日本の医療を変える「スマートホスピタル」これが未来の病院だ!倉敷中央病院、恵寿総合病院、北原病院グループ、HITO病院、名古屋大学病院

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スマートホスピタル

最近「スマートホスピタル」という言葉を聞くようになりました。

ただ私自身「スマートホスピタル」と聞いても、IoTの病院版で、「あらゆるものがインターネットでつながり、最新のIoT技術を活用することで新しい価値を生む病院」という概念的な理解です。

ということで、今日はスマートホスピタルの概要と具体例をまとめてみました。

スマートホスピタルの特徴

スマートホスピタルの特徴は2つだと考えます。

まず第一に、最新のIoT技術を導入し、蓄積した医療・健康データの活用です。

次に、データの活用することにより、下図のように病院での治療だけでなく、健康・予防、日常生活まで病院が関わる範囲が広がること、です。

引用元: https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/01035/00002/?ST=ch_digitalhealth

この2点により、従来は「病院=患者さんの治療」という位置づけでしたが、スマートホスピタルでは、病院が健康な人とも密接に関わり、健康に関する総合サービスプラットフォームに変化していくのではないかと予想しています。

一例として、例えば健康診断や検査、治療のデータを個人がいつでも閲覧できるようになり、積極的に健康管理に利用できるようになります。


スマートホスピタルの利点

IoTが病院とヘルスケア産業にもたらす6つの利点(下記)に集約されていると思います。

よりよい治療効果

クラウドコンピューティングやその他のバーチャルインフラを通じたコネクティビティを使ったヘルスケアソリューションは、治療を施す側に判断するための情報をリアルタイムで届けるだけでなく、より細かなデータに基づいた治療を施すことを可能にします。この結果、治療効果も上がること考えられます。

よりよい疾病管理

患者が継続的に監視され、治療を施す側がリアルタイムにデータを入手できることで、手の施しようがなくなる前に疾病の治療ができるようになります。

医療ミスの低減

正確なデータの収集、ワークフローの自動化、データに基づいた判断が組み合わさることにより、何より医療ミスを低減することができます。

患者エクスペリエンスの向上

治療の先回り、診断の正確性の向上、医師の介入のタイミング、治療効果の向上すること、また患者自身が必要な情報を積極的に入手し、より積極的に治療に関与することで、患者エクスぺリンスが向上すると考えられます。

コスト削減

下記によりコスト削減が可能になります。

  • 患者のモニタリングはリアルタイムに行うことが可能になり医者の無駄な往診のコストが減る。特に高等なホームケア施設については、病院での滞在や患者の再訪が減るため、確実にコストが削減できる
  • 確なデータの収集、ワークフローの自動化、データに基づいた判断が組み合わさることで正確な判断が最短の時間でできる
  • IoTの活用により病院のオペレーションが効率化される

薬剤管理の向上

薬剤は、その製造だけでなく管理にもかなりのコストを掛けている。だが、IoTによりこれらのコスト管理もしやすくなります。


倉敷中央病院「これからは治療の前段階、つまり予防に遡る必要がある」

一つ目の具体例は、倉敷中央病院です。山形専院長の言葉です。

「これからは治療の前段階、つまり予防に遡る必要がある」。

倉敷中央病院は約80万人の地域住民の医療を支える中核病院で、日本でトップクラスの数の救急患者を受け入れ治療に注力してきた病院ですが、以前にも増して予防に取り組んでいます。

2019年6月、AIなどの先端技術を利用して健康診断を手掛ける「倉敷中央病院付属予防医療プラザ」を開設しました。

引用元: https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/01035/00002/?ST=ch_digitalhealth

倉敷中央病院の予防医療プラザは、AIなどの先端技術を積極的に活用しています。利用者が予防プラザで健康診断を受けると、現状の結果だけではなく、1年後から3年後の健康状態をAIで予測して結果を返すシステムを導入しています。このシステムは、健康診断のデータを基にNECと共同でAIのアルゴリズムを構築したもので、下記に記事をまとめています。

  • 【AI×ヘルスケア】既存データの利活用によるヘルスケアサービス~1. MRI画像から認知症の早期発見、2.健康診断の血液検査データから認知機能評価、3. 過去の蓄積された定期健診データから3年後の検査値を予測~

さらに倉敷病院では、地域医療連携の試みとして、周囲の病院と連携してカルテ情報を共有するシステム「マイカルテ」を導入しました。

周囲の病院の負担を増やさないように、患者の同意を我々がまとめて取得し、運営費用も我々が負担します。地域の大小の病院がカルテや検査データなどを共有して役割を分担すれば、地域で医療のエコシステムをつくることができます。現時点で22病院、15診療所と連携しています。

データを格納するサーバーも用意しており、周囲の病院は安価に利用できます。カルテを共有して仲間づくりを進め、同じサーバーを利用することでデータを集めやすくなる。

集めたデータは、治療から予防への転換に活用することができます。

具体的な例は”脳卒中”です。脳卒中の患者は倒れてから病院に搬送されます。ところが血管は時間をかけて細くなるため、ちゃんと調べていれば脳卒中は予防できるのです。なぜ倒れるまで待っているのか。待ちの医療から攻めの医療に変えないといけない。

患者の同意をまとめて取得し、運営費用も負担、ということで、地域中核病院としての使命が強く感じられます。


恵寿総合病院(石川県七尾市)「データを活用した患者主体のパーソナル健康サービス」

石川県七尾市にある恵寿総合病院は、来院した患者らを対象に健康診断や検査、治療のデータを本人と共有するサービス「カルテコ」を2017年9月に始めました。

神野正博理事長の言葉です。

「将来的なイメージは、利用者が自分の検査値や医療画像を地域の薬局やフィットネス、整体院などに見せて、健康維持の目的で個人に合ったサービスを受けることだ」。

引用元: https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/01035/00002/?ST=ch_digitalhealth

カルテコは、メディカル・データ・ビジョンが開発したシステムです。

患者は自分の病名や検査結果、治療で利用された薬、処方された薬、治療や手術の内容、検査項目、健康診断の結果などをスマートフォンのアプリや病院内の専用端末で閲覧できます

MRIやCT、レントゲン、マンモグラフィーなどの医療画像も患者が保管できます。

患者と情報を共有することで、患者さん自身が自分の状態を確認し、積極的に治療に取り組む意思を養う効果があります。

さらにこのような治療歴や検査データ、医療画像は、患者さん同意のもと、近所のクリニック、薬局などにも情報開示することができます

治療の判断や、服薬指導など、そのサービスの向上に役に立ちます

これが「データを活用した患者主体のパーソナル健康サービス」のイメージになります。(下図参照)

引用元: https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/01035/00002/?ST=ch_digitalhealth


北原病院グループ「医療の枠を超えあらゆる産業がつながる情報プラットフォーム」

デジタルリビングウィル

東京都八王子市を拠点とする北原病院グループ(医療法人社団KNI、株式会社KMSIなど)は医療や予防に関する情報だけではなく、治療の考え方や生活に関する情報も扱い始めています様々な業種と連携し、病院の役割を日常生活まで拡大する試みです。

その仕組みが「デジタルリビングウィル」です。

デジタルリビングウィルは、生体認証でセキュリティーが保護されたサーバー内に、個人の既往歴(これまでにかかった疾患)や服薬情報、生活情報、万が一の際に延命治療をするかなどの治療方針に対する意思、亡くなったときは誰に連絡するか、葬儀をどのようにするかなどの情報を保管するものです。情報の登録や更新、削除は本人が行います。

デジタルリビングウィルは、北原茂実理事長が危機感を抱く、一人暮らしの高齢者の増加の対応として生まれました。

一人暮らしの高齢者が倒れて病院に運ばれる場合、本人に意識がないと、これまでにかかった疾患や治療の記録などがすぐに分からなかったり、検査や治療に関する承諾が取れなかったりするため治療を開始するタイミングが遅れてしまう

あらかじめデジタルリビングウィルに治療や薬の情報、検査や治療に関する承諾書を登録しておけば、患者が運ばれてきた際に生体認証でその情報を確認し、迅速に治療を始められる。

他にも本人が希望すれば、趣味や生活、嗜好などについても情報を登録しておける。これらの情報は今後、一人暮らしの高齢者をつなぐコミュニティー形成に活用できる可能性がある。

健康には人とのつながりが重要。利用者が趣味について登録しておけば、同じ趣味の利用者同士を集められる。コンサートやスポーツなどのイベントを企画したり、そういった趣味を持つ利用者に向けたイベントを通知したりできる。

北原理事長は、「デジタルリビングウィルは医療の枠を超えた情報のプラットフォームになる。将来的にはデジタルリビングウィルを、八王子市の住民全員が加入するようなプラットフォームにしたい。このプラットフォームは、あらゆる商店の販路にもなりうる。GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)にも対抗できる」と展望しています。

医療のデジタル化の3フェーズ

引用元 https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/01035/00003/?ST=ch_digitalhealth&P=2

分かりやすい話だったので、北原理事長の話をそのまま引用します

医療のデジタル化は、3つのステージに分類されます。

  • ステージ1:業務の改善

医療分野では電子カルテの導入や音声入力システムの活用などが該当します。

  • ステージ2:医療の全自動運転

センサーやIT、AIなどを活用すれば、診断や治療なども含めてほぼ100%自動化できると考えています。今後はセンサーなどから時々刻々と大量のデータが集まってくるようになるので、人だけでは対応することが難しいでしょう。

  • ステージ3:社会システムの変革

社会をトップダウンで変えられると思っている人がいるかもしれませんが、社会を変革するのはボトムアップでしかできません。八王子市を変えられれば、全てが変わります。AIやITの力で変革できるようになってきたのです。

AIやITの活用事例

北原病院ではAIやITの活用も進んでいます。

  • 顔認証による入退室のシステム
  • ヒアラブル端末を通じて看護作業のアドバイスをするAI
  • 手首に装着するセンサーでバイタルデータを取得して不穏行動の予兆を検知するシステム
  • AIカメラについても、撮影した人の表情からパーキンソン病の兆候を検知したり、歩き方から脳卒中やパーキンソン病、要介護状態に至る前段階の「フレイル」の早期発見につなげる技術(今後の開発)

そのうち2つの例を紹介します。

ヒアラブル端末を通じて看護作業のアドバイスをするAIスタッフの技量の差を埋める

若手の看護師と熟練の看護師では、患者を観察してから状況を把握したり状態を予想したりする技量に差があり、差が生まれる要因は経験値です。

熟練の看護師の判断を学習させたAIを使うことで、若手の看護師でも熟練の看護師が何気なく把握していることを確認できるようになります。

例えば看護師が患者の様子を音声で記録すると、内容に応じてAIからアドバイスをもらえます。

開発中のAIのイメージ↑

手首に装着するセンサーでバイタルデータを取得して不穏行動の予兆を検知するシステム

患者に装着したセンサーで皮膚温度や心拍数などを計測することで、不穏行動の予兆を察知する試みです。

不穏行動とは、患者が点滴を自分で抜いてしまったり、暴言を吐いたり暴れたりする行動です。不穏行動を起こす患者は、そうでない患者と比較して入院期間が長引く傾向にあります。不穏行動を起こした患者の受け入れが難しい医療機関があり、患者が転院先を探すのに苦労するためだです。不穏行動を察知して防げれば、病院にとっても患者にとってもメリットがあります

これまでは熟練の看護師が、患者の表情や感情表現の様子、口数などから不穏行動の予兆を察知し、声をかけるなどして防いでいました。「若手の看護師でも熟練の看護師のように患者をケアできるようになれば、これまで個人の能力に依存していた医療の質を向上させると共に、効率よくスタッフを配置できる」ことになります。

北原病院グループについての参考記事

  • まるでテーマパークのような病院!日本の医療を変える医師の挑戦その1~人の痛みを理解し徹底的に患者目線に立った病院作り~
  • まるでテーマパークのような病院!日本の医療を変える医師の挑戦その2~医療の自由化で日本を医療崩壊から救い、医療を基幹産業に育てる~

HITO病院「IoTで病院の働き方改革、スタッフからも患者からも選ばれる病院」

IoTを活用した病院の働き方改革、サービス向上の事例です。

  • 【HITO病院】全国から医師が集まる改革で有名な愛媛の病院~脱PHSで加速する病院の働き方改革、スマホに話してカルテ入力、魅力のある病院理念とトップの人柄&行動力~

名古屋大学病院「100以上の部門のバラバラのデータを一元管理」

名古屋大学病院は公立・公的病院の中で早くから「スマートホスピタル構想」を打ち出しました。

2018年に院内のシステムを刷新し、ベッド数や診療科数の規模が大きい大学病院の中では先駆けてデータの一元管理の体制を整えました。これまでは100以上の部門が医療画像データなどをそれぞれ個別に保存していたが、今回で全ての部門や診療科のデータを一括して管理できるようになりました

「スマートホスピタル構想で目指すデータの活用や医療安全の推進のためには、どこにどのデータがあるのかを把握する体制が必要だった」と白鳥メディカルITセンター長は振り返っています。

引用元: https://www.nu-mitc.org/研究-活動/スマートホスピタル/

名古屋大学は下記2点を目標に掲げていて、データの一括管理はそのベースとなります。

  1. 「スマートホスピタル」院内での医療デバイス管理、医療従事者のワークフロー最適化。
  2. 「地域医療連携」でパーソナライズ化された医療サービスの提供

1の院内オペレーションの効率化のため、名大病院はロボット技術も活用しています。17時以降の夜間、ロボットが、薬や血液製剤、検査検体を病棟に搬送します。ロボットを導入する以前は、スタッフが少なくなる夜間の搬送は看護師が担当していました。「夜間に薬や検査検体を運ときは緊急のケースが多い。緊急時、搬送に人手がとられてしまうのはもったいない」と白鳥メディカルITセンター長は話す。

他にも名大病院は看護師の病院内での動きを可視化したり、患者の脈拍や呼吸、活動量などのバイタル情報をリアルタイムに測定したりするシステムを導入。技術や効果を検証している段階です。

引用元: https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/01035/00004/?ST=ch_digitalhealth&P=3


参考資料

  • IoTが病院とヘルスケア産業にもたらす6つの利点
  • 日本の医療を変える「スマートホスピタル」、これが未来の病院だ
  • 八王子からGAFAに挑む、病院理事長が明かす「医療中心プラットフォーム」とは
  • 国民皆保険のワナにはまる日本をAIが救えるか、ヒントは「倉敷」にあった
  • 医療分野に迫る「2025年問題」、AIやロボットが救世主となるか
  • 名大病院スマートホスピタル構想

 

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1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!