【リスク分析1】想定外を減らすには?~【マーケティング戦略&新製品導入プロジェクト1】リスク分析することで通常16ヵ月かかる新製品開発プロセスを11ヵ月に短縮した成功事例~

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何故リスク分析が効果的なのか?

プロマネトレーニングでリスク分析のセッションがあります。時間は50分で、やることはリスクの洗い出しと優先順位付け、リスクの大きいものの対応策検討という、いたって簡単なものです。

ところがトレーニング後のフィードバックでは、プロジェクトチャーター、ファシリテーションと並んでポジティブなフィードバックが多い人気のセッションです。

何故なんでしょうか?いくつ理由を考えてみると

  • 皆さん、自分自身のプロジェクトで想定外のことで痛い思いをしている。想定外というのは、世の中でよく聞かれる言葉です。想定外というよりも、想定しようとしなかった(目を背けていた)という方が真実に近いのではないでしょうか?想定外って言い訳に聞こえますよね?
  • ほとんどのプロジェクトではわざわざリスク分析なんてやらない、でも実際やってみると、思った以上にリスクは出てくるし、なるほどという納得感が大きい

ということでしょうか。

かくいう私もリスク分析なんて、いつも気をつけてるから、わざわざやらなくても、と思っていました下記プロジェクトまでは….


プロジェクトの背景

そのプロジェクトはアメリカチームとの新製品共同開発プロジェクトで、競合が新製品を出したため、通常よりもかなり開発期間を短縮することが課せられました

CEOからの強烈なトップダウンで、開発期間短縮がマストの重要プロジェクトです。

原子力関連製品で、

試作→エンジニアリング試験→機能試験(5ヶ評価)→認定試験(30ヶ工程能力評価)→量産品

というステップが厳格に定めれており通常これを行うとベストケースで16ヶ月かかります。

これを6ヶ月間短縮して10ヵ月で開発完了という強烈な要求でした。


ベストケースで16ヵ月かかるものを、どうやって6ヵ月も短縮するのか?

ベストケースで16ヵ月かかるものを、どうやって6ヵ月も短縮するのか?

これは大きなチャレンジでした。6ヵ月も短縮するには、ちょっとした改善では足りませんやり方そのものを変える必要があります。

アメリカチームの協力も得て、製造方法の見直しまで含めて幅広い情報を集めて方策を検討しました。

大きな短縮策は下記2点です。

試作品の製造方法見直し

これは大きなチャレンジでした。通常は試作品であっても、量産プロセスと同じく金型を作ってそこから製品を作ります。そうすると金型を作る時間が必要になります

ところが、当時、光造形という、金型を使わず3次元CADデータから直接製品を製造する方がありました。今でいう3Dプリンターで直接製品を製造するイメージです。

精度は通常の金型を用いる製造方法よりも劣るものの、期間は短縮できます

今回は思い切って、この光造形による試作品を使いエンジニアリング試験を行いました

直列作業を並列作業に

これはプロジェクトマネジメントの期間短縮の常套手段です。チームで、どこを短縮できるか議論を重ねました。

通常のプロセスでは、一つの試験が終わって次の試験に進むというステップです。

今回は、認定試験のロットを小さくして評価を早め、次の量産スタートを早める、といった対策をとりました。


リスク分析を要求するアメリカチーム

アメリカチームは、システム的にものを考えるので、リスク分析をやれ、としつこく要求してきました。

後で客観的に考えると当然な気もします。

6ヵ月も期間を短縮するので、上にあげたようなイレギュラーな策をとっています

例えば、光造形は、自分たちの製品にとっては初めての採用でした。

また直列作業を並列作業にするのも、かなりチャレンジでした。

つまりリスクが増加しているのは明白です。

それでも、日本チームは対応もきっちり考えてやっているので問題ない、という見解で、当初アメリカ型の要求を無視していました。ところが、あまりにもしつこいので、なかば根負けする感じでリスク分析を行いました。その主な結果が下の表です。


リスク分析の効果

プロセス 改善 効果 リスク 対応
試作 通常工程とは異なる簡易工程で製造し、エンジニアリング試験を前倒し -1ヶ月 通常工程よりも精度が低い簡易工程製品の精度

(通常品との違いによるエンジニアリング試験への影響)

通常工程品との精度を評価し、エンジニアリング試験の評価に考慮
次の機能試験用製品を通常工程で前倒し製造スタート 上に含む エンジニアリング試験後の設計変更の可能性あり 一番影響の大きい寸法については、設計変更を考慮した最大寸法(変更があってもコストミニマムで対応可)とする。
機能試験 試作時に機能試験相当の評価を実施することにより省略 -2ヶ月 認定試験での寸法はずれ 試作後の変更箇所については前工程で寸法を確認
認定試験 30個を小ロット化、結果の早期入手とフィードバック。最終製品は最初の15ヶで工程能力評価 -3ヶ月 サンプル数不足による工程能力評価の信頼性不足 重要寸法については、量産品で追加測定する。
量産品 300個 量産品の加工開始は、認定試験の最初の5個の結果でGoをかける 上に含む 品質不良の多発 量産品での検査頻度の適正化

リスクそのものは、ある程度想定したとおりのものが出てきました。

ところが対応策が想定を超えるものとなりました。

理由は、リスクを11つ個別に見るのではなく、全体を1つのプログラムとして、それぞれのリスクを低減するような対応策となっている点です。上の3つのリスクは、実際に発生しましたが、対応策のおかげで無事、ことなきを得ました。

つまり、プロジェクト全体としてリスクを最小限に抑えることができたのです。

この時の教訓は、早い段階でリスク分析を行うことの重要性です

早いほど、対応のオプションも増えるし、一旦立ち止まってまとめてリスクを洗い出したことで、リスク1つ1つに個別対応するよりも、プロジェクト全体として効果的な対策がとれることが大きな気付きでした。


リスク分析のやり方

また自分一人では想定できないリスクを洗いだせるので、チームでやることが重要です。WBSとセットで実施すると大変効果的ですので、是非、立ち止まって、リスク分析して下さい。

とにかくたくさん出すことが重要、出てこない、見えないものは潜在リスクです。

実際のやり方は下記記事を参照下さい。


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プロジェクトの結果

当初目標10ヵ月に対して、最終的には11ヵ月で300個の量産品を出荷することができました。

1ヵ月目標から遅くなりましたが、これには想定以上の変更(途中で大幅な設計変更)も含まれています。

大幅な設計変更はエンジニアリング試験の結果を反映したためで、製品機能、性能上、必要な設計変更でした。

この大幅な設計変更にも関わらず、300個の量産品をわずか11ヵ月で出荷というのは、それまでの同様な製品と比べて圧倒的に短期間での開発でした

また何よりも、この製品を早く出荷できたことで競合に対して逆にアドバンテージをとれたことが最大の成果でした。

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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの49歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!