ポケモンGOで健康になれるのか?

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ICTの変革が実現する、ヘルスケア新時代

先日「ICTの変革が実現する、ヘルスケア新時代」というセミナーでポケモンGOについての講演を聞きました。講演者は下記のお二方です。

  • Niantic(ナイアンティック) アジア統括本部長 川島優志氏
  • 株式会社ポケモン 最高執行責任者 宇都宮崇人氏

「ヘルスケア」と「ポケモンGO」がどんな関係があるの?という感じですが、以前にポケモンGOで歩行数が増え健康増進につながる、という話を聞いたことがありました。そんな話だろうと思っていましたが、ポケモンGOの目指す世界とか、イノベーションを起こすヒントなど、学びの多い内容だったのでまとめてみます。


ポケモンGOは「ひきこもりを外に出すため」の手段

ポケモンGOはNiantic(ナイアンティック)と株式会社ポケモンによって共同開発されました。

Nianticという会社、初めて知ったのですが、元々Googleの社内グループからスピンアウトした会社です。

そして、このNianticの現CEOジョンハンケ氏の想いがポケモンGOのベースになっています。

ジョンハンケ氏が、自分の息子が家でゲームしながらゴロゴロ引きこもっている姿を見て、外で遊ばせよう、と考えたのがきっかけです。

「引きこもりを外で遊ばせる」ことを「ゲームで実現」しようとする発想がユニークです。普通ゲームって、外に出て遊ぶどころか?逆に家に引きこもる影響が大きいですよね。


歩いて冒険しよう~それが世界を変えることにつながる~

何故、ゲームで人を外で遊ばせるか?その答えはNianticの理念にあります。

歩いて冒険しよう~Adventure on foot~

「Niantic のミッションは、最先端の技術を使って現実の世界における人々の体験をより豊かにすること。Nianticは、発見や運動、人々とのかかわりのきっかけになるような製品を生み出します。世界をゲームに変えることで、プレイヤーたちが外に出かけ、家の近くや遠くの新しい場所を訪れ、世界を新しい観点から眺め、友だちや家族と一緒に地球全体に広がるゲームをプレーするようになることを楽しみにしています。」

これがNianticの理念です。

さらに具体的すると

  • Go outside
  • Exercise
  • Explore
  • Social
  • Change the world

のステップで表したように、“人が外に出ると、それは運動となり、新たな発見が生まれ、それが社会を動かし、世界を変える”ということになります。

引用元: https://app.famitsu.com/20170901_1129022/

この理念に従い、ナイアンティックは人が外に出て遊ぶコンテンツを作ろうと試行錯誤を開始。『Filed Trip』は失敗に終わるも、その失敗を活かしてリリースした『Ingress』で大きな成功を収める。

ナイアンティックはかねてより、よくある事業目標以外に、人をどれだけ歩かせるかという事業目標を設定しており、今年もそれは達成できる見通しだという。

この目標が、シンプルですが理念を評価する非常にパワフルな目標です。

ちなみに、『Ingress』ユーザーのみでのプレイヤー総移動距離は3億キロにもなり、これは太陽と地球のあいだを往復するような距離だという。

Ingressにより、ゲームにより人々が外に出て行動し、社会を動かすということが実証されました。その面白さと「歩かせるゲーム」という考えを引継ぎ、発展したのがポケモンGOです。


金儲けの話が出ない開発

これもNianticの理念の強さを表すエピソードです。

開発側の宇都宮氏の話です。

開発中、Niantic、特にジョンハンケ氏から口酸っぱく言われたのは

  • それでユーザーは本当に外にでるのか?

ということ、「金儲け」の話は全然出なかったそうです。

Nianticは元々Googleの社内グループだった関係で金儲けの話は非常に嫌がるそうです。なぜならば、Googleは好待遇の会社で、20%は自由時間という発想があり、目先のお金儲けには無頓着だからだそうです。

さらにNianticはそのGoogleの好待遇を捨て、理念に共感し、本気で実現しようとする人たちの集まりです。そんな人たちだから「金儲け」ではなく、常に「理念」を実現させることを第一に考えることができるのだと感じました。すごい発想です。

開発側の任天堂/ポケモン側も、理念思考で金儲けの話は後、という社風だそうです。ところが、Nianticからあまりにもお金や課金の話が出ないので、ついに「Nianticとして独立したんだから、少しは金のこと考えてよ」と話を出し、課金アイテムが実装されたそうです。

また開発にあたっては、最初に将来の理想の状況を議論し、さっさとイメージにしてしまいました。下記はポケモンGOの初公開映像ですが、当初は先にこのイメージができあがり、後追いで開発が進めらたそうです。

開発者は、こんなのできっこないとか、時間がない、お金がない、などと理想の姿とのギャップに大いに苦しんだ、とのこと。


ポケモンGOで健康になれるのか?

ポケモンGOユーザーの総歩行距離は200億キロに達したそうです。

太陽と冥王星の距離が50億キロで、これを2往復できる距離だそうです。本当に天文学的な数字になっています。

歩くことは健康の基本で、まさに第一歩です。

ポケモンGOで歩行距離が増えるのであれば、健康によい影響をもたらすことは当然期待できます。それ以外に人とコミュニケーションが増えたり、ストレスが低下するなど、定性的に健康によいとされる効果も期待できます。

そのため、今、ポケモンGOと健康との影響を評価する研究が盛んに行われています。

引用元: https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20170920-00075949/

研究1

米国ノースカロライナ州のデューク大学の研究者は、2016年6月15日から7月31日まで「ポケモンGO」をプレイした167人を対象に、その運動量を調査した(※7)。

すると、ゲームをプレイする前には平均5678(±2833)歩/日だった歩数がゲームを始めてからは7654(±3616)歩/日に増えたそうだ。

外へ出なければ成立しないゲームなので当然の結果だが、研究者は、エクササイズの代替手段としてこのゲームが推奨できるのではないか、と考えている。

青色のグラフが「ポケモンGO」を始める前の歩数で赤色のグラフがゲーム開始後の歩数。歩数の多い部分が右へズレていることがわかる。

Via:Hanzhang Xu, et al., “Does Pokemon Go Help Players be More Active? An Evaluation of Pokemon Go and Physical Activity.” Circulation, 2017

研究2

また、2016年8月1日から8月31日までの間にオンラインにより参加を募った米国在住の18歳から35歳までの男女560人を対象にした調査では、ゲームをインストールする前の平均歩数4256歩/日に比べ、インストール後の最初の週では平均955歩/日増えることがわかった、と言う(※8)。

だが、この増加は次の週から減少し続け、インストールの6週後にはインストール前のレベルにまで戻ってしまうようだ。

研究3

米国のモバイルユーザー5万人(年齢平均42歳、女性25.7%)と「ポケモンGO」ユーザー1420人(年齢平均33歳、女性3.8%)を対象にした大規模な健康調査もある。

この調査は、コーパス(言語化されたデータベース)のビッグデータと3万2000人のマイクロソフトバンド(Microsoft Band、腕時計型のヘルストラッキング端末)のデータを組み合わせて使用した。それによれば「ポケモンGO」ユーザーは、平均1473歩/日、多く歩くようになり、使用前より運動量が25%以上増加したことがわかったそうだ。

歩行距離増加には効果あり、持続性と健康への効果は今後に期待

以上の3例の研究を見ても、歩行距離や運動量増加に効果があるのは間違いありません。

特に私が凄いと感じたのは、引き込もりやシニアなど、そもそも運動をしない人たちが外に出て歩くなるようになる、ということです。

意識の高い人は、放っておいても歩きますし、運動します。

ペットを飼っている人も散歩して必然的に歩きます。

こういう人たちではなく、外に出て歩きなさい、運動しなさい、と注意してもなかなか行動しなかった人たちが、自発的に動くようになった。これがポケモンGOの一番の凄さではないでしょうか?

持続性についても否定的な研究も出ていますが、先日の話ではポケモンGOは常に進化していて、興味を持続できるよう新しい機能を追加したり、進化を続けている。持続率もあがっている、という話がありました。今後に期待です。

健康への効果については、私は絶対にあると考えています

歩行だけでなく、人と会話する、ストレス軽減、生きがい、など健康にプラスとなる要素が満載です。今後、実証するような研究がどんどん出てくると思います。

歩く、会話する、ストレス軽減、などは実は認知症予防にも効果的だと思います。

ポケモンGOで認知症改善、そんな研究成果も出てくるかもしれませんね。


まとめ:イノベーションを起こすためのヒント

今、「イノベーションを起こす組織(野中郁次郎 著)」を読んでいます。

本の内容は別途まとめますが、この中で、イノベーションの実現に必要な2つの要素として下記が挙げられています。

  • 現場リーダーの善い目的や思いを起点として共創の場づくり
  • 目的や思いを実現する集合的な実践力

今回のポケモンGOに当てはめてみます。

一つ目の「目的と思いを起点とした共創の場」は、ジョンハンケ氏の“人が外に出ると、それは運動となり、新たな発見が生まれ、それが社会を動かし、世界を変える”という想いに共感したNianticのメンバーと理念が起点となります。そしてそれを起点として株式会社ポケモンと任天堂との競争の場が創られました

二つ目の「集合的な実践力」は、人が外に出て遊ぶコンテンツを試行錯誤しながら実践する力です。『Filed Trip』は失敗に終わるも、その失敗を活かしてリリースした『Ingress』で大きな成功を収め、それを進化させてポケモンGOを開発。ポケモンGOもイメージに向かって試行錯誤、チャレンジを繰り返しながら開発を続けている

今現在も進化の足を止めていない実践力が素晴らしいです。

こうやって、開発者の理念や開発の経緯をストーリーとしてまとめてみると、このイノベーションは起こるべくして起こったものなのかな?と感じた次第です。


参考資料

  • 『ポケモンGO』を開発したナイアンティックが目指す”世界を動かすAR”【CEDEC 2017】

<https://app.famitsu.com/20170901_1129022/>

  • 「ポケモンGO」が「健康にいい」のは本当か

<https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20170920-00075949/>

  • NIANTIC ホームページ

https://www.nianticlabs.com/ja/

  • 株式会社ポケモン ホームページ

https://www.pokemon.co.jp/corporate/

  • 「ポケモンだけ」だから面白い。ポケモンにすべてを懸けるふたり

<https://newspicks.com/news/2833811/body/>

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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの49歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!