【ヘルスケアビジネスモデル36】”患者さんの満足と関係ないカルテ業務をこの世から根絶する”AI問診Ubie

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臨床で感じた課題を解決するためにUbieを起業

Ubieの共同代表取締役で医師でもある阿部吉倫さんの話です。

病院で感じた課題は二つあります。これらを解決しなくてはいけないと思いました。

一つ目は、医師が、医師にしかできない仕事以外にリソースを非常に取られる事。

二つ目は、患者さんが、いつ病院に来ればいいか自分で判断できないという事つまり、自分の症状がどの病気に関係するか患者さんには分からないという問題です。

この2つの課題を解決するためにUbieを起業し、それぞれの課題に対してソリューションを開発しています。


医師は医師本来の診療業務以外で忙殺されている

一つ目の、「医師が、医師にしかできない仕事以外にリソースを非常に取られる事」についての阿部さんの言葉です。

私が病院で救急外来をしていた頃、患者さんの顔をみながら診察する余裕はありませんでした。並行して問診内容をカルテに記載していかなければならなかったからです。

それにも拘わらず、待合は患者さんで溢れかえっていましたし、8時から20時のシフト引継ぎ後にカルテを仕上げて帰る日々でした。

下のグラフは、実際に外来診療が1時間増えると、それ以上に電子カルテ記載など事務作業が増えるというデータです。

そのため“患者さんの満足と関係ないカルテ業務をこの世から根絶する”ことを目的に開発したのが、AI問診Ubieです。


AI問診Ubie

表1に通常の問診プロセスと「AI問診Ubie」との違いをまとめました。

表1 通常の問診プロセスと「AI問診Ubie」との違い

事前問診⇒ 口頭問診⇒ カルテ入力
通常 通り一遍な質問に回答 患者様の症状をほぼ最初から口頭問診 聴取内容をゼロからカルテに打ち込み
AI問診Ubie 患者様ごと、一問ごと自動生成された質問に回答 事前問診と疑い病名を踏まえて口頭問診 聴取内容を追記してコピーするだけ

AI問診Ubieの概要を紹介したビデオです。

紙で一律に行われている事前問診を「デジタル化」「個別化」

私も初診の時には、問診表に記入しますが、どこも同じような問診です。それが当たり前なので違和感を感じませんでしたが、確かに通り一遍の質問です。私は医師の診察を受けるための形式な手続きだ、ぐらいに思っていましたが、このAI問診では、この問診結果からAIが疑いのある病名を特定し、病状をより絞り込むための口頭問診に移ります。

つまり、事前問診の精度を上げることで口頭問診、正確な診断までの効率が上がるのです。

事前問診は、高齢の方でも無理なく利用できるようなデザインとなっています。これは重要な点です。高齢の方でも馴染みがある「ATM」形式での文字入力を採用し、紙の問診を記入できる人であれば約9割の人がAI問診Ubieで事前問診を最後まで完了することができます。

事前問診で絞りこまれた病状をさらに絞り込むための追加口頭問診

従来は、事前問診表を記載しても、ほぼ最初から口頭問診をやっている感じでした。一方AI問診Ubieでは、AIが疑いのある病名を特定し、病状をより絞り込むための口頭問診となっています。かなり効率的になっています。

「例えば、外来の診察で、腹痛と吐き気がありますという患者さんが来た時に、追加で質問する内容は、あまり変わらなかったりするんですね。症状が決まってしまえば、聞くことがある程度決まるので、その解答次第で病気の確率が変わっていくわけです。そのアルゴリズムは「Dr.Ubie」を使い、「AI問診Ubie」で取ったデータを電子カルテに送ることで、一から入力する手間が省けるので、より患者さんに集中して身体診察や検査、手術の部分に注力できるようになるわけです。」

ここでポイントとなるのが、AIが病状を絞り込むアルゴリズムと精度です。

「従来、いろんなアプローチがありました。IBM社が電子カルテのテキストデータを使って、病気との相関を調べたことがあったのですが、うまくいかなかった。カルテをきちんと書く人と書かない人がいるので、データが不揃いになっている。そういうデータから確率を推測することは難しい。そこで、研究でまとまっている論文や書籍などから、疾患と症状の確率のデータを使うことにしました。4年間に及ぶ地道な作業の蓄積で、一個一個論文を読んで、これは使える、使えなかったと砂金拾いみたいなことをしました。書籍で10冊程度、論文だと5万件ほど読み、データを抽出していきました

「メインの症状が200種類くらいある中から主訴を選ばなければいけないし、更にそこから紐づいた症状が40個くらいあり、選んでたら日が暮れてしまいます。しかも、患者さんによっては選択肢に症状がないという方もおり、そうすると問診にならない。」

このように質のよいデータを抽出する努力と最適なアルゴリズムを見つけるトライ&エラーにより実用に耐えらえるものが出来上がりました。

これがUbieの大きな差別化要因だと考えられます。

カルテ入力

口頭問診での聴取内容を追記してコピーするだけです。


導入効果

外来初診患者1人あたりの問診時間は、通常問診とAI問診とで比較すると

  • 通常問診:10分16秒
  • AI問診:3分32秒

とおよそ3/1に短縮したという実績が出ています。

すごい効果ですね。


AI問診Ubieのビジネスモデルキャンバス

上記の内容をビジネスモデルキャンバスにまとめました。

記事を書いていて、カケハシの電子薬歴サービス「Musubi」のビジネスモデルと似ている、と感じました。

  • 【ヘルスケアビジネスモデル35】患者さんに価値を出すにはどうしたらよいか?を徹底的に追及した結果生まれた電子薬歴サービス「Musubi」。ビジネスモデル創出のお手本のようなカケハシのストーリー。

AI問診Ubieは外来で医師の負担が増加するカルテ入力に着目した単なる電子カルテではなりません。ポイントは、「患者さんとの接点となる事前問診~カルテ入力までのプロセスを効率化するデザイン」です。

カケハシの電子薬歴サービス「Musubi」のプロセスデザイン(上図)と表1”通常の問診プロセスと「AI問診Ubie」との違い”を比較するとトータルのプロセスをデザインにより効率化する、という共通点が見えてきます。さらに効率化にあたって患者さんとの接点(Musubiでは患者さんと薬剤師、AI問診Ubieでは医師と薬剤師)の課題に着目し、そこをIoTの技術で解決していることも共通点です。

その結果、医師、患者双方に価値が提供されます。

医師に対する価値は、当初の目的通り、カルテ入力などの事務作業が減ることによるメリットです。

  • 患者と向き合う時間が確保できるようになったことにより「患者満足度が上がった」
  • カルテ入力時間が約半分になり効率的な診療が可能になったことで「昼休みがしっかり取れるようになった」「非常勤医師やスタッフの残業が減った」

さらに症状から参考病名リストが自動表示されるため、

  • 「念のために検査をしておこうとか、”気づき”が喚起される効果があるようです」
  • 「陰性症状も表示されるので、先生方にとっては安心につながるのではないでしょうか」

一方で、患者さんに対する価値も生まれています。

  • 従来の紙の問診表と異なり記載する手間が省け、また一問一答で進んでいくため、「ストレスが少ない」「簡単」との声が多い。
  • 「回答するリズムが会話をしているようで、自分の疾患や状態を待合室にいる時点で把握してもらっているように感じられ、安心につながる

医師、患者双方の接点をデザインしなおすことで、双方に価値が提供されるのは、カケハシの電子薬歴サービス「Musubi」とよく似ています。

異なるのは、「Musubi」は患者目線で患者への価値を上げることからスタートし、一方の「AI問診Ubie」は医師目線で医師への価値を上げることからスタートしている点です。

AI問診Ubieのビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスを描いてみました。

なるほど、カケハシの電子薬歴サービス「Musubi」とよく似ています。

「Musubi」は患者目線で患者への価値を上げることからスタートし、一方の「AI問診Ubie」は医師目線で医師への価値を上げることからスタートしているため、医師とを上段に記載しました。

患者さんとの接点を改善をすることで患者さんと医師双方に価値を提供する、ことがよく分かるビジネスモデルキャンバスとなっています。

カケハシの電子薬歴サービス「Musubi」のビジネスモデルキャンバス


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参考資料

  • 医師とエンジニアで起業。AIによる医療サービス「Dr.Ubie」「AI問診Ubie」
  • 阿部 吉倫先生のライフストーリー② 医療4.0×医師ラボ
  • Ubie ホームページ
  • AI問診による効率化で患者と向き合う時間を確保してほしい[スタートアップ!オンライン診療(5)]
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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!