AI vs 教科書が読めない子どもたち~AIに仕事を奪われる人とAIを活用する人の違い~

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AI vs. 教科書が読めない子どもたち(新井紀子[著])

書店で手にとって少し読んでみたら面白かったので購入しました。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち(新井紀子[著])

著者の新井紀子さんは数学者で東京大学合格を目指すAIロボット「東ロボ君」プロジェクトのリーダーです。

「東ロボ君」は、最初から東大合格は無理、という想定のもと、東大合格が目的ではなく

  • AIがどこまでできるようになるのか?
  • AIでどうしてもできないことは何か?

を解明することでした。

本書では、AIの弱点をまとめ、AIに勝つために必要な教育論を展開しています。

ざっと中身に目を通したあとで、自分で3つの問いをたて、それに対する答えを本書から探索しました。


AIが人間に及ばない理由は何か?

AIの最大の弱点は「意味が分からないこと」

下記の文章の意味の違いは、人間だと明らかに分かりますが、AIには区別できない。

  • 先日、岡山と広島へ行ってきた(岡山県と広島県に行ってきた)
  • 先日、岡田と広島へ行ってきた(岡田さんと一緒に広島県に行ってきた)

何故、意味が分からないか?というと、AIはあくまで計算機で、数学論理、統計、確率で表せる数学に基づいて計算しているだけで、意味を記述する方法がないから。数式で表せないものはAIでは計算できない。

現代数学で人間の知能を全て記述することは不可能であり、従って、現在の延長線上に、人間を超えるような人工知能は産まれない。

また、意味が分からないことに加えて下記の弱点がある。

  • 万個教えられて、ようやく一を学ぶ

例えば、画像で「いちご」を識別しようとしたらビッグデータからあらゆるパターンの「いちご」の画像を学んで、いちごの特徴量を抽出することで、ようやく「いちご」が識別できようになる

  • 応用がきかない
  • 限定されたフレームでした計算処理できない

このような弱点があり、人間には及ばない現状のAIですら、MARCHレベルの大学には合格可能であり、大学進学希望者上位20%の力を実現している。

これ以上の実力向上は難しいものの、このAI技術で代替可能な職業は広汎に及び、現在の放射線の画像診断や銀行の与信審査なども代替可能である。そうなると、AI技術で代替可能な職業にある人々の大量失業時代が迫っている。


何故AIを教科書が読めない子供たちと比較するのか?

その理由は、「教科書を読めない子どもたち」は、AIにより代替される仕事以上のことはできないため、AIに仕事を奪われ失業者となってしまう、から。

AIの弱点に対して、人間の強みは「意味を理解できること」

  • 1を聞いて10を知る能力
  • 応用する柔軟性
  • フレームに囚われない発想力

を持っていること。

このような人間の強みを発揮できれば、AIに代替されるのではなくAIを使う立場で仕事ができる

この基本となるのが「文章読解力」

ところが基礎的読解力を評価するRST(リーディングスキルテスト)を開発し、実際に全国の中学生、高校生を評価してみると、基本の文章読解力が決定的に不足していることが明らかとなった

基本の文章読解力は、係り受け解析、照応解析、同義文判定、推論、イメージ同定、具体例同定などからなる。

中学3年生の評価結果を項目毎にまとめたのが下表。

数値はランダム率(サイコロを振って正解が出せる程度の正答率しかない人の割合)で、「その内容が理解できない人の割合」となる。

係り受け解析 何がどうした(下の絵問2) 18.3
照応解析 それ、これが何を指すか 15.6
同義文判定 同じ意味の文を判定 70.2
推論 エベレストは世界で最も高い山である

エルプルス山はエベレストより低い

43.4
イメージ同定 下の絵問1 31.1
具体例同定(数学) 偶数を全て選びなさい 79.4

最初の2つ、係り受け解析と照応解析は、AIもよくできる問題

一方、下の4つはAIが苦手な項目で、AIと差別化する上では人間にとって重要な能力

ところが、同義文判定や具体的同定(数学)などは、70%以上の中3生徒ができない、という結果となった。

つまり、AIの弱点に対して、人間の強みである「意味が分かる」の基本となる読解力がなくなってきている、ことになる。

「教科書を読めない子どもたち」は、AIにより代替される仕事以上のことはできないため、AIに仕事を奪われ失業者となってしまう。


人間がAIに勝つために必要なことは?

人間がAIに勝つためには「基本の読解力」をつけることが一番重要。

それでは、どうすれば「基本の読解力」をつけることができるのでしょうか?

RSFでは、国公立大学Sクラス(難関大学)に入るような子供たちは、基本の読解力を持っていることが確認されました。

一方で、基本の読解力は、読書習慣、学習習慣、習い事などとは相関がないことも明らかになりました。

この本では、基本の読解力を上げるための様々な仮説を検証中とのことで、明確な答えは示されていません。

いくつか具体的な事例から読解力向上のヒントが示されています

  • 埼玉県戸田市では先生もRSTを受験し、生徒がどこでつまずいたか?確認し、どうすれば読解力が向上するのか、先生同士で議論することで、結果として生徒の読解力があがった
  • 他の人が作った問題の妥当性と回答が適切であることを検討することを課題として与えれた人の読解力が向上した

まとめ

AIの最大の弱点は「意味が分からない」、逆に人間の強みは「意味が分かること」という主張と、グーグル翻訳などの具体的事例は非常に分かりやすいです。

ただし、数式で表現できないことはAIで計算できない、という点については注意が必要です。

何故なら、コンピューターは、数学的・論理的に解けない問題でも、その圧倒的な処理量を用いて試行錯誤で答えを探し出すことができるからです。

数学的とも論理的とも言えないアプローチですが、それを超高速でこなすことで、人間が数学を駆使しても辿り着くことのできない答えにたどりくことができるのがコンピュータの強みです。

詳しくは、参考記事(新井紀子教授はAIの専門家ではない 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』)を参照下さい。

ただ、コンピューターに何をやらせて、それを意味付けるのは、やはり人間です。

そのためには、やはり「基本的な読解力」は非常に重要だと考えます。

「基本的な読解力」を向上させるためには、私自身は下記の繰り返しが重要だと思います。

  • インプットの質
  • 何故そうなのかを考える
  • アウトプット
  • 振り返り

インプットは、例えば新聞記事や著名な本を読むのか、漫画を読むのか、テレビを見るのか、体験するのか?などいろいろあります。様々なインプットソースの中から、質の高い情報をインプットすることが重要です。

次に単にインプットするだけでなく、自分なりの仮説をたて、何故そうなのかを考えること、さらにそれをアウトプットすることで、論理的に物事を考えられるようになります。

そして、それを振り返り、繰り返すことで基礎的な読解力が向上するのではないでしょうか?


参考資料

  • AIで東大目指した「東ロボくん」開発者がTEDで語った危機感

<https://www.businessinsider.jp/post-104443>

  • 新井紀子教授はAIの専門家ではない 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

<https://mywarstory.tokyo/inconvenient-truth/>

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1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!