【治療イノベーション】脳動脈瘤の治療~治療前にシミュレーションで最適な治療方法を選択する!~

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脳動脈瘤治療のシミュレーション

先日、脳動脈瘤の治療をシミュレーションして、破裂リスク、再発リスク、治療効果などを予測することができるという話を聞きました。

脳動脈瘤の治療機器は知ってましたが、「治療前にシミュレーションで効果を予測し、最適な治療方法を選択する」という話は初めて聞きました。

「そんなことができるんだ」という純粋な興味に加え、よくよく考えると「治療前に治療効果を予測する」というコンセプトがすごい可能性を秘めているなと思い、記事にまとめます。


脳動脈瘤治療について

まず最初に未破裂の脳動脈瘤の治療方法をまとめます。

経過観察

脳動脈瘤が小さく、破裂しなくい場所にあり、形にも問題ない場合は、経過観察となります。

クリッピング術

頭蓋骨を開頭して脳動脈瘤の根本をクリップで挟み、脳動脈瘤のこぶの中に血液が入らないようにすることで破裂を防止する手術です。

引用元 <https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_392.html>

クリッピング術は歴史のある治療法で、さまざまな形の脳動脈瘤に対応可能です。一方、侵襲度が高いため体に負担がかかり、脳動脈瘤が脳の奥にあると治療が困難になるといった短所もあります。

コイル塞栓術

脚の付け根の動脈からカテーテルを挿入し、X線透視画像を見ながら、脳の血管にまで到達させて、脳動脈瘤の中にコイルを詰める手術です。

コイルの周りに血栓ができることで、脳動脈瘤の内部を埋めて破裂を防ぎます。

コイル塞栓術は開頭しないため体への負担が軽くてすみ、クリッピング術では難しい脳動脈瘤も治療できるのがメリットです。

ただ、治療後に血栓ができて安定するまでに時間がかかる場合があります。

また、脳動脈瘤が大きい場合や、入り口が広い動脈瘤だとコイルが落ちてしまうという欠点がありました

引用元 <https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_392.html>

従来の血管内コイル塞栓術は開頭クリッピング術と比較すると、再発率が高いといわれています。しかし、2018年現在はコイルだけではなくステントも併用することで再発率を低くすることができます。なお、再発があった場合は、再度血管内コイル塞栓術を実施し、コイルを足すことによって対応します。また、最初の治療がコイルを詰めるだけだった場合は、ステントを挿入することもあります

ステントとの併用では、入り口が広い動脈瘤でもコイルが落ちてこないようにすることもできるようになってきました

引用元: https://medicalnote.jp/contents/180606-003-XF

フローダイバーター留置術

「クリッピング術」や「コイル塞栓術」では、10mmを超える大きな脳動脈瘤は破裂の危険性が高くなります。また、治療を行っても脳動脈瘤へ流入する血液を十分に遮断できずに根治しないケースや再発するケースも見られました。

この課題に対して効果が期待されるのが、2015年に新しい治療法として保険適用された治療法がフローダイバーター留置術です。

脳動脈瘤の根元の血管にカテーテルでフローダイバーターという特殊なステントを入れ、血液がこぶの中に入りにくくする治療法です。こぶの中で血液が停滞して血栓を作り、やがて血栓がコブを完全に塞いで破裂を防ぎます

体の負担が軽く、大きな脳動脈瘤や入り口の広い脳動脈瘤も治療できると期待されています。

引用元 <https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_392.html>

治療前にシミュレーションで最適な治療方法を選択する

簡単に書くと、脳動脈瘤とその周辺の血管を3次元モデル化して、 CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学で、血流を解析する手法です。

コイル塞栓術やフローダイバーターは血流を変化させ、動脈瘤への血液の流入を減らすことで動脈瘤の破裂を防ぎますしたがって血流をシミュレーションで評価することで治療効果を評価することができます。また血管内に加わる力(応力)も3次元モデルで評価できるため、破裂の可能性も予測することが可能です。

下記が予測可能です。

  • 未破裂動脈瘤の破裂リスク
  • コイル塞栓術の再発予測(11-36%は再発する)
  • フローダイバーターの治療効果

引用元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnet/11/10/11_oa.2016-0099/_pdf/-char/ja

印象的だったのは、下記2つの話です。

シミュレーションでコイル塞栓術では再発すると評価された症例があったが、患者さんが開頭クリッピング術を望まず、コイル塞栓術を選択した。コイル塞栓術は成功したが、その後再発してしまった。皮肉にもシミュレーションの効果が確認できた症例となった。

左右両方に同じくらいのサイズの脳動脈瘤が認められていた患者の動脈瘤が破裂し、くも膜下出血になってしまった。開頭して処置する必要があるが、どちらが破裂したのかは分からない状態。間違った方を開頭すると、患者さんへの負担も大きく時間もロスして危険。そこでシミュレーションの結果より破裂リスクの大きい脳動脈側を開頭して処置した。結果は大正解。シミュレーションの有効性が確認できた。


なぜイノベーティブだと思うのか?

私は医療機器を販売する会社に勤務してますが、これまでは機器の性能、機能ばかりに注目していました

脳動脈瘤治療には複数の治療選択肢があり、また効果が期待できなかったり再発のリスクもあります。さらに脳動脈瘤の位置、大きさ、形状等の複数の要素によりリスクが変わってきます。このようなケースでは最適な治療法を選択するのが容易ではなく、「治療前に治療効果を予測できる」というのは画期的です。正にイノベーティブです。


人々の暮らしをどう変えるのか?

自分が脳ドックを受けて脳動脈瘤が見つかったらどうなるでしょうか?

経過観察でよいのか、開頭なのか、コイル塞栓術なのか、フローダイバーターなのか?治療法を選択するのはドクターです。今回のようなシミュレーションの結果を考慮した上で最適な治療法を選択することが、何よりも患者さんのQOLのためになりますよね?


応用できる発想は?

実は世界で初めて「コンピュータシミュレーションによる血流解析を用いて術前情報から術後治療効果を予測する新しい医療機器」としての開発も検討されています。

また「治療前に治療効果を予測する」というコンセプトは、脳動脈瘤治療以外にも応用可能です。


脳動脈瘤・脳梗塞に関する参考資料

  • 未破裂脳動脈瘤の治療法とは?

https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_392.html

  • 数値流体力学による脳動脈瘤血管内治療リスク判定システムの開発・事業化

https://www.med-device.jp/pdf/development/vp/28-027_28.pdf

https://medicalnote.jp/contents/180606-003-XF

  • Relationships of Morphologic Parameters and Hemodynamic Parameters Determined by Computational Fluid Dynamics Analysis with the Severity of Subarachnoid Hemorrhage

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnet/11/10/11_oa.2016-0099/_pdf/-char/ja

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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの49歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!