【ヘルスケアビジネスモデル14】調剤薬局は放っておいても客が来て、利益が確保できる美味しいビジネス

調剤薬局の粗利が37.5%って本当?

先日参加した「ビジネスモデルオリンピア2018~循環とダイナズム~」

ビジネスモデルオリンピア201昨日、「ビジネスモデルイノベーション協会(BMIA)」:http://www.bmia.or.jp/が主催するセミナー「ビジネスモデルオリンピア2018~循環とダイナズム~」に参加しました。https://olympia04.peatix.com/?lang=ja圧倒的に秀でたゲストス...
ビジネスモデルオリンピア2018~循環とダイナミズム~からの2つの学び。「①ハブと... - お困りごと解決士の虎の巻

の中で、保健調剤薬局の客単価は 8,000円、粗利は 3,000という話を聞きました。

粗利益率は37.5%にもなります。

あれっ、ちょっと待てよ!

言葉は悪いけど、『処方箋に従って薬を袋に入れてただ出すだけ』

製造して付加価値が付くわけでもなく、保険点数が決まっていて、そもそも利益が出にくいんじゃないの?と思いました。

ということで調剤薬局のビジネスモデルを調べてみました。


調剤薬局の数はコンビニの数を上回る

調剤薬局の数は、201811日時点で58,000件。

何とコンビニの店舗数55,000件を上回ります

確かに、いたるところに調剤薬局がありますね。

患者としては、診療後すぐに薬を手に入れたい。そのため、とにかく病院の近くに薬局があれば足を運びます。私も、サービスの質などで選んでいるわけではなく、ただ単に近い、というだけの理由で診察を受けた病院の一番近くの薬局に行きます

逆にいえば、薬局としては病院の前に立地してさえおけば、病院から処方箋を持った患者がどんどん吸い寄せられてくるという状況です。

ある薬局チェーン幹部は「放っておいても患者が集まってくる。これほど楽な商売はない」とほくそ笑んでいるとのこと。

さらに粗利益は37.5%かつ医薬品販売量はずっと右肩上がりで成長してきました

コンビニのように乱立するのも当然ですね。

ただここ数年、薬剤費高騰のクローズアップされ、保険点数削減のターゲットにされており、今後は淘汰の波が来ると予想されます。


代表的な調剤薬局

調剤薬局の市場規模は2016年度時点で7.8兆円です。

シェアトップのアインファーマシーズで占有率はわずか2.8%上位7社のトータルでも12.4 % と、極めて細分化した市場です。

引用元: <http://www.mac-advisory.jp/trend/statusquo/>


調剤薬局のビジネスモデル

ビジネスモデルキャンバス

調剤薬局売上1位のアインファーマシーズを例にとりビジネスモデルキャンバスを描きました。

価値提案は、ずばり『診察を受けた病院に近い』ことで、処方された通りの薬がすぐにもらえる、という顧客のジョブを解決しています。

それ以外、特に際立った価値は感じられません。それで収益が上がるというのは、確かに旨みのあるビジネスです。

決算資料を読むと、成長戦略として、かかりつけ薬剤師・薬局へ向かいながら付加価値を高める、ということが記載されていますが、まだ形にはなっていません。

現在のところ、全国への新規出店による拡大が成長ドライバーです。

非常に単純ですが、これで右肩上がりの成長(下図参照)を続けています。ある意味すごいです。

引用元: http://www.ainj.co.jp/ir/news/presentation_170609_2.pdf

利益構造

利益構造を見てみました。ビジネスモデルキャンバスのコスト構造のところお金のブロックパズルを記載しています。

2017年4月度で

  • 売上高 2,480億
  • 粗利益 421億(粗利益率17%)
  • SG&A 275億
  • 営業利益 146億(営業利益率 6%

となっています。

他社と比較して(下図)、営業利益率が高いことが特徴です。

要因としては規模のメリットを生かしたオペレーションの効率化、仕入れ価格の抑制などが考えられます。

引用元: http://www.ainj.co.jp/ir/news/presentation_170609_2.pdf

さて、皆さんも気づかれたと思いますが、最初の疑問『調剤薬局の粗利が37.5%って本当?』に対して、アインファーマシーズの粗利益率は17%でした。

あれっ、何が違うのかな?と思って他社も調べてみると、だいたい粗利益率15%前後でした。

この違いの理由は、売上原価の計算の仕方です。

薬局で働く事務や薬剤師の給与を販管費(SG&A)として処理するか売上原価として処理するかの違いです。

  • 一般的な小売業では店舗で働く販売員の給与も販管費として処理

⇒粗利益率37.5%(最初に聞いた話)

  • 調剤薬局の事務や薬剤師の給与は売上原価として処理するのが一般的

⇒粗利益率17%(アインファーマシー)

上記の違いだということが分かりました。

ビジネスモデルキャンバスの右下、収益の流れのところに、これを模式的にまとめました。

調剤薬局の客単価を、ここでは10,000としました。

売上は、薬剤費と技術料で、それぞれ7,500円と2,500くらいと言われています。

これに対して売上原価となる薬剤費は、売上の薬剤費と比べて10%ほど安い(薬価差益)といわれています。

したがって薬剤費(売上原価)は7,500×0.9=6,750となります。

ここから粗利益(事務・薬剤師の人件費を含まない)は3,250円(32.5%となります。

最初の『調剤薬局の粗利が37.5%って本当?』は、このような想定で算出されたものです。

調剤薬局の客単価

実際の調剤薬局の客単価のデータを追記します。

メディカルシステムネットワーク社のデータですが、H293月度(全店)の処方箋単価を見ると

薬剤料7,849円、技術料2,2,99円と、ほぼ上記の計算の通りです。

引用元:メディカルシステムネットワーク 平成293月期業績説明資料


まとめ

調剤薬局のビジネスモデルを整理してみて、あらためて旨みのあるビジネスだということが実感できました。

  • 病院の前に立地してさえおけば、病院から処方箋を持った患者がどんどん吸い寄せられてくる。放っておいても患者が集まってくるという状況
  • 調剤市場は成長市場
  • 保険点数のおかげで調剤薬局の事務や薬剤師の給与を売上原価から除いた粗利益率は35%前後
  • 営業利益率は2-6%
  • 主な業務は処方箋に従って調剤する作業。多くの薬は取り扱いも用意でリスクが少ない単純作業。

そのために、コンビニの数を上回る調剤薬局が乱立し、それなりに利益をあげている、ということが分かりました。

ただ次回の2018年度診療報酬改定では、薬価部分で1.3%前後引き下げる見通しとなっていて、今後も薬価の下げ圧力は高まります。

さらに利益と比較して提供する価値が低いという批判もあり、今後、調剤薬局の差別化、淘汰の動きが加速すると考えられます。

さて、どんな付加価値を創造するサービスやビジネスモデルが生まれるでしょうか?楽しみですね。

次回は、調剤薬局に関する新しいプラットフォームを紹介する予定です。


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