【ヘルスケアビジネスモデル37】地域医療連携促進を通じた病院経営改善ソリューション地域医療連携の実現を目指すSaaS型の医療情報データベース「メドプラス」~「紹介率・逆紹介率」向上に貢献~

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地域医療連携の実現を目指すSaaS型の医療情報データベース「メドプラス」

Appdateが開発するメドプラスは、地域医療連携の手助けとなるSaaS型の医療情報データベースです。「地域医療連携」は、日本の医療費急増の対策の1つとして、政府が進めている施策です。同一の中核病院で半永久的に医療を提供しつづけるという従来の「病院完結型」の医療から、中核病院と地域の診療所が連携しながら適材適所で医療を提供する「地域医療連携」の実現を進めています。(下図参照)


大病院は患者を抱え込み過ぎてパンク状態

皆さんは大病院で長時間待たされた経験はないでしょうか。予約時間通りに行ってもやはり待たされることは多いです。そもそも大病院とは、主にかかりつけ医では対処が難しい重症患者や急性期の患者が行くべきところです。それにも関わらず、風邪などの軽症もしくは慢性期の患者が多いことが原因の一つとして挙げられます。

この背景には日本の医療制度の一つの特徴である「フリーアクセス」というものがあります。これは患者が自由に医療機関を選ぶことができる、というものです。日本人にとっては当たり前のことですが、例えば英国では、救急医療を除いて地元の家庭医からの紹介がなければ、大病院や専門の医療機関にはかかれません。「フリーアクセス」は高度な医療機関に迅速にアクセスできるというメリットがある一方、受け入れ側の病院では軽症患者が溢れかえり、結果として冒頭の待ち時間の増大などの弊害を招きやすいデメリットもあるのです。

高額な医療機器を多く揃える都内の大学病院などは固定費が高く、軽度の患者を必要以上に多く診察していては赤字になってしまいます

一方、地域の診療所にも十分な医療を提供するだけの能力があるにも関わらず、患者が中核病院に集中してしまっているのが今の現状です。

中核病院が抱えきれない患者を地域の診療所に紹介することで、適切な医療を適切な医療機関で受けるという本来あるべき姿に近づける、これが「地域医療連携」です。


地域医療連携実施に向けた課題~かかりつけ医の情報が点在し検索することができない~

地域医療連携にはかかりつけ医がどういう治療や手術ができるか、などの情報が必要です。しかしながら、それらの情報は、実は様々な場所に点在しています。

また、これまでの医療機関間でのやり取りはとてもアナログなものだった。やり取りは電話やメールで行なわれ、紹介できる診療所のデータベースは医者の頭のなかにある

もし、それらの情報を一箇所に集めて横断的に簡易に検索するシステムがあれば便利ではないでしょうか。それを形にしたものが「メドプラス」です。

Appdateは、厚生労働省が毎年公開しているオープンデータを使って地域の診療所をデータベース化し、それを医療機関向けに提供しています。

メドプラスでは、患者が住んでいる地域にある診療所を疾患名ベースで検索できるほか、営業でいうところのCRM情報のような定性的なデータも「営業日誌」として残しておくことができるのも特徴です。

引用元:Med+(メドプラス)ホームページ


導入事例:聖路加国際病院(引用)

実際の導入事例とメドプラスの価値を紹介します。

引用元↓

聖路加国際病院の入院患者分布は、立地する中央区周辺が最も多いものの23区外と都外が3割以上を占めている。都市圏の大学病院はこうした傾向が強いが同病院のブランド力もあり、非常に広範囲が診療圏となっている。

「そうした入院患者を逆紹介するには、膨大な地域医療機関のデータを収集・管理する必要があります。しかも診療所の開院・閉院など情報の変動もあり、タイムリーに情報収集しなければなりません」。

聖路加国際病院 相談・支援センター/医療連携室マネジャーの岡田太郎氏は、連携先医療機関の情報収集・管理の重要性、課題をこう説明する。

同病院の医療連携室では、地方厚生局への医療機関届出情報やアンケート調査などで独自に情報収集し、データベース化して活用してきた。

こうしたツールを使いながら積極的にクリニックとの連携強化を図り、過去3年間で逆紹介率を1.7倍に高めることができたという。

「単に逆紹介できるクリニックを増やすだけでなく、患者さんに責任を持って適切なクリニックにお返しすることが重要です。そのためには疾患別にクリニックを把握し、どのような専門医であるか、あるいは設備環境も含めた医療機関情報を管理する必要があります」

(岡田氏)と、逆紹介率向上への取り組み姿勢を話す。

一方、その実現には、自ら精度の高い医療機関情報を収集・管理することの業務負担が大きいことが課題だという。

そこで聖路加国際病院は「メドプラス」を導入しました。

最大の価値は、「現役医師監修の疾患名による施設選定」

メドプラスの最大の特徴は、特許出願中である疾患名ベースで地域医療機関を検索できる技術です。

「診療科目で検索すると、どうしても関係のない医療機関まで検索結果に出てきてしまう。また、病院は遠方にある診療所の情報をほとんど知らないのが現状であり、そのような情報を検索できるツールは画期的だと思う」

疾患名に加え、合併症を入力すると、対応可能な医療機関の一覧が表示される。各医療機関の詳細情報としては、医療機関名、住所、電話/FAX番号、診療科目、外来受付時間、理学療法士や作業療法士などのコメディカルの在籍状況などが収載されている。

最大の価値は、「疾患名および合併症名で検索でき、さらに具体的な薬剤処方などの処置対応力などで適切な連携医療機関を選定可能なこと」です。

また、疾患名と合併症名で検索する際に、それらの処置対応力として経過観察、薬剤調整、専門治療の3つの対応力いずれかを付加選択して検索することも可能である。

この基本3対応とは別に、具体的な薬剤調整ができるかどうかも候補リストから選択することもできる。例えば、疾患名に「2型糖尿病」を入力した場合では、「SGLT2阻害薬を処方できる」「インスリン調整ができる」「GLP-1受容体作動薬(自己注射)を処方できる」など、具体的な薬剤調整が可能かどうか、などである。また、検索で抽出された医療機関は地図上にマッピングされて表示することもでき、通院の利便性も考慮して紹介できる。

検索した連携医療機関は地図上にマッピング表示可能です。

「対応可能な疾患で検索できることは、非常に大きなメリットです。また、対応可能な薬剤調整で具体的に検索できる点は、継続した薬物療法を行えるという意味で有効です。こうした詳細なデータの収集、分類手法などを現役の医師が監修・収載しているため、信頼性が高いと評価しています」(岡田氏)。

連携医との関係を強化するCRM機能

患者の疾患、状態に合わせた的確な連携医療機関を見出すことに加え、かかりつけ医との間に紹介・逆紹介を継続していくためには、いかに連携医療機関との関係性を維持・強化できるかが重要です。

メドプラスのもう1つの特徴は、連携医との関係を営業日誌として残し、地域連携室内での共有を可能にするCRM機能も実装されていることです。

「連携先の新規開拓は非常に重要であり、限られた時間ではあるが、実際に連携先医療機関を訪問し、信頼関係を築くことが大切。訪問で得られた詳細な医療機能、機器・設備、患者受け入れ体制などの情報を随時蓄積し、スタッフで共有しています」(岡田氏)

訪問日誌という形で蓄積された情報は、訪問したスタッフ以外にも共有され、病院内の誰もが参照・活用できます。連携先医療機関との関係性強化とともに、情報を病院の資産として生かすことが可能になります。

関係性の強化は、連携先医療機関からの紹介数上昇、病床稼働率向上へとつながります。つまり、メドプラスは、医療連携の促進を通じて病院経営を改善するソリューションとしての価値を持つサービスといえます。


まとめ:「メドプラス」のビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスを描いてみました。

2つの価値と、そのためのKey Activityを表にしました。

価値 Key Activity
1 疾患名および合併症名で検索でき、さらに具体的な薬剤処方などの処置対応力などで適切な「かかりつけ医」を選定し紹介できること 施設の医療情報を常に最新情報にアップデートする
2 「かかりつけ医」からの逆紹介数を上げ、病床稼働率が向上すること 連携医との関係を営業日誌として残し、地域連携室内での共有を可能にするCRMデータのアップデート

このビジネスモデルの特徴は、「急性期の中核病院」と「かかりつけ医」が、下記の価値をお互いにやり取りすることでWin-Winの関係となっている点です。

さらに、CRMデータをアップデートして活用することで、かかりつけ医への紹介が増えれば、逆紹介も増える、という自己強化型のループになっている点も大きな特徴です。

ビジネスモデルキャンバスに整理してみて、この特徴が見えてきました。

非常に興味深いビジネスモデルです。


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参考資料

  • 疾患名で地域の診療所を検索、”地域医療連携”の実現目指す「メドプラス」が5000万円を調達
  • Med+(メドプラス)ホームページ
  • なぜ今、門外漢の私が地域医療連携の問題を解決しなければならないのか?
  • 聖路加国際病院の逆紹介率向上に寄与する「メドプラス」
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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!