【ヘルスケアビジネスモデル44】急性期の医療の仕組みを抜本的に変える「Cloud ERモデル」~Joinを開発したアルム社 坂野哲平氏の講演~

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アルム社 坂野哲平氏の講演~急性期の医療の仕組みを抜本的に変える~

  • 【ヘルスケアビジネスモデル33】医師の働き方改革の切り札?~CT, MRI画像などを共有できる医療版Line「Join」~

でまとめた「Join」を開発したアルム社の坂野哲平CEOの講演を聞く機会がありました。

上記記事では、働き方改革の観点および脳卒中に対するアウトカム向上の観点から「Join」のメリットやビジネスモデルをまとめました。

今回の話では、さらに大きな概念を聞くことができましたので、その内容についてまとめます。


急性期の医療の仕組みを抜本的に変えるモデル

全てのステージを抑える

脳卒中や心筋梗塞の急性期疾患は「時間との戦い」です。

アルム社は「時間との戦い」を克服するために、脳卒中を5つのステージに分け、それぞれにソリューションを提供しているのが特徴です。

5つのステージは下記です。

  • ステージ1:【早期発見】脳卒中が見つかるステージ
  • ステージ2:【救急搬送&トリアージ】救急車で運ばれるステージ
  • ステージ3:【専門医診断】診断を受けるステージ
  • ステージ4:【治療】治療を受けるまでのステージ
  • ステージ5:【在宅医療・在宅介護】在宅医療・在宅介護のステージ

これら一つ一つの時間をどれだけ短縮できるかが、患者さんの命、そして予後を左右します。

引用元↓

ステージ1:早期発見

「MySOS」というアプリがカバーします。

「MySOS」は、ご自身や家族の健康・医療記録を行い、救急時などのいざという時にスムーズな対応をサポートするスマートフォンアプリです。

具体的には下記のことができます。

  • 救急ガイド

倒れている人を発見した時の一次救命処置の流れをガイドします。

状況により、胸骨圧迫や回復体位などの処置案内を行います。

また、必要に応じて支援可能者に救援依頼も行えます。

  • 救援依頼

「MySOS」をインストールしている近隣の人や、緊急連絡先に登録してある人にSOS発信ができます。

  •  マイカルテ(健康診断結果)

自分自身のカルテ情報を登録しておくことで、自分が倒れた時に医療関係者への情報伝達やご家族への緊急連絡をサポートします。

検査結果、処方箋など、カメラ機能で簡単に登録できるようになっています。

引用元↓

ステージ2:救急搬送

「JoinTriage」というアプリがカバーします。

主に、救急車の中で使用するソフトです。119番に電話をし、救急車が来て、当該患者さんの症状を入力すると脳卒中や循環器疾患の重症度を調べることができます。そしてその疾患領域において最善の搬送先病院一覧を救急車から近い順に表示します。

同時に、救急車の中から心電図や血圧のデータを送ることが可能です。事前に正確なデータを共有することで、救急車の到着以前から準備をして待つことができるようになります。

引用元↓

ステージ3:専門医診断

このステージは有名な「Join」がカバーします。

「専門医師が院内にいない、でもすぐに指示が欲しい・・・」

そんなとき “Join” なら “モバイル×クラウド” でリアルタイムに医療関係者間のコミュニケーションをとることができ、すぐに専門医の診断を受けることができます

詳細は下記記事を参照ください。

  • 【ヘルスケアビジネスモデル33】医師の働き方改革の切り札?~CT, MRI画像などを共有できる医療版Line「Join」~

ステージ4:治療

引用元↓

驚くべきことに、アルム社は治療機器の開発にも着手しています。

具体的には、脳動脈瘤治療用のセミカスタムメイドステントの開発です。

またコンピュータシミュレーションにより動脈瘤周辺の血管構造をもと に瘤の血流を予測することで、治療効果を予測したり、動脈瘤に最適なステントのメッシュデザインやステントサイズを算出することもできます。これにより動脈瘤治療の最大の課題 であった処置の安全性や確実性を高めることが出来ます。

治療前にシミュレーションして最適な治療方法を選択するのは、下記記事と同じです。

  • 【治療イノベーション】脳動脈瘤の治療~治療前にシミュレーションで最適な治療方法を選択する!~

ステージ5:在宅医療・在宅介護

「Team」というアプリがカバーします。

「Team」は、医療・介護サービスをシームレスに繋ぎ、地域包括ケアシステムの推進をサポートするソリューションです。

看護事業所は「Kango」を、介護事業所は「Kaigo」を利用し、タブレット端末で業務内容を記録することで、Teamクラウドシステム上で多職種との情報共有・連携が可能です。

地域医療連携を狙ったビジネスモデルとしては、以下に記載したようなサービスがありますが、「Team」は、もっと大きな視点で地域医療連携を目指しています

  • 【ヘルスケアビジネスモデル42】医師監修の医療情報提供サービス7つのビジネスモデル比較~メディカルノート、メドレー、Doctors Me、coFFee doctors、メドプラス、クリンタル、メディカルローグZin

「Team」のコンセプトを表したものが下図です。

一番の特徴は、蓄積された利用者の経過情報、つまり健康情報、疾病情報、治療情報などのデータを中心に、医療だけでなく介護も連携してしまう、という視点です。

坂野さんとお話ししましたが、「データの利活用」を大変意識されていました。

データを蓄積&活用し、様々なサービスをデータでつなげて一気通貫型の大きなサービスにする、これがアルム社の真の強みだと感じました。

引用元↓

たとえば、救急車の中で使用するソフトです。119番に電話をし、救急車が来て、当該患者さんの症状を入力すると脳卒中や循環器疾患の重症度を調べることができます。そしてその疾患領域において最善の搬送先病院一覧を救急車から近い順に表示します。

同時に、救急車の中から心電図や血圧のデータを送ることが可能です。事前に正確なデータを共有することで、救急車の到着以前から準備をして待つことができるようになります。


Cloud ER

Joinは急性期の医療の仕組みを抜本的に変えるモデルです。

専門医が近くにいなくてもモバイルの画面で患者の状態を診ることが出来ます

CTやMRIの画像共通以外にも院内環境のリアルタイム配信が実現されていてICU/OR設置カメラやモニターからリアルタイム映像配信機能もあります。

実際、先日の講演でも、講演中にi-padからjoinを使用している病院の手術室の映像をリモートで見ることができました。

Joinを使った急性期病院向けのフローは下図の通りです。

救急搬→急患情報の入力→急患情報の登録/更新→チーム内の一斉通達となり、患者情報がリアルタイムに更新されて、担当医を中心として救急対応チームによるチャット、医療画像、医療データの共有が行われ救急車の到着の予測情報が届きます

この一連の流れをスマートフォンが中心となるモバイル端末で実践することが可能です。

引用元↓

もう搬送先を迷わない!「Cloud ER」実証研究

Joinを活用した急性期医療のモデルは、下図の「Cloud ER」という概念になります。

それもそのはず、アルム社も参画している実証研究です。

慈恵医大のほか、中央大学、(株)アルム、シナノケンシ(株)の4団体で取り組む、2016年度の日本医療研究開発機構(AMED)の研究事業として採択された3カ年のプロジェクトです。

引用元↓

「Cloud ER」の具体的な仕組みは以下のようなものです。

まず搬送要請を受けた救急隊員が、リストバンド型のウエアラブルデバイスを患者に装着。これは、カフがなくても、血圧、脈拍、体温、心電図などを測定できる端末だ。5~8問程度の簡単な問診や観察で得た情報も合わせて、スマートフォンで、クラウドサーバーに情報を転送します。

AI(人工知能)が患者の容体情報と近隣医療機関の情報を基に総合的に判断して、適切な受入医療機関を選定します

搬送中の患者情報も受入医療機関の救急医や専門医に対してリアルタイムに送ることで、救急隊員はコンサルティングを受けながら救急車内で応急処置できる一方、受入病院は、受入準備や患者転送にも柔軟に対応できます

迅速な救急搬送だけでなく、日ごろから個々人がウエアラブルデバイスを身に付けていれば、通常とは異なるバイタルデータ(血圧、脈拍、心電図等)の所見などが見られた場合は、医療機関への受診につなげる「予防」医療での活用も想定されます。


まとめ

坂野さんの話を直接お伺いして、アルムのすごさが分かりました。

特筆すべき点は下記2点です。

1つ目は、急性期・救急医療を下記5つのステージに分け、それぞれソリューションを提供するだけでなく、全てのソリューションを統合して、急性期・救急医療の仕組みをMobile ERという全く新しい仕組みに変えてしまう点です。

  • ステージ1:【早期発見】脳卒中が見つかるステージ
  • ステージ2:【救急搬送&トリアージ】救急車で運ばれるステージ
  • ステージ3:【専門医診断】診断を受けるステージ
  • ステージ4:【治療】治療を受けるまでのステージ
  • ステージ5:【在宅医療・在宅介護】在宅医療・在宅介護のステージ

2点目は、Mobile ERで集まってくるデータを2次利用して新たなサービスを生み出す発想です。

「Mobile ER」というモデルをプラットフォームとしてデータを集積・活用するモデルで、アマゾンやGoogleと同じプラットフォームビジネスです。


参考資料

  • アルム社の戦略 医療とモバイルが医療産業を変える 初の保険適用ソフトJoinでイノベーション | MC3.0時代到来 | ミクスOnline
  • 【アルム 坂野哲平】医療スタートアップがユニコーンになる道とは?–––保険適用アプリ「Join」の戦略から語る
  • 平成27年度医工連携事業化推進事業 成果報告書(概要版)
  • もう搬送先を迷わない!「Cloud ER」実証研究:慈恵医大など4団体、AIが搬送の要否や搬送先を「判断」
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ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!