【治療イノベーション】再生医療と医療機器のコラボレーション~遺伝子や再生細胞をピンポイントでデリバリー~

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再生医療と医療機器のコラボレーション~遺伝子や再生細胞をピンポイントでデリバリー~

医療機器メーカーに勤務する身として、将来iPS細胞などの再生医療が進むと、治療を目的とする医療機器へのニーズが少なくなってしまうのではないか?と心配になります。

最近、そんな心配を吹き飛ばすネタが2つありましたのでご紹介します。

2つとも、遺伝子や細胞をピンポイントでターゲットに届けること(デリバリー)が医療機器とのコラボレーションになります。

一つ目、遺伝子をカテーテルでターゲットの心臓部位にデリバリーします。心臓に対するカテーテルによる手技は普及した術式で、正に医療機器が得意とする領域です。

二つ目は。再生細胞薬を注射器で細胞薬を脳内にデリバリーします。脳に対しては安全性の確立した「定位脳手術」が普及しており、コラボレーションが可能です。またナビゲーションも有効です。

さらには、再生医療はベンチャーが手掛けていることも多く、安全なデリバリー技術を習得するためのトレーニングでもコラボレーションのチャンスがあります

このネタを見ると、心配どころか、逆に医療機器と再生医療のコラボレーションにより、医療機器メーカーにとってチャンスが広がる、という期待感を抱きました!


カテーテルで遺伝子を注入し心筋を再生させる

引用元: <https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/report/201808/557549.html>

最初のネタは「カテーテルを使って不全心筋に直接遺伝子を注入して、心筋梗塞や重症心不全を治す」です。

こんな侵襲性の低い再生医療技術を開発しているのが、筑波大学循環器内科学教授の家田真樹氏だ。

iPS細胞、ES細胞といった多能性幹細胞を用いず、培養・分化の手間も不要。今後、再生医療の基幹技術の1つになる可能性を秘める。

8月6日、家田氏は筑波大学で記者会見を開き、たった1つの遺伝子Tbx6を線維芽細胞に導入するだけで、心血管系細胞や骨格筋系細胞の元となる心臓中胚葉細胞に直接転換できると発表した。

心筋梗塞などで心筋細胞が壊死すると線維性組織に置き換わるが、線維性組織は拍動しないため、心不全や致死性不整脈の原因となる。

現在、心筋の再生といえば、ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)から心筋細胞を誘導する手法が試みられているが、培養や分化誘導、精製に手間やコストがかかる上、腫瘍化の懸念もある。

家田氏は、「この研究成果により、カテーテルによる遺伝子治療での心血管再生医療の可能性が開ける。また、短期間で簡単、安価に心筋が作製できるため、創薬や心毒性スクリーニングで使用可能な心筋細胞キットの実用化にもつながるのではないか」と語った。

今回の研究は、家田氏らが8年前から開発を進めている「ダイレクトリプログラミング」の技術を発展させたものだ。

わざわざ幹細胞にまで戻さず、直接目的の細胞を作る方法を探った。すなわち、心臓再生においては、心臓内に豊富にある線維芽細胞の性質(プログラム)を書き換えて心筋細胞にできれば、新たな心臓再生法につながると考えた」と家田氏。これが「ダイレクトリプログラミング」です。

同氏は2010年、マウスの線維芽細胞に3つの遺伝子を導入すると、iPS細胞などの多能性幹細胞を経ずに直接心筋細胞に分化誘導できることを見いだし、一躍世界中の研究者の注目を集めた。(図1参照)

図1 線維芽細胞から心筋細胞の作製方法:従来の方法(上)と今回用いた心筋直接誘導法(下)の比較

引用元: <https://www.jst.go.jp/pr/announce/20120829/index.html>


リプログラミングを臨床応用可能にするには、安全に遺伝子導入する必要がある

それまで3つの遺伝子をそれぞれベクターに入れていた手法を変え、SeVベクターにまとめて3つの遺伝子を入れたSeV-GMTを作製した。

家田氏は2017年にマウスの生体内への遺伝子導入による心機能改善にも成功した。

心筋梗塞モデルマウスの心臓にSeV-GMTで遺伝子を導入すると、非導入群に比べて1カ月後の心臓のポンプ機能が改善し、心筋梗塞後の線維化組織が約半分に縮小した。さらに、驚くことに、正常心筋には遺伝子が取り込まれず、梗塞部の線維芽細胞にのみ導入された。特に、正常細胞と梗塞部の境界域でよく導入された。恐らく炎症部位の線維芽細胞では、細胞表面の受容体構造などに変化が起こり、SeV-GMTが取り込まれやすくなっているのではないか」と家田氏はみている。

他臓器での心筋細胞の誘導や、不整脈といった副作用も観察されなかったという。

現在は、遺伝子治療の実用化に向け、大型哺乳動物であるブタを使ったカテーテル治療の研究を行っている

梗塞部位に直接SeV-GMTを注射できるよう、まずはカテーテルを開発。その後、安全性、有効性を確認する。この治療法の利点は、リプログラミングの工程が単純で、短時間にできること。また、iPS細胞を介さないので腫瘍のリスクがない。生体内で心筋ができるので、外科的な移植も必要ない。カテーテル治療が実用化すれば、外科手術を必要とせず心筋再生と抗線維化治療を同時に達成できるかもしれない。心臓移植が必要な患者や、高齢の重症患者への福音となるだろう」と家田氏は展望する。

図2は従来の方法の問題点(上)と今回の研究成果により得られた心筋細胞直接誘導法の利点(下)の比較したものです。将来的に、心臓カテーテル法を用いて、心臓患部に直接遺伝子を導入して心筋細胞を作製し、心臓再生医療を行うことが期待されます。

図2 将来の心臓再生医療

貼り付け元 <https://www.jst.go.jp/pr/announce/20120829/index.html>


脳梗塞に夢の新薬「SB623」 早ければ2019年中にも実用化:サンバイオ

2つ目のネタは「再生医療ベンチャー、サンバイオが開発する脳梗塞治療の再生細胞薬 SB623」、一度損なわれた脳機能は回復しないとする定説を覆す「夢の新薬」です。

引用元: <https://www.news-postseven.com/archives/20170127_480371.html>

2016年から日本で治験がスタートした。

製造過程は以下の通り。

まず一人の健康なドナーの骨髄液から、多様な細胞に分化する能力を持つ「間葉系幹細胞」を採取する。これを加工・培養して製品化し、脳内に生じた患部の周辺に直接注射すると、脳の「再生」が見込める。

夢の再生細胞薬には様々な魅力がある。

まずコスト面。細胞移植には、患者本人の細胞を利用する「自家移植」と、他人の細胞を移植する「他家移植」があるが、SB623を用いた移植は後者だ。

「自家移植は細胞の処理に時間がかかり、費用が高額になります。一方、他家移植は量産化できるので製造コストが下がり、価格が安くなります」(東京大学医学部附属病院脳神経外科の今井英明特任教授)

副作用の懸念も少ない。通常、他家移植では免疫系による拒絶反応を防ぐため、免疫抑制剤を使用する。これにより、体内の抵抗力が弱まり感染症などを引き起こすリスクが増すが、「SB623は自ら免疫応答を抑制する働きがあり、免疫抑制剤は不要」(今井氏)という。

脳の神経細胞を活性化するため、対象疾患は脳梗塞に限らず、”応用範囲”が広くなる可能性もある

「将来的にはパーキンソン病やアルツハイマー病など、認知症関連の疾患にも適用が期待できます」(今井氏)

また、凍結して病院に保存すれば、急患が運ばれてきた場合に融解してすぐ使用できる。

再生細胞薬の注入には安全性の確立した「定位脳手術」(*)を行うため身体への負担が少なく、米国の治験では手術翌日に退院する患者もいた

【*頭蓋骨に直径1㎝程度の穴を開け、脳の深い場所にある目的部位の手術・治療を行う方法】

最大の魅力は、脳梗塞で苦しむ患者や家族の負担軽減が期待できることだ。脳梗塞は後遺症が残りやすく、介護が必要になるケースもある。

「この治療の最大の目的は、患者の運動機能の回復です。完治できなくても、例えば車椅子の患者が杖で歩けるようになれば、患者や家族にとって大きな喜びです。再生細胞薬で患者のQOL(生活の質)は格段に上がるはずです」(今井氏)

政府の成長戦略のもと、2014年11月に施行された医薬品医療機器等法(旧薬事法)はSB623などの「再生医療等製品」について、製造・販売の承認手続きを簡素化した。治験の結果次第だが、早ければ2019年中にも「夢の新薬」が実用化される見通しだ。


参考資料

  • カテーテルで遺伝子を注入し心筋を再生させる

<https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/report/201808/557549.html>

  • 生体内で線維芽細胞から心筋細胞を直接作製することに成功

<https://www.jst.go.jp/pr/announce/20120829/index.html>

  • 脳梗塞に夢の新薬「SB623」 早ければ2019年中にも実用化

<https://www.news-postseven.com/archives/20170127_480371.html>

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1969年生まれの49歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!