【治療イノベーション】臓器を復元するティッシュ・エンジニアリング Tissue Engineering

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ティッシュ・エンジニアリングとは?

これも日本外科学会からのイノベーションネタです。

「再生医療」は、病気や事故などによって失われたカラダの組織や臓器の再生を目的とした新しい医療技術です。

中でもすでに医療現場で実用化されているものに「ティッシュ・エンジニアリング」というものがあります。

皮膚や軟骨ですでに実用化されており、患者さんへの恩恵が大きい再生医療の技術のひとつとして注目を集めています


人工的に臓器・組織を作る「ティッシュ・エンジニアリング」

ティッシュ・エンジニアリングとは「機能を失った臓器や組織の代替品を、生命科学と工学をうまく組み合わせて作り出す考えのこと」をいいます。

具体的には、患者さんの「細胞」、細胞が活動するためにとても重要な場所(骨組み scafold)を提供する「マトリックス」、私たちのからだに良い作用をもたらす栄養成分である「生理活性物質」の3つを上手く組み合わせることで、人工的に臓器や組織を作るという考えです。


ブタの胃を復元

発表では、開発した生体吸収性ポリマーを骨組み(scafold)として人工胃壁を作製し、これを切除されたブタの胃壁にパッチ状に移植、12週間後には、元々の胃と同様に再生してきていることが確認されました。

まだ胃全体を完全に再生する段階には至っていませんが、小範囲の胃がん切除の欠損の修復には使える可能性が十分に示された結果です。

引用元:Tisse Engineeringによる人工臓器作製-生体吸収材料を用いた胃、食道、胆管の復元-


進むティッシュ・エンジニアリングの研究

ティッシュ・エンジニアリングの主役は細胞です。

私たちのからだは約60兆個の細胞でできていますが、ほんの少しの組織や臓器を作りたい場合でも数億個の細胞が必要となります。そのためには、体から取り出した少量の細胞をたくさん増やす必要があります。ただし、たくさんの細胞を増やすことができたとしても、それらがからだの中にいたときのように働いてくれなければ意味がありません。

よって、細胞の働きをしっかり維持しながら大量に増やす技術がとても大切になります。

骨組みであるマトリックスも重要です。

理想的なマトリックスは、移植後にすみやかに消えていって、まわりの細胞がつくる自然のマトリックスに置き換わってくれるものですが、これに近づくために工学者を中心に多くの研究・開発が行われています。

バカンティマウス

ティッシュ・エンジニアリングを有名にしたのは、STAP細胞論文をめぐる問題で有名な米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授です。

97年、生きたネズミの背中で軟骨細胞を培養し、背中に人間の耳がついたネズミを創りだしました(下記写真)。この軟骨細胞は実際には牛のもので、生分解性の金型を使うことにより、人間の耳の形に成形したものです。この研究によって、バカンティ氏は再生医学界において先駆者と言われるようになりました。

しかし、気持ち悪いですね。

※画像はwikipediaより


ティッシュ・エンジニアリングの課題

大きな可能性を秘めるティッシュ・エンジニアリングですが、まだまだ課題があります。

臓器がきちんと働くために、細胞をきちんと並べる必要があります

皮膚や骨、軟骨などはバラバラに細胞を入れてもほとんど問題なく機能しますが、肝臓や腎臓など多種類の細胞でできている複雑な臓器では、細胞を本来の臓器と同じ順序や構造で並ばせる技術が必要となってきます

ティッシュ・エンジニアリングにより、皮膚や軟骨などすでに製品化されているものがある一方、肝臓や腎臓など複雑な臓器をつくる技術はまだ研究の段階です。


実用化されているティッシュ・エンジニアリング技術

自家培養表皮

自家培養表皮は、2007年10月、日本初の再生医療等製品として重症熱傷の患者様を対象に国から承認されました。更に、2009年1月より保険が適用されています。

患者さん自身の表皮細胞を採取し、培養し表紙細胞シートを作り、患者自身の対象部位に移植します。

表皮細胞シート

引用元: <http://saisei-navi.com/hiza/regenerative_medicine/story/index.html>

自家培養軟骨

自家培養軟骨は、2012年7月、整形外科領域では国内初となる再生医療等製品として、膝関節の外傷性軟骨欠損症と離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)を対象に国から承認されました。更に、2013年4月より保険が適用されています。

患者さん自身の軟骨を採取し、培養し培養軟骨を作り、患者自身の対象部位に移植します。

培養軟骨

引用元: <http://saisei-navi.com/hiza/regenerative_medicine/story/index.html>


なぜイノベーティブだと思うのか?

何といっても臓器が再生されるという点です。私自身はティッシュ・エンジニアリングは今回初めて知りました。iPS細胞のようにゼロから作るのではなく、骨組み(scafold)の助けを借りて細胞が再々され、臓器を再生する、という発想がイノベーティブです。

そのため骨組み(scafold)の開発がポイントとなります。

素材、形状、硬さ、溶けやすさなど、様々な組み合わせから臓器を再生するために最適な骨組み(scafold)を開発する研究が盛んに進められています。


人々の暮らしをどう変えるのか?

ガンなどの患部を切除する治療では、切除した部分の機能がなくなってしまいます

そのため患者さんのQOLが低下していしまいます。

臓器を元通りに再生することができれば、機能を奪われることなくQOLを維持することができます

ガンを完全に切除し、臓器も元通りに復元される、そんな時代が早く来て欲しいですね。


参考資料

  • ティッシュエンジニアリングとは?

http://saisei-navi.com/hiza/regenerative_medicine/story/index.html

  • Tissue Engineeringによる人工臓器作製-生体吸収材料を用いた胃、食道、胆管の復元-

http://www.jsao.org/tools/file/download.cgi/1882/45_71.pdf

  • 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング J-TEC ホームページ

http://www.jpte.co.jp/business/regenerative/cultured_epidermis.html

  • バカンティマウス STAP細胞教授の研究「恐すぎ」と話題 背中に人間の耳があるネズミを育成

<http://mogumogunews.com/2014/05/topic_6609/>

  • マウスの背中に人の耳を作ることに成功!NHKニュースに出た「耳マウス」が衝撃映像すぎる

<https://matome.naver.jp/odai/2145345367837831001>

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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!