【ヘルスケアビジネスモデル31】経済性を追求したワンストップショップ型調剤薬局「CVS Health 」 vs 自宅での服薬の困りごとの解決を狙う「PillPack」

Pocket

米国における調剤薬局のビジネスモデル

久しぶりのビジネスモデルキャンバスです。

アメリカの調剤薬局関連の2社を比較します。


CVS Health~経済性を追求したワンストップショップ型調剤薬局~

最初は、アメリカ最大のドラッグストアチェーン CVS Healthです。私もアメリカに行った時に利用したことがありますが、至るところにあります。日本にも車で走っていると〇〇ドラッグが至るところにありますが、まさにそんな感じです。

ビジネスモデルも日本のドラッグストアだと思っていましたが、かなり違うことが分かりました

CVS Healthのビジネスモデルキャンバスです。

特徴的な点を補足していきます。

価値提案

価値は大きく二つです。

  • 薬を安く提供すること
  • 「コンビニ+簡易診断(ミニッツクリニック)+調剤」のワンストップショッピングスタイル

薬を安く提供すること

日本の調剤薬局では割引きなど考えられませんが、世界では、調剤薬局は大量購買による規模の力を強化することで薬を安く調達し、割引販売することが常識だそうです。

この薬を安く調達するために一役買っているのが、PBMと呼ばれる組織です。

CVS Healthはこれを買収して自社に取り込むことで、薬を安く提供することを実現しています。

PBMについては、後述します。

「コンビニ+簡易診断(ミニッツクリニック)+調剤」のワンストップショッピングスタイル

これもアメリカの特徴ですが、CVSの店舗では簡易診療所を併設しています。この簡易診断所では、医師が常駐せず、ナース・プラクティショナー (特定看護師;NP)が診察して処方します。

患者さんは、軽症の病気であればここを気軽に受診し、処置を受け、薬を受け取れます

その人気の理由は、休日なしで予約不要であ ることと値段の安さです。

診療費は、無保険者 で一回60ドル程度、被保険者は20ドル程度で、 全ての医療保険と、メディケア、メディケイド などを利用できるのが普通です。従来の医療機 関で医師の診療を受けた場合は、無保険者で 100ドル以上はかかっていたことから、患者側 にとってその安さは非常に魅力的です。

このように、CVSに行けば、診断が受けられ、処方薬ももらえるだけでなく、日用品も買うことができます。まさにワンストップショッピングです。日本では考えられないほど便利ですね。

事業構造と収益

CVSヘルスの事業としては,ドラッグストアだけではなく薬剤給付管理(PBM; Pharmacy Benefits Management)や簡易クリニックのMinuteClinicなどヘルスケアに関わることを多岐に事業展開しています。ヘルスケアの総合企業です。

主に2つのビジネスセグメントがあります。

  • 薬局サービス(Pharmacy Services)

PBM全般の事業です。例えば,処方管理,メディケアパートDサービス、通販薬局,専門薬局,小売薬局ネットワーク管理,病気管理,医療費管理などです。

  • 小売/長期ケア(Retail/LTC)

医薬品や化粧品など,いわゆるドラッグストアで売っている物の小売事業です。その他に,処方薬や関連する薬剤コンサルティングや簡易クリニックなどが含まれます。

セグメント別の売上高、営業利益は下図の通りです。

医薬品を大量購買するPBM、小売業があるので、CVS Health全体の売上は約200 M$(20兆円超)と、とてつもない金額になっています。

それに対して営業利益の対売上比は~5%程度となっています。

収益の柱は、「薬の売上」と「ドラッグストア小売りの売上で、それ以外に「企業向け保険」や「健康管理アプリ」でも収益を上げているようです。

引用元: 簡単にCVSヘルスの企業分析をしてみた


PBM

PBM(Phamaceutical Benefit Management)という薬剤給付管理会社で、医薬品を安く仕入れ広くさばく中間業者・仲介業者です。

下図のように、PBMは、保険会社、製薬会社、薬局、医療機関、患者といった様々な利害関係者の間に立って、臨床的(疾病管理)および経済的(医薬品コストの適正化)に最高の利益をもたらすように、薬剤給付の適正マネジメントを行う組織です。

このように複雑なことをやっていますが、一番のポイントである、医薬品を安く仕入れる仕組みについて補足します。

引用元: ニューヨーク オムニチャネル視察

医薬品を安く仕入れる仕組み

医薬品メーカーとの価格交渉で重要なのが、推奨医薬品リスト(Formulary)の作成です。

リストは、まずPBM会社の中で文献調査、治験データ、臨床データ、ガイドラインの資料から作成されます。その後、社外の医師、薬剤師から構成される第三者機関によってリストが評価され、採用されます。採用されると、保険が適用されます。

重要な点は、PBMの処方箋取扱い量に応じて薬の売り上げに大きな差が出る点です。

そのため製薬メーカーはPBMの取り扱う処方箋ボリュームが多ければば多いほどその値下げインセンティブが大きくなり、大幅な値引き交渉に応じざるを得ない、という状況になっています。

このような状況であるため規模のメリットを得るため寡占が進んでいます。

上位3社だけで70%のシェアをもち、CVS HealthはPBM事業者としても第2位です。そのため医薬品を安く仕入れることができるのです。

引用元: https://www.americabu.com/pharmacy-benefit-manager


PillPack~複数の処方薬を1回分毎に個別包装してデリバリー~

PillPackはCVS Healthとは対照的に2013年に立ち上がったベンチャーです。2018年にアマゾンが買収したことでも有名な会社です。

そのビジネスモデルキャンバスです。

特徴的な点を補足していきます。

価値提案

価値は大きく二つです。

  • 複数の処方薬を1回分毎、個別包装してデリバリー
  • 服薬管理アプリ+オンラインで24hrいつでも相談

複数の薬を服用している人は、その時間になると、それぞれの袋を取り出し、例えば薬Aは1錠、薬Bは2錠、薬Cは1袋、というように必要な分量を取り出し服用しますよね。

薬Aは朝食後のみ、薬BとCは毎食後、というように薬ごとに飲むタイミングも異なります。薬の数が多くなると本当に正しい薬を正しいタイミングで服薬しているのか分からなくなりますよね。

実際、シニアの方にはこの薬のとりわけと、服薬管理は大変な労力で、家族がサポートしたりする現状があります。また飲み残しや飲み忘れも大きな課題となっています。

そんな家庭での服薬に関する悩みを解決するのが、この二つの価値です。

複数の処方薬が1回分毎必要な分量がとりわけされ、それが1回分まとめられて個別包装してデリバリーされます。一袋づつ服用する日にちと時間も記載されており、服薬する人は、その1回分だけ服薬すれば間違えることはありません。さらに薬の飲み忘れを防いでくれるアプリや、24時間オンライン相談サービスも提供しています

まさに家庭での服薬に関する悩みを解決するビジネスモデルです。

テクノロジーを使った効率的なオペレーション

薬の小分けを効率的に間違いなく実施するためのオペレーションが重要な活動になります。

具体的にはオペレーションをセンター化して、個包装分配ロボを導入し、正しく小分けされているかどうかAIを活用して確認しています。AIが間違いと判定すれば、別のオペレーター(薬剤師)が手作業で袋を詰め替えます

この独自のオペレーションシステムは「Pharmacy OS」と呼ばれ、これにより手間のかかる「複数の処方薬を1回分毎、個別包装してデリバリー」が、追加費用なしで通常の調剤料金の範囲内で実現可能となったのです。


まとめ

経済性を追求したワンストップショップ型調剤薬局「CVS Health 」 vs 自宅での服薬の困りごとの解決を狙う「PillPack」

非常に面白い比較でした。

また、アメリカの調剤薬局は、日本と比べると相当進んでいるな、という印象を持ちました。

処方薬のディスカウントや、自宅での服薬の困りごとを解決するソリューションなど、ユーザー目線でのサービスが進んでいますね。


参考資料

CVS Health

  • CVSヘルス(CVS)- 薬局とPBMの垂直統合とヘルスケア事業の多角化

https://www.americabu.com/cvs

  • ドラッグストアCVSの保険大手買収、アナリティクスやデジタル変革の行方は

https://japan.zdnet.com/article/35111870/2/

https://www.spmed.jp/14_kankei/opinion_pdf/22_op/opi_H2210.pdf

  • 簡単にCVSヘルスの企業分析をしてみた

https://hass104.blog/brief-analysis-cvs/

PBM

https://ucc.or.jp/2015/04/2397

PillPack

  • PillPack: the new kid on the block in the world of pharmacy – Technology and Operations Management

https://rctom.hbs.org/submission/pillpack-the-new-kid-on-the-block-in-the-world-of-pharmacy/

  • 「服薬の常識」と流通を変える次世代型「オンライン調剤薬局」がやってきた

https://wired.jp/2017/07/24/pillpack-pharmacy-of-the-future/

  • 剤薬局のあり方を変えるーー複数の処方薬を摂取時間に応じて個別梱包して自宅に届けてくれる「PillPack」

https://thebridge.jp/2015/09/manage-your-prescription-drugs-easier-with-pillpack


調剤薬局に関する記事

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの49歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!