日本の中小企業が医療機器業界で成功するためにはどうしたらよいのか?~夢を見ない、ニッチなところで「違い」を生み出す~

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中小企業が医療機器業界で成功するためにはどうしたらよいですか?

私は外資系の大手医療機器メーカーに勤めています。

仕事がら、

  • 医工連携として国内、地域の中小企業と組んで何かできませんか?
  • 中小企業が医療機器業界で成功するためにはどうしたらよいですか?

というお話を頂きます。

多くの方が「医療機器を開発したい」という夢を持っています。私も医療機器メーカーに勤務していますので、同じように「医療機器を開発したい」という想いがあります。

一方で医療機器開発は、特に侵襲度が高く、画期的であればあるほど、安全性・有効性検証のための動物実験や臨床試験に莫大なお金が必要となります。また薬事承認に時間と労力がかかります。

つまり、医療機器開発というのは大変ハードルが高いのです。大変さを示す一例を下の記事で紹介しています。

臨床使用で患者に生命の危険が及ぶようなリスクの極めて高い製品は、大手企業ではなくベンチャーが開発している。そのためには医療機器開発のエコシステムとベンチャーキャピタルが必要!

「そんな大変の中で、日本の中小企業が医療機器業界で成功するためにはどうしたらよいのか?」最近聞いた講演からヒントを得ましたので、まとめてみます。


ニッチな領域で「違い」を創る!

でも紹介している、medventure partners株式会社の池野文昭先生のお話しです。


イノベーションを起こすのは「若者×よそ者×バカ者」

イノベーションを起こす人は「若者×よそ者×バカ者」。これは非常に分かりやすいです。

  • 若者は柔軟な発想があり、リスクが取れます。そのため、いつの時代も次の世界をつくるのは若者です。
  • よそ者は新しい見方ができるので多様性をもたらします。
  • 最後に「バカ者」ですが、一言でいうと「チャレンジし続けることができる人」です。

それでは何故、チャレンジし続けることができるのでしょうか?

その前に賢い人の考え方を整理してみます。

「賢い人」は、

  • 先のことを考えて、「失敗したらどうしよう」、と考えがちです。
  • また人から何か違うことを言われても、「あっ、そういうことか」とすぐに納得しがちです。
  • そして最後は、「うーん、やっぱりやめとこう」と考えてしまいます。

「バカ者」は、その反対です。

  • 先の「成功イメージ」を考え、勝手に舞い上がってワクワクします。
  • ヒトから違うこと言われれば、「それって本当?」と徹底的に追及し、また他の人が当たり前と思っていることに対しても「それって本当?」と常識を疑います。
  • そして最後は、「人が何と言おうと、まずやってみよう」と行動に移します。

皆さんの周りにも、こんな「バカ者」いませんか?

この若者、よそ者、バカ者は、下記書籍にも書かれています。


ニッチな領域で「違い」を創る!

若者、よそ者、バカ者の3つの要素を含めてイノベーションを起こすために必要な要素を7つ挙げ、イノベーションの聖地シリコンバレーと、日本都市部、日本の地方を比較したものが下図です。

日本の地方では

  • 若者が流出
  • その地方出身者でよそ者はほとんどいない
  • 常識的な人が多く、バカ者はいない

こんな状況です。

それ以外にも人材は不足、経験も、Start-upの経験はなく、資金も少ないです。

これではシリコンバレーと同じことはできませんよね?

それでは、どこを狙えばよいのでしょうか?

シリコンバレーでイノベーションをけん引するベンチャー企業と日本の中小企業を比較します。

「ベンチャー」と「新しいことに挑戦する中小企業」は違います、という話が面白かったです。

「ベンチャー」は創業間もない事業で、ビジネスモデルも新しいもの、つまり0から1を創り出すことを目的としています。

一方で「新しいことに挑戦する中小企業」は、ベンチャーのようなリスクの高いことはできません。なぜなら、すでに従業員もいて、その人達の雇用を確保しないといけないからです。すなわち、ビジネスモデルはすでに存在し、日々の安定した収益と長期成長を目指しています

そこで医療機器開発においても、中小企業が目指すべきところは、ベンチャーが目指すような「革新的な医療機器の開発」ではありません

現場の困りごとに着目し、かつ、ちょっとした困りごとを解決するニッチな領域で、創意工夫で違いを創り出す、ことが目指すべき姿になります。

私も、医療機器開発そのものではなく、その周辺を狙うべき、と考えていましたが、正にその通りだな、と腹落ちしました。


カワニシホールディングス~臨床現場のニーズからスタートする製販企業ドリブン型医工連携医療機器開発~

医療機器卸の大手、カワニシホールディングの前島洋平社長の話からのヒントです。

医療機器卸業だけだと思っていましたが、医工連携を積極的に推進し、医療機器開発もやっていることを知りました。その取り組みが面白いのでご紹介します。

大きく3点あります。

  • 社長直轄の推進体制
  • 臨床現場の困りごとの解決にフォーカスした製販企業ドリブン型医工連携
  • 人材育成

順に紹介していきます。


社長直轄の推進体制

本社社長の直轄組織としてに学術本部を設置、その中に医工連携を担当する市場開発室とMedical Globe担当の専任者を4名配置しています。

Medical Globeは、海外の医療機器開発の最新動向をまとめた月刊誌で、目を通すだけで医療機器の最新トレンドが分かります。実は弊社も毎月購読していて、大変勉強になります。


臨床現場の困りごとの解決にフォーカスした製販企業ドリブン型医工連携

カワニシのような医療機器卸の営業は、毎日臨床現場に出入りし、医師をはじめとする医療従事者の方々とコミュニケーションしています。臨床現場の困りごと、生の声を集めるのに、これほど適した人たちはいません

そんな営業さんが集めた臨床ニーズを元に、製造販売業を持つ製販企業がリードして他の企業の協力を得ながら医療機器を開発するのが「製販企業ドリブン型医工連携」です。

グループ会社の社員もニーズ収集、市場調査、試作品使用、販路開拓などに協力しています。

特に凄いのは、吸い上げたニーズを社内のイントラネットに集約して、効果、新規性、汎用性、実現可能性、市場性、ビジネス性などの観点から評価し、ターゲットを絞りこんで開発に移している点です。

ニーズから始まり、医工連携で開発・製品化までつなげる、この一連の仕組みが素晴らしいです。おそらく、日本の製販企業で、ここまでうまく医工連携で医療機器開発をしている唯一の企業だと思います。


人材育成

人づくりは重要な要素です。

医療機器開発を経験することで人材は育成されますが、それに加えてカワニシビジネススクール(KBS)と題して継続的に教育を行っています。


フジタ医科器械~ニッチな市場だけを狙って補助金を最大限活用した医療機器開発~

売上高が約80億、従業員が約80名弱の製販企業のフジタ医科器械。前多宏信社長のお話を聞くことができました。売上の94%は代理店卸部門なので、医療機器を開発し販売する製販部門の売上はおよそ5億円になります。

この規模の売り上げで、どう医療機器の開発を進めていくのか?他の中小企業にとって一番参考になる話だと思います。


ニッチな市場だけを狙う

最初に製販部門の売り上げを拡大しようとした時には、皆さんハイスペック、ハイエンドの医療機器開発を頭に描いたそうです。でも池野先生の話にもあるように、中小企業では無理な領域なんです。

前多社長がすごいのは、誰もがやりたいと思い描くハイエンドの医療機器開発領域には手を出さないよう、社内の開発案件の範囲を決めたことです。下記5箇条です。

  • 決して背伸びをし過ぎない(1製品5億以下のニッチ市場を狙う)
  • 知財対応は必ず行う
  • ライフサイクルの長い製品
  • 競争的資金を獲得する(補助金の最大限活用)
  • 規格は必ず準拠する

5つのポイントを突いていますが、一番最初の「決して背伸びをし過ぎない」というのがすごいところです。具体的には「1製品5億以下のニッチ市場を狙う」ということです。

これなら大手は狙わないですし、「違い」を創り出すことができる領域です。


補助金を最大限活用する

もう一つ素晴らしいのは、4点目の補助金の最大活用で、本当に徹底的に活用しています。

様々な機関から複数の補助金を獲得し、翌年には前年度の開発資金に上乗せして開発資金を増やしています

また、単に開発・製造の部分だけでなく、レント費、光熱費、派遣人員費といった事業管理費も補助金を活用したり、プロモーションにも補助金を活用したり、最大限活用していることが特徴です。

参加者の皆さんも凄く驚いていましたが、そんな補助金の活用方法があるんだ、という感じでした。


まとめ

医療機器業界で成功したい、医療機器を開発したい、というと真っ先に思い浮かぶハイエンド、ハイスペックの医療機器開発。でも医工連携の中心となる中小企業にとっては無理な領域です。

私のところに話が来ても、無理だと感じていましたが、今回、複数の話を聞いて、何故無理なのか?それじゃ、どこを狙うのか?というのが、かなり明確になりました。

ニッチなところで「違い」を生み出す!

次に医工連携の話が来た時には、この点にフォーカスして医工連携を考えていきたいと思います。


参考資料

http://www.kawanishi-md.co.jp/home/index.asp

http://www.fujitaika.co.jp/

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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!