【ヘルスケアビジネスモデル32】日本での調剤薬局の新たな取り組み~「オンライン服薬指導+宅配」

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日本での調剤薬局の新たな取り組み

  • 【ヘルスケアビジネスモデル31】経済性を追求したワンストップショップ型調剤薬局「CVS Health 」 vs 自宅での服薬の困りごとの解決を狙う「PillPack」

では2つのアメリカの調剤薬局ビジネスモデルを比較しました。

本日は日本での調剤薬局の新たな取り組みについて考えます。

着目点は、「服薬指導」「宅配」の2点です。

調べてみると、似たようなビジネスがありました。3つのビジネスモデルを比較します。

「服薬指導」と「宅配」に関する規制

処方薬を受け取るためには以下のステップを踏む必要があります。

  1. 患者が病院(医師の診断により)から処方せんを受け取る
  2. 患者が処方せんを調剤薬局に渡す
  3. 患者が調剤薬局から薬の飲み方について指導を受ける
  4. 患者が調剤薬局から薬を受け取る

これらのステップのうち、①と②は「処方せんの電子化」と「電子化された処方せんのオンラインでの送信」という2つの規制緩和(の可能性)に関連します。

今回着目している「服薬指導」と「宅配」は③、④に関連します。

「服薬指導」があれば「宅配」は可能http://www.meti.go.jp/press/2017/09/20170915001/20170915001.htmlなので、「服薬指導」の規制が重要となります。

「服薬指導」は薬剤師法25条の2に規定されており、

  • [対面での服薬指導]

薬剤師法 第25条の2 薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。

薬剤師が調剤した薬を患者に渡す際に、「対面で」薬剤に関する情報提供・服薬指導を実施することが義務づけられています

現在の法規制上、「服薬指導」は、薬剤師と患者が対面で実施しなければならないことになっています。

この「服薬指導は対面でなければならない」という原則は現在、国家戦略特区として認定された地方自治体のみという限定つきですが、「テレビ電話で行っても構わない」という形で規制緩和されてきています。

つまり許可された特区では「オンライン服薬指導」が可能となっており、このビジネスモデルもご紹介します。


アインHD:オンライン服薬指導+処方薬の宅配

1つ目のビジネスモデルは、許可された特区で可能となった「オンライン服薬指導」と「処方薬の宅配」を組み合わせたビジネスモデルです。

調剤薬局最大手のアインホールディングス(HD)が愛知県の特区で実施しています。

患者さんは「特定処方箋」を郵送で薬局に送付します。

特定処方箋を受け取った薬局は患者と電子メールや電話で服薬指導の日時を決め、予約日に患者と薬局の薬剤師がログインし、映像や音声を確認してから服薬指導を実施する(オンライン服薬指導)というものです。

調剤した薬は原則、当日中に配送手配を行い、患者が受け取ったかどうか伝票番号等で確認します(処方薬の宅配)。銀行振込など予め取り決めた方法で会計を終える。

このビジネスモデルキャンバスです。

価値提案は2つです。

  • 店舗に出向かずに処方薬を受け取ることができる(患者さんへの価値)
  • 薬剤師の負担軽減(他の2つのビジネスモデルと比べて訪問する必要がない)

メディカルシステムネットワーク社:日本郵便と連携し処方薬宅配

2つ目のビジネスモデルは、メディカルシステムネットワーク社が日本郵便と連携して実施している処方薬の宅配です。

このビジネスモデルは、薬剤師による訪問服薬指導をベースにしています。

薬剤師が在宅処方を行う際、服薬指導を終えた後の処方薬を調剤薬局から郵便局が集荷し、在宅患者の自宅や居住施設へゆうパックで配達する流れです。

訪問して服薬指導するので、「訪問薬剤師と違って、どんなメリット(価値提案)があるのか?」

という点が気になります。

価値提案は2つです。

  • 重量物の運搬に係る薬剤師の負担軽減
  • 薬剤師の負担軽減の結果、服薬指導に集中することで服薬指導のサービス向上

訪問薬剤師は、重量のある輸液・栄養剤等も持っていくので、この負担に着目したサービスです。ただ、2点目の服薬指導のサービス向上につながるのか?というのは個人的には疑問です。

ビジネスモデルキャンバスは下記になります。


ミナカラ薬局:スマホで処方箋撮影して注文すると薬が宅配で届く

3つ目のビジネスモデルは、ベンチャーのミナカラ薬局が提供する宅配サービスです。

「スマホで処方箋撮影して注文すると薬が宅配で届く」というサービスで、一番シンプルな宅配の形です。

あれっ、薬剤師による服薬指導はどうしているの?と疑問に思いませんか?

このサービスの面白い点は、薬剤師が宅配し、薬の配達と一緒に対面で服薬指導を行う」点です。

利用者はまず「おくすり宅配アプリ」で処方箋を写した画像を送信します。注文を受けた提携薬局の薬剤師が調剤の上、30分~3時間でバイクなどを使って宅配し、患者らと対面して薬の説明など服薬指導を行う、という流れです。

ビジネスモデルキャンバスは下記です。

価値提案は2つです。

  • 店舗に出向かずに処方薬を受け取ることができる(患者さんへの価値)
  • 対面での服薬指導(安心感)

まとめ

3つのビジネスモデルを比較・整理しました。

  • 処方箋発行
  • 服薬指導
  • 宅配

の3つの要素を比較しています。あわせて、規制と、訪問薬剤師、アメリカの例を比較します。

①処方箋発行 ②服薬指導 ③宅配
規制 ×医師 〇薬剤師(対面、特区でオンライン可 〇薬剤師の服薬指導があれば
アインHD ×医師 オンライン服薬指導 〇宅配業者
メディカルシステムNW ×医師 訪問薬剤師 〇宅配業者
ミナカラ薬局 ×医師 〇薬剤師が宅配時に服薬指導 〇薬剤師が宅配
訪問薬剤師 ×医師 訪問薬剤師 〇訪問薬剤師
アメリカ 〇簡易診断所 オンライン可

訪問薬剤師を含めて日本の4つのビジネスモデルは、全て「自宅にいながら服薬指導を受け、処方薬を受け取ることができる」という点で、患者さんが受ける価値としては大きな差はないように感じます。

そこでアメリカと比較してみます。

違いが大きく2点です。

  • 処方箋発行と合わせてワンストップのサービスが可能

アメリカの調剤薬局は簡易診断所を備えているところもあり、処方箋の発行から宅配までワンストップのサービスが可能です。

日本でもオンライン診療と組み合わせてワンストップサービスになると大きな価値が提供されますが、残念ながら現時点ではまだ実現できていません。

  • 薬を安く提供する(自由競争)

日本の4つのビジネスモデルでは、アインHDのモデルが、薬剤師の訪問がないため、一番コストがかからないと考えられます。ところが患者が支払う費用は、4つのビジネスともに、薬剤費+調剤費のみで、ほぼ変わりません

そのため、患者さんが受ける価値として大きな差がなくなり、特に薬剤師の負担を軽くするような新しいサービスの普及が進まなくなってしまうと感じました

アメリカと比べると、まだまだ遅れているな、という改めて感じました。


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参考資料

法規制

  • 遠隔診療の法的整理 〜連載第3回 遠隔診療における医薬品の処方〜
  • 薬局の配達は違法じゃない?|薬局業務NOTE
  • 薬局における待ち時間を短縮する薬剤の販売方法の導入に係る医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の取り扱いが明確になりました~産業競争力強化法の「グレーゾーン解消制度」の活用~
  • 処方薬、自宅で入手可能に 在宅医療を後押し 20年度めど、スマホで服薬指導: 日本経済新聞

遠隔服薬指導

  • 遠隔服薬指導、調剤報酬確定し初の実施へ:DI Online
  • 【アイン薬局/愛知県特区】遠隔服薬指導のデモ公開‐離れた場所から患者に説明 : 薬事日報ウェブサイト
  • 処方薬、ネットで指導: 日本経済新聞

処方薬の宅配

  • 日本メディカルシステムネットワークと日本郵便
  • 日本郵便、メディカルシステム社と連携し処方薬宅配 – Logistics Today|国内最大の物流ニュースサイト
  • ミナカラ薬局
  • スマホで処方箋撮影・注文→30分で薬を宅配 ベンチャー開発「おくすり宅配アプリ」 ミナカラ薬局- 産経ニュース
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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!