【ヘルスケアビジネスモデル38】名医検索サイト「clintal(クリンタル)」~自分に合った名医と出会えれば、医療費も抑えられ、医療業界全体の質向上にもつながる、患者さんからアプローチする地域医療連携~杉田 玲夢氏

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患者が自分に合った名医を探すための名医検索サイト「clintal(クリンタル)」

自分や家族が、治療法が限られている難病になったり、高度な手術が必要な病気になったりした時、その分野の名医に的確に治してもらいたいと思うのは当然のことです。

ところが一般の人にとって「その名医はどこにいるのか?」「どのように名医と判断すればいいのか?」ということは分かりづらく、名医を探すことは非常に困難です。

その患者さんのニーズに応えようと医師でもある杉田玲夢氏が起業し立ち上げたのが、名医検索サイト「clintal(クリンタル)」です。

杉田氏が医療界で感じた課題~名医を探すのは医師でも困難~

私自身の親が帯状疱疹や網膜剥離になった際に、その分野の名医を探すことに非常に苦労しました。その時に、医師である自分自身が名医探しにこんなに苦労したということは、一般の患者さんはさらに大変なのではないかと思いました。

また時を同じくして、友人から「○○の治療をする良い先生知らない?」と聞かれることが多くなりました。そこで、より一層名医を探すことの大変さを実感しました。

名医を探すのが難しい原因

主な原因、医師・病院の情報公開が限定的であることです。

最近になってようやく、DPC病院が増え、病院もホームページ上で手術数や経歴等を載せるなどして、情報公開の基盤ができてきています。

しかし医師個人レベルだと、保有している専門医資格などは探せば出てきますが、年間実際にどの程度臨床をしているのか、診療科の中でもどの疾患が専門なのかというような情報はあまり公開されていないのが現状です。また公開されていたとしても、例えば「年間100件胃がんの手術をやっている」というだけの情報では、患者さんにとってはそれを解釈するのが困難です。

患者さんのニーズに答える名医検索サイト「clintal(クリンタル)」

「clintal(クリンタル)」は、一般の病院・クリニックの検索サイトとは異なり、確定診断がなされた患者さん向けであり、疾患ごとに医師を検索します。

サイト上で診療科と疾患、治療法を選択すると、その分野における名医が一覧で見られます。

最適な医師を紹介するサービス

また検索サイトとともに、患者さんへ直接、受診先として最適な医師を紹介するサービスも行っています。

セカンドオピニオンの医師を紹介するサイトは他にもいくつかありますが、紹介までに時間がかかり、医師の選考基準が明確でないことが課題でした。中には、紹介までに3カ月もかかるサイトもあります。数カ月も待つのは、進行性のがん患者さんですと精神的、肉体的にも負荷をかけることになります。そして、医師の選考基準がはっきりしていないと、「なぜこの医師を紹介されたのか分からない」と思われ納得感を持ってもらえません。

そのため「クリンタル」では、必ず4営業日以内に紹介することと、「数多くの医師がいる中でなぜこの医師が適切なのか」という理由を必ず説明しています。また、紹介している医師の情報は全てサイト内に掲載されていますので、より納得感を持って利用してもらえるようにしています。


名医を評価・登録に2~3か月かける「ミシュラン名医ガイド」

「医者が専門の医師を探す時に何を重視しているか?」をアルゴリズムとして取り入れている点が特徴です。

  • 最初に専門医資格などから候補を抽出
  • 次に、臨床視点での評判を、その診療科の複数の専門医に聞きます
  • 最後に、その医師の手術数や論文数など、20項目ほどの客観的データからさらに絞り込み、最終的な評価としています。
  • 各診療科の医師に相談して、その診療科特有の事情にも配慮できるように設定している。

医師の情報を集めて掲載を検討するプロセスには、2~3カ月ほど掛け、評価に協力する医師は、各診療科で2~3人程度確保しているとのこと。

さらに、自分が何の病気かわからない段階で活躍する「診断の名医」が登録されている点が特徴です。

このようにして評価した内容を「臨床実績」、「学術活動」、「受診しやすさ」の3つの項目で5段階でスコア化しています。

「受診しやすさ」を項目に入れているのは、

「腕のいい執刀医でも手術まで半年待つのであれば、3か月以内に手術すべき患者にとっては名医と呼べず、その医師より実績が少なくてもすぐに手術を受けられる医師のほうがいい」

ためです。

クリンタルが目指すのは、指標と利用者の口コミを参考にする、いわば「食べログ」スタイルではなく、ここに掲載されている医師は全て”名医”」と太鼓判を押す「ミシュランガイド」スタイルのサービスです。

クリンタルを通じて自分の症状に合った名医と出会えれば、医療費も抑えられ、医療業界全体の質向上にもつながる

クリンタルは、下記の社会課題の解決を目指すサービスです。

  • 日本の医療費は年々増大し医療制度の破綻が懸念
  • 大病院に軽症患者が押し寄せ、結果として病院経営を圧迫し、医療の質も低下する(下記リンク参照)

【ヘルスケアビジネスモデル37】地域医療連携促進を通じた病院経営改善ソリューション地域医療連携の実現を目指すSaaS型の医療情報データベース「メドプラス」~「紹介率・逆紹介率」向上に貢献~

「医療の”機能分化”で医療の質を上げ、医療費を下げる」

「このサービスを通じて目指しているのは、実は医療の”機能分化”なのです。例えば、総合病院は便利ですが、何が得意なのか一般人にはわからない。しかし、「がんセンター」とか「循環器センター」といった専門施設ならすぐにわかります。そのように医療機関を専門化していくことで、患者さんが集まり、医師の腕も磨かれ、手術の成功率が上がります。するとさらに知見が溜まるスピードも速くなり、結果的に患者が退院するまでの日数も短縮化され医療費負担も安くなります。

と杉田氏は言う。

これを仕組み化につながるのがクインタルです。

クインタルを通じて、患者さんに実績のある病院を受診していただき、最適な治療を最短で受けることで医療費を下げることが可能です。

機能分化と地域医療連携(杉田氏コメント)

「質・効率重視の医療」で僕らが考えているのはそれぞれの診療科をもっと集約する必要があるという点です。

個々の病院が「循環器」や「周産期」など何かしらの領域に特化して補完しあう、そうすれば各病院における治療の実績も多くなり、知見が溜まることで医療の質がよくなります。

総合病院がたくさんある状態ではこれがなかなか難しく、例えば各総合病院に1人ずつ心臓外科の先生がいても、心臓外科手術の中には1人では無理な手術もありますし、1人では互いの知見を共有して治療の質を上げる機会も得辛い。

もし点在している心臓外科医4人を一か所に集めれば高度な手術も出来ますし、シフトを組んで夜中でも急患に対応できる、4人それぞれが教えあうことで治療の腕もあがります。

―患者さんも、病院が複数あっても行く場所は1つでしょうから、それなら1つに集まっていてそこで質がよく安価な治療を受ける気がします。

まさに地域医療連携ですね。


まとめ:クインタルのビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスを描いてみました。

メインの顧客は患者で、2つの価値があります。

  • 自分の症状に合った名医に出会うことができる
  • 最適な治療を最短で受けることでQOLが向上する

それに加えて医師側にも価値が提供されます。医師はパートナーと考えてもよいかもしれません。

  • 医療コストの削減による病院経営の改善
  • 最適な治療を最短で受けることでQOLが向上する(医師の基本の想いなので価値と考えられる)

さらい面白いのは、地域医療連携を促す仕組みなので、将来は政府とパートナーシップを組むのも面白そうです。

患者さんからアプローチする地域医療連携

地域医療連携を推進するという点は「メドプラス」と同じです。(下記参照)

  • 【ヘルスケアビジネスモデル37】地域医療連携促進を通じた病院経営改善ソリューション地域医療連携の実現を目指すSaaS型の医療情報データベース「メドプラス」~「紹介率・逆紹介率」向上に貢献~

両者の違いは、病院側(医師)の視点に立つか、患者さん側の視点に立つかの違いです。

「メドプラス」は中核病院の視点で、中核病院が抱えきれない患者を地域の診療所に紹介することで、適切な医療を適切な医療機関で受けるという「地域医療連携」の実現を目指すソリューションです。

一方、クインタルは、患者さんの目線で、患者さん自ら適切な医療を適切な医療機関で受けられるよう検索・選択する仕組みです。

患者さんからアプローチする地域医療連携ともいえ、「メドプラス」と表裏一体のアプローチです。

こうやって比較してみると非常に面白いです。


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参考資料

  • 「clintal(クリンタル)」名医検索サイトが挑戦する課題
  • 「名医」検索サービスは、どう名医を判断しているのか
  • 医師のミシュランガイドを目指す「クリンタル」:Cadetto.jp
  • 自分に合った名医と出会えれば、医療費も抑えられ、医療業界全体の質向上にもつながる。 - 株式会社クリンタル 杉田玲夢
  • クリンタル ホームページ

医師監修の医療情報提供サービス

医師が監修して疾患や医薬品、医療機関の情報など、下記のように様々な医療情報を提供するサービスがあります。

「メドレー」と「MedicalNote」の比較

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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!