「衣食住足りたらトキメキ求めよ」「トキメキと安らぎのある村社会」日本の医療再生とイノベーションの起こし方のヒントが詰まっています~医療再生~

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「世界を動かす100の技術」

関連参考

のキーワードでもある「再生」つながりで
「医療再生」という本を読んでみました。テクノロジー系の話かと思って読み始めましたが、予想と違い、いい意味で裏切られました。

医療制度の問題、日本の医療再生、イノベーションを起こす、という3つの観点からとても学びの多い内容でしたのでご紹介します。

後半部分は、組織変革やイノベーションを起こす上で、この本に出てきるビジョンや考え方学は大変参考になります。皆さんも是非ご一読下さい。

医療制度の問題についての学び

  • 米国の医療保険制度の問題
    公的保険に加入しているのは全体の20%
    65歳以上の高齢者と障害者:メディケア
    一定の条件を満たす低所得者:メディケイド
    それ以外の人は民間の保険に加入するが、最低でも年間30万/人なので、国民の20%、5,000万人が無保険者。
    盲腸になると300万の治療費がかかり、結果として病気になったら自己破産になる。
    サブプライム問題前まで自己破産の第1位は医療費。

 

  • 米国の保険に対する考え方
    保険料は利益、保険金は損失「メディカルロス」
    保険金支払いを拒否するために保険会社は医者を雇いインセンティブを与える。病院からの支払い請求とそれを拒否する保険会社との間に無駄な交渉が入る。
    米国の医療費は対GDPで17.1% 300兆円、そのうち2割の70兆円は、このような間接経費

 

  • デバイスラグは医療システムに組み込まれた時間差が原因
    米国:ハイハードル・ハイリターン(承認ハードルが高い、マーケット巨大)
    欧州:ローハードル・ローリターン(承認ハードル低い、マーケット小)
    日本:ハイハードル・ローリターン(承認ハードル高い、マーケット中)
    結果として、手間の割りにリターンが低い日本は後回し。そのため日本で世界ルールに精通した治験施設や医師が少なく、コーディネーターなどの人材も不足。加えて医師が事務処理、データ処理など何でもやるため非効率で、日本で治験をやりたがらない、といった構図となっている。

日本の医療再についての学び

  • 医療崩壊=勤務医崩壊
    医師不足ではなく、勤務医が減っていることが根本原因であるという見解が的を得ています。実際医師の数は増えているが、過酷な労働環境、低賃金、医療バッシングなどの問題から勤務医が減っている。大学病院の医局は地方病院へ医師を派遣する役目も担っており、医局員が減ることで、地方病院へ医師も派遣できなくなる。また勤務医が減ることで、更に環境が悪化して、更に勤務医が減るといった悪循環になる。したがって医局員を増やすことが最も重要。

 

  • インセンティブではなく意識改革
    米国型のインセンティブではなく、日本的なよさを生かした意識改革により医局員を増やす部活を基本コンセプトに「トキメキと安らぎのある村社会」がビジョン。働きやすい環境、帰属意識を高める工夫、理不尽を極力排除した人事、ライブ手術などでトキメキをアピール、といった施策を実施。
    この結果、実際に若手の希望者が増え医局員が増えている。これにより医局だけでなく、地方病院への医師派遣も多くなり、好循環に転換している。
    「楽しそうに仕事しよう。学生や研修生の前で愚痴を言わないようにしよう。やせ我慢してでも学生や研修生の前では笑おう。後輩のロールモデルになろう。」という部分が象徴的です。

 

イノベーションを起こす観点での学び
著者の大木先生の生き方そのものが学びです。

  • 大義を持つ「衣食住足りたらトキメキ求めよ」
    「日本で患者さんを治療したい。人に喜ばれたい。」
    1億を超える年棒をけって、10分の1以下の慈恵医大のオファーを迷わず選択できる点がすごい。

 

  • 自己犠牲「誰かのために」
    「私の身体はぼろぼろです。医師からも本格的な治療と長期療養を勧められていますが、私にはそんな時間はありません。大勢の人の痛みや憂いを取り除くため、手術不能の壁に挑むため、後輩がしっかり育ち「トキメキと安らぎのある村社会」が完成するまで、私の「安らぎ」はもうしばらくのあいだ棚上げしておこうと思っています。」
    具体的な行動事例として、ステントグラフトの効果を実証するため、緊急オペに対応できるように、365日、2年間待機し続けた、など自分のことは顧みない姿勢がよく分かります。

 

  • 謙虚な向上心で創意工夫を続ける「完成された手術や医療器具はない」
    もっと優れた手術を開発するにはどうしたらよいか?1日10分でもクリエイティブな時間を作って考える。

 

  • 情熱
    頚動脈ステントでプラークが脳に飛ぶリスクについて、周りに聞いても誰も信じないので、自分で実験装置を自作して立証した。
    検査でなかなか分からない原因についても徹底的に食い下がり、「情熱に負けたよ!」と言わしめる。
    など、溢れるような情熱が本を通して伝わってきました。このような大木先生の生き方から、大木式ヘルニア・メッシュ、ステントグラフト、つまめるハサミ、ずれないメガネ、など数多くのイノベーションが生まれています。

組織変革やイノベーションを起こす上で、この本に出てきるビジョンや考え方学は大変参考になります。皆さんも是非ご一読下さい。

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1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!