認知症関連のイノベーション事例8つ~嗅覚を活用した認知症早期診断&改善~

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認知症予防のイノベーション事例を調べる

今、異業種共創型のイノベーションプロジェクトに参加しています。

異業種の人たちが集まって5回シリーズのワークショップを行い、少子高齢化や医療費高騰を、地域課題として解決に導くコンセプトを創出しよう、という共創イノベーションプログラムです。

テーマは「Active Aging」です。10/17に第1回を実施し、次回10/31までに参加者が個人で、ある課題について調査する宿題があります。

私の課題は「認知症予防」のイノベーション事例や関連テクノロジーを調べることです。


認知症関連の注目エリア

最初、認知症、予防、ソリューション、イノベーション、アイデアなどをキーワードとして検索してみましたが、認知症予防について驚くようなイノベーション事例が出てきません

たまたま下記レポートを目にする機会があったので、少し視野を広げるために目を通してみました。

  • HLC079D Technologies for long-term Care and Home Healthcare, BCC Research LLC 2018

認知症は、長期ケアや在宅ケアの大きな原因の一つなおで、認知症と関連の深いテクノロジーが整理できるのでは?と期待したためです。

整理した結果が下図です。

なるほど、認知症に関連するカテゴリーとテクノロジーが整理できました。

青字は、最初に検索した情報や過去の記事を基に、独自に追加したものです。

この整理した内容を参考に、認知症関連のイノベーション事例を8つ紹介します。


認知症予防に特化したベンチャーBrainCare

ブレインケアは「誇りある高齢化社会の実現」という理念のもと、創業以来、デイサービスといった介護事業者とともに認知症予防ソリューションの開発運営を行っています。

ホームページを見ても、まだ具体的なサービス内容が掲載されていませんが、下記の活動が記載されています。

  • 認知機能トレーニングを目的とした画像解析技術を基盤とする脳波測定の研究開発
  • 平均年齢84.1歳の購読者層を持つ脳トレ冊子『認活道場』を後期高齢者に提供し機能改善を図る
  • 高齢者に特化した健康データの調査やデータ解析を行う。

高齢者に特化した認知機能や運動データを解析することにより、軽度認知障害(MCI)に至るまでの状態変化の可視化に挑戦しています。

認知症に至るまでの状態変化の可視化や予防を目指している点がユニークです。

認知症予防には、脳トレのような地道なトレーニングや、食事、運動などの日常生活が重要だと考えています。

認知症予防はまだまだ未知の領域ですが、ライフデータの分析から、認知症予防に効果的なトレーニングや生活習慣が明らかにされるといいですね。


嗅覚を活用した認知症早期診断&改善

今回の調査で、一番面白いと思ったのがこのソリューションです。

香りを感じなくなったら黄色信号

なぜ香りが認知症の発見につながるのでようか?

認知症の中でも日本人に最も多いアルツハイマー型は、脳にアミロイドβの凝集体が蓄積し、記憶を司る海馬の神経細胞が減少することをきっかけに、徐々に脳の萎縮が進行するといわれています。

しかし、病理学的には、海馬よりも先に、脳の外側の嗅覚に関わる嗅内皮質が冒されることが明らかだそうです。

そのため、症状として普段から嗅いでいた香りが判別できなくなる嗅覚障害を呈します

「実際にアルツハイマー型認知症の患者に、12種類の香りを判別する試験を実施したところ、健常者と比較して嗅覚機能が有意に低下していることがわかりました」。また、認知症の重症度と嗅覚障害には相関関係もみられたという。

簡便な嗅覚異常の検査キット”はからめ”

これを応用して生まれたソリューションがこれです。

10種類の香りカプセルが塗布されたカードを指でこすり、発生した香りを4つの選択肢から選び、その正答率から認知機能の低下を推定します。

80%以上の感度と特異度があり、正答率が低い人にとっては早めに予防対策を講じるきっかけとなります。

認知機能改善に対する香りの効果

「ある香りを嗅いだ瞬間に、昔の光景や特定の人物・場所を思い出した経験はありませんか。それは嗅覚と記憶に密接な関係があるからです」。

実際に患者に対してクラリセージというアロマオイルを暴露したところ、嗅覚障害が有意に改善されたそうです

「香りを嗅ぐ」という行為が、認知症の予防や改善につながる可能性があります。

これから到来するであろう認知症1,000万人社会の救世主となるかもしれないですね。


SOS発信や通話ができるスマートな杖「iCane」

移動補助&アシスト・コール&徘徊マネジメントの機能を備えたイノベーション事例です。

高齢者や体の不自由な人にとって、体を支える杖があると歩行しやすくなります。イタリアのスタートアップが開発したのはGPSやSIMカードを内蔵したスマートな杖「iCane」です。

緊急事態の場合、ボタンひとつで特定の人にSOS発信や通話ができ、またGPS機能もあるので家族は居場所をアプリで確認することができます

取っ手の3つのボタンがSOS発信、通話、懐中電灯に

専用のアプリ(iOS、Android)を使ってiCaneに3つの電話番号を登録でき、通話ボタンを1回押すと1つめの連絡先に、2回押すと2つめの連絡先にというふうにシンプル操作で電話をかけられるようになっている。

SOS発信ボタンを2秒長押しすると、あらかじめ登録した連絡先に自動で電話がかかる緊急事態ということで、相手が電話をとるまでコールは続けられる

さらにLEDライトを搭載して懐中電灯のようにも使える。夜道でも足元を明るく照らすことで、転倒防止などに役立ちます。

GPSで徘徊マネジメント

また、高齢者にありがちなのが徘徊。家族にとって心配のタネですが、 iCaneではGPSで居場所をリアルタイムに確かめられます必要に応じて、移動ルートを確認することも可能です。


高齢者の「ヒヤリ」歩行を先端技術でアシスト

こちらは移動補助のソリューションです。自動制御機能を備えた歩行車「リトルキーパス」です。

おっと危ない。高齢者がバランスを崩しそうになると歩行車に搭載されたセンサーが異常を検知、ブレーキを自動的に作動させて、転倒を防止する

上り坂では電動自転車のようにモーターが車輪の回転をアシストして、楽に歩行できるようにする

きっかけは「乳母車に重石」

足腰の弱った高齢者が乳母車に重石(おもし)を積み、つえの代わりに使っていたのを見たことが開発のきっかけです。

「もっと安全なものを提供できないか」

そう考えた玉田会長は、高齢者に向けた新商品の開発に着手。70年、高齢者のつえの代わりになり、座って休憩したり、荷物を積んだりできる「シルバーカー(手押し車)」を発売しました。


世界が注目!膀胱の大きさの変化を捉えることで排泄を予知するロボット「DFree」

記事参照:世界が注目!膀胱の大きさの変化を捉えることで排泄を予知するロボット「DFree」


「生きがいを与える高齢者住宅」駄菓子屋のあるサ高住 銀木犀

記事参照:アジア太平洋高齢者ケア・イノベーション・アワード」で最優秀賞を受賞したサービス付き高齢者住宅(サ高住)銀木犀


イノベーションは痛みを苦しみの体験から~認知症患者の感覚をVRで疑似体験~

記事参照:イノベーションは痛みを苦しみの体験から~認知症患者の感覚をVRで疑似体験~


認知症関連のイノベーション事例調査結果のまとめ

最も印象的だったこと

  • 認知症の進行を抑える薬はあるが、治療薬はない。
  • 認知症患者は2025年に700万人、高齢者の20%
  • 日常生活のサポートが必須
  • 認知症患者にとっても「生きがい」が大事。
  • 認知症の人の状況を正しく理解する。(体験する)

現時点では予防や治療が難し、少子高齢化が進んでいるので、誰もが認知症の影響を受ける社会(自身が認知症になる。家認知症の親の介護、認知症患者が社会に与える影響)になりつつあります

これは大きなビジネスチャンスです。認知症になった場合のサポート、アシスト、対処については、困りごとが明確でソリューションも考えやすい領域です。一方予防は、認知症との因果関係が不明確でまだまだ未知の領域です。

学びとアイデアの活用

  • 認知症患者の視野や感じ方を体験することが重要。
  • 認知症患者にとっても「生きがい」が大事。できる事を取り上げない。
  • ちょっとしたサポートが大きな効果をもたらす。
  • 嗅覚を活用した認知症検知と認知症改善!
  • 認知症予防は、まだまだ未知の領域。食事や脳トレなど、日常生活が重要か?

「認知症を学ぶ」のではなく「認知症を体験する」ことで認知症のある方への理解を深めることが大事、というのが一番の学びです。


参考資料

  • 認知症予防に特化したベンチャーBrainCare

http://braincare.jp/

  • 嗅覚異常が認知症の新たなバロメーターになる/株式会社T-LAB

https://eiicon.net/articles/447

  • SOS発信や通話ができるスマートな杖「iCane」

https://techable.jp/archives/57563

  • 高齢者の「ヒヤリ」歩行を先端技術でアシスト

https://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150303/278209/041800001/


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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの49歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!