【認知症】認知症を超音波で治す時代が早ければあと4年で到来!東北大学の挑戦~カギはアミロイドβではなく、脳の微小循環障害の治療~

Pocket

image_pdfimage_print

認知症治療の最前線

アルツハイマー型認知症の治療について、最近多くの発表が出てきています。

すでに電磁波やγ波がアルツハイマー型認知症の改善効果があるという記事をまとめました。

  • 【認知症】脳を電磁波で刺激することで、アルツハイマー病などの神経変性疾患の症状低減、認知機能の改善効果が見られた
  • 【認知症】耳と目からのγ波の刺激でアルツハイマー原因物質が減る!

本日は、早くも治験第一段階を突破したという「超音波治療」の記事を紹介します。


超音波治療(LIPUS)

東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明教授、進藤智彦助教授、江口久美子医師、東北大学加齢医学研究所老年医学分野荒井啓行教授らの研究グループは、低出力パルス波超音波(low-intensitypulsedultrasound:LIPUS)を脳に照射することで認知機能低下を抑制できる可能性を示しましました。

マウス実験でアルツハイマー型認知症の主要因のひとつとされるアミロイドβの蓄積を著名に減少させ大きな注目を浴び、2018年6月に、世界初となる医師主導治験を開始しました。

今年に入り、安全性評価を主軸に置いた5名の患者さんを対象としたRoll-in群の観察期間が終了し、3月11日に開催された効果安全評価委員会でその安全性が確認されたという。

評価を受け、4月より有効性の評価を主軸に置いた40名の患者を対象とするRCT群の治験治療を開始する。このRCT群では治療は3カ月ごとに行い、全観察期間は18カ月。認知機能試験(MMSE、ADAS-J cog、CDR/CDR-SB)と行動試験(NPI-Q、Zarit)で有効性を確認する。研究チームではこの治験結果をもとに、将来的に検証的治験、薬事承認申請を目指すとしている。


認知症の治療のカギは「脳の微小循環障害」の治療

下川宏明教授によると、認知症治療で注目されているアミロイドβやタウタンパクは海面に出た氷山の一角であって、海面の下にある「微小循環障害」がカギとなります。

ここで登場した「微小循環」とは、体のすみずみまで張り巡らされた血管の中でも毛細血管を中心とした微小循環系であり、この循環系の輸送機能によって生物個体の内部環境が維持される最も重要な循環系だそうです。

心臓や太い血管は微小循環系に適切に血液を供給するための補助装置とも考えらるというのも少し驚きです。全身の細胞機能を規定するのも微小循環なので、認知症も結局は「循環不全病」ということになります。

例えば認知症の予防に良いこととして、運動とか、友だちと談笑するとか、脳トレとか、いろいろ挙げられていますが、それらはすべて脳の血流を増やす方法です。

超音波治療法は、それを最も効率よく行い、脳の微小循環障害を治療する方法です。


超音波の効果

きっかけは「衝撃波により血管が拡張・新生される」、という研究成果です。

そんな中できっかけを与えてくれたのが、私どもが2001年に主催した「第一回日本NO学会学術集会」でした。血管の一番内側にある内皮細胞がNO(一酸化窒素)を産生し、血管を拡張・新生させて、動脈硬化を防ぐ働きをしていることを解明したルイス・J・イグナロ博士が、1998年にノーベル生理・医学賞を授与されたことをきっかけに設立された学会です。その学会で、「内皮細胞に低出力の衝撃波を照射するとNOが産生される」というイタリアの研究グループの発表を聞き、低出力衝撃波を用いた狭心症の血管新生療法を着想しました。

簡単にまとめると

  1. 血管の一番内側にある内皮細胞に低出力の衝撃はを照射するとNOが産生
  2. 産生されたNOが血管を拡張・新生
  3. 動脈硬化が抑制される

ということになります。

衝撃波をステップアップしたのが超音波で、さらに対象疾患を認知症としたのが「超音波による認知症治療」になります。

衝撃波から超音波へのステップアップの効果は下記です。

衝撃波は、蓄積されたエネルギーが、瞬間的に解放されたときに発生する単一波です。そのため、治療の際には心臓の拍動に合わせて照射しなくてはならず、1回の治療にどうしても時間がかかります(約3時間)。また、空気に当たると破裂する性質があり、軽度の肺出血を起こす危険性もありました。

一方、超音波は連続波ですから、心臓の拍動に合わせる必要がなく、面で照射することができるので治療時間が短くて済みます(約1時間)。また、肺に当たっても影響がないので、安全性も一層高めることができるのです。


超音波治療の可能性

具体的な治療方法は非常に簡単なものです。

ヘッドギア型の装置をかぶってもらい、耳の上の側頭骨という一番薄いところから、交互に超音波を照射します。こめかみのあたりですね。1回1時間で週3回実施します。

この治療法は、患者さんがまだ使い切っていない自己修復力、自己治癒力を活性化する方法で、適切な刺激を患者さんの脳に与えるだけ。あとは患者さんの組織が自分で治っていく。非常に理にかなった治療法だと思います。

副作用もないし、拒絶反応もゼロなので、他家移植による細胞治療のように免疫抑制剤を飲み続ける必要もありません。

この治療法の凄さは、アミロイドβやタンパク質ではなく、脳の微小循環障害の治療にフォーカスしている点です。

そう言われてみると、下記2つの方法も新たな血管が作られる”血管新生機能”や、脳の活動を活発にする効果が示されています。

  • 【認知症】脳を電磁波で刺激することで、アルツハイマー病などの神経変性疾患の症状低減、認知機能の改善効果が見られた
  • 【認知症】耳と目からのγ波の刺激でアルツハイマー原因物質が減る!

また、3つの方法に共通して”○○波”が使われています。

「○○波で脳の血流を改善し、脳の活動を活発にする」、これが認知症治療のポイントなのかもしれません。


参考資料

  • アルツハイマー型認知症の「超音波治療」治験第一段階を突破、有効性を確認へ
  • 「認知症を超音波で治す時代」が早ければあと4年で到来!東北大学の挑戦

認知症関連の記事

  • 認知症700万人時代その1~認知症と糖尿病との関係:糖尿病患者は、そうでない人と比較して認知症になる確率が3倍も高い~
  • 認知症700万人時代その2~認知症治療薬の難しさと最新状況「原因物質の除去や糖尿病治療薬に期待」~
  • 認知症700万人時代その3~認知症治療の切り札に!?「”血液脳関門”突破」と「アルツハイマー病の超早期診断技術」~
  • 認知症700万人時代その4~認知症新薬開発の切り札に!?~ノーベル賞技術を応用したアルツハイマー病の超早期診断技術
  • イノベーションは痛みを苦しみの体験から~認知症患者の感覚をVRで疑似体験~
  • 「アジア太平洋高齢者ケア・イノベーション・アワード」で最優秀賞を受賞したサービス付き高齢者住宅(サ高住)銀木犀
  • 認知症関連のイノベーション事例8つ~嗅覚を活用した認知症早期診断&改善~
  • 【治療イノベーション】寝ながら認知症予防できる「メモリアップスリーパー」早期実現できるかも?
  • ヘルスケアIT 2019~テクノロジーが変えるヘルスケアの未来~認知症を防げる未来?
  • 「母さん、ごめん。」50代独身男の介護奮闘記~最も大事なことは一人で抱え込まず公的介護制度をうまく活用すること~
  • 治る認知症?~特発性正常圧水頭症~認知症患者の5%、30万人の人が治療可能かもしれない
  • 【認知症】耳と目からのγ波の刺激でアルツハイマー原因物質が減る!
  • 【認知症】認知症を超音波で治す時代が早ければあと4年で到来!東北大学の挑戦~カギはアミロイドβではなく、脳の微小循環障害の治療~
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ABOUTこの記事をかいた人

1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!