【ヘルスケアビジネスモデル45】スマホで病気を治す時代に~ニコチン依存症治療アプリ「CureApp禁煙」~日本初の治療用アプリの治験が終了し薬事申請へ~

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アプリで治療する未来を創造する―株式会社キュア・アップ代表取締役CEO佐竹晃太氏に聞く

株式会社キュア・アップは、禁煙、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、高血圧といった疾患についての治療用アプリである「CureApp 禁煙」、「NASH App」、「HERB」と、それらの開発知見をもとに作られた健康支援アプリとオンラインカウンリングを組み合わせた法人向けプログラム「ascure(アスキュア) 卒煙」、「ascure STEPS」などを提供するスタートアップ企業です。

株式会社キュア・アップ代表取締役CEO 佐竹晃太氏


何故喫煙アプリなのか?

日本では約2000万人が喫煙習慣を持ち、うち約600万人が禁煙に挑んでいるといわれています。禁煙外来の受診者数は約25万人です。

日本ではタバコが原因で年間13万人が亡くなっているタバコはありとあらゆる(疾患の)リスクファクターであり、依存症対策に本当に困っていた。ニコチンは違法薬物以上に依存性が強いと言われ、患者は日々孤独な戦いを強いられている。これまで身体的依存には手が打たれてきたものの、心理的依存に対する治療は不足していた。我々のアプリは医師や看護師に代わって患者に寄り添い、二人三脚で(心理的依存からの脱却を)達成する。」(佐竹氏)

治療用アプリは「通院と通院の間の空白期間(治療空白)をサポート」

治療用アプリとは、アプリそのものが治療効果を持ち、医師の診断によって処方されるアプリです。医学的なエビデンスに基づいて診療のサポートを行うという点で、一般的なヘルスケアアプリと大きく異なります。通院と通院の間の空白期間(治療空白)をサポートすることで、患者の行動変容を促し治療効果を出すことを目的としています。患者の治療空白を埋めることで、従来の医薬品や診察だけでは補えない部分に対して、患者ごとに適切な治療介入を24時間提供できるようになります。(下図参照)


日本初の治療用アプリの治験が終了し薬事申請へ

2019年5月30日、複数の治療用アプリの研究開発を進めているキュア・アップが、先ごろ治験を終えた禁煙治療用アプリの薬事申請を行なったことを発表した。またその治験の結果について、米国の学会で発表した内容も報告。対照群と比較して有意に良好な結果が得られたとし、薬事承認に自信をみせた。

治験結果:全症例572例、9-24週の継続禁煙率63.9%

治験に参加したのは584例だが解析対象となったのは572例。そのうち285例がニコチン依存症治療⽤アプリを使⽤する治験治療群、287例が対照群アプリを使⽤する対照群に割り振られた。主要評価項⽬は「9-24 週における継続禁煙率(CAR:Continuous AbstinenceRate)」として検証した。

その結果、主要評価項⽬である「9-24 週における継続禁煙率」は治験治療群が63.9%(182/285 例)、対照群が50.5%(145/287 例)となった。治験治療群は対照群に対して13.4%⾼く、統計学的な有意差を⽰した(95%CI:1.239〜2.424、p=0.001)。

ニコチン依存症治療⽤アプリが禁煙の継続に寄与したことが⽰されたとし、同社はこの治験結果をもって、すでに医薬品医療機器総合機構(PMDA)に薬事承認を申請した。2020年2月~3月をめどにその後の保険適用を目指すという。


ビジネスモデルキャンバス

CureAppと禁煙薬のビジネスモデルキャンバスを比較します。

禁煙薬が、禁煙の離脱症状を緩和する対処療法的な処置であることに対して、CureAppは行動変容を促し生活習慣を変える、つまり喫煙の習慣を根本から改善する処置となっています。

そのため薬と比べて、喫煙の成功確率が高くなりま

また、アプリの場合は、薬と違って常時アプリと対話することとなり、連続的でかつ個人の生活習慣に応じた個別化(パーソナライズ)治療が可能となります。


なぜイノベーティブだと思うのか?

生活習慣を改善するアプリはたくさんありますが、治験まで実施して効果を検証しようという試みがイノベーティブ。治験で効果が確認できれば、治療効果をPRすることも可能となり、他社製品と差別化することもできます。また保険が適用となり、提供者側、患者側、双方がコスト面のメリットを得ることができるため、世間で広がる可能性があります。


人々の暮らしをどう変えるのか?

依存症や生活習慣の改善は、単発の治療や処方よりも認知行動療法(患者の物事に対する認知や行動に働きかけて病態を治療する方法)の方が効果があると言われています

対象者のモチベーションを保ちつづけることが重要で、きめ細かな情報を提供し、対象者の日々の生活状況に応じて適切にアドバイスし、対象者の行動を変えていく必要があります。そのような寄り添い型の対応は、訪問回数が限られる診察、治療、処方よりも、常に対象者のそばにいるアプリが向いている領域です。

アプリで依存症や生活習慣を改善することができれば、多くの人の生活が改善されることが期待できます。

さらに薬や医療機器の開発に比べて開発コストが抑えられるため医療費抑制の効果も期待できる。医療費高騰で社会保障費が問題となる高齢化社会では社会的意義も大きいです。


応用できる発想は?

認知行動療法(患者の物事に対する認知や行動に働きかけて病態を治療する方法)×アプリの組み合わせ。ニコチン依存症だけでなく、それ以外の依存症や生活習慣の改善に応用できます。いくつか事例を整理しておきます。

  • 【ヘルスケアビジネスモデル34】不眠症アプリから発展!アプリで得た情報から新たな価値を創造する医療情報処理のプラットフォーマー~サスメド~
  • 糖尿病患者向け「処方アプリ」の先駆者、WellDoc社の「BlueStar」
  • 糖尿病予防アプリ:米国 Noom社
  • 肺がん治療アプリ:イスラエル シバンイノベーション Sivan Innovation Ltd.

驚くべきことに、標準的な経過観察を受けた患者群の全生存期間中央値が12カ月であったのに対し、アプリを利用した患者群では19カ月と延長。死亡リスクを67.5%軽減した(HR:0.325, P=0.0025)


参考資料

  • アプリで治療する未来を創造する―株式会社キュア・アップ代表取締役CEO佐竹晃太氏に聞く
  • キュア・アップ、国内初の禁煙治療用アプリを薬事申請 治験結果も発表
m3.com AIラボ
| m3.com AIラボ
https://medicalai.m3.com/news/190601-news-medittech
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  • 株式会社キュア・アップ ホームページ
  • “スマホアプリの治験”がいよいよ始まる

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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!