓シミュレーターほか各種臓器モデル

http://www.xcardio.com/

  • 模擬臓器 作ったのは? 医療・健康に異業種参入のワケ:ゆうがたサテライト:テレビ東京

http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/you/smp/feature/post_145815/

  • レジーナ 高性能人体皮膚モデル

https://www.bioskin.jp

  • 「寿技研」手術トレーニング用臓器モデル 食品原料で模擬臓器、手術練習にリアル感

<http://www.tech-kg.co.jp/>

  • WetLab

https://www.wetlab.jp/products

  • 「京都科学」

https://www.kyotokagaku.com/jp/educational/products/index.html#cate_head02

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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの49歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!