癌を撲滅する画期的な新薬と支払い制度~効果があった時にだけ支払いを求めるアウトカムベース(成果報酬型)の支払いが登場~

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癌を撲滅する画期的な新薬

やはり癌って怖いですね。でもこのところ画期的な新薬が登場しています。

  • 「世界を動かす100の技術、全てリストアップしてみました。(その2)人、車、現場、建設、ITの5つの再生。このリスト眺めるだけでトレンドが見えてきます。」

の「人の再生」でも紹介されていますが、画期的な新薬を2つと、支払い制度についてまとめます。


免疫チェックポイント阻害薬

これは「オプジーボ」という薬で一躍有名になったテクノロジーです。

  • 免疫チェックポイント阻害薬:癌細胞が持つ免疫回避の仕組みを妨げる

引用元↓

体内の免疫力を活かしてがんを治療する薬剤で、これまでの抗がん剤とは全く異なるメカニズムで作用します。

人間の身体には、免疫細胞が活性化して病原体やがん細胞と戦う免疫機能があります。一方で、免疫が高まり過ぎると自らの健康な細胞も傷つけてしまうことになるので、私たちの体はチェックポイントで免疫細胞にブレーキをかけて、免疫のバランスを維持します。

がん細胞はこのブレーキ機能を逆手にとって、体ががん細胞を攻撃する力を抑え込みます(これを、がんの免疫逃避と呼びます)。

そこで、がん細胞によるブレーキを解除することで、免疫細胞の働きを再び活発にしてがん細胞を攻撃できるようにしたものが免疫チェックポイント阻害薬です。癌細胞への攻撃力のブレーキを解除します。


キメラ抗原受容体T細胞療法(CART療法)

簡単に言えば、ヒトの免疫細胞の1つであるT細胞を取り出して遺伝的に加工し、がんに対する攻撃力を高めた上で患者の体に戻す、という方法です。

  • キメラ抗原受容体T細胞療法(CART療法):超攻撃型の細胞で癌を撲滅へ

引用元↓

CAR-Tというのは、遺伝子操作で表面に人工的にがんを見つけるレーダーのような化合物をつけたT細胞を意味し、それによってがんをより強く攻撃できるという仕組みです。

ノバルティスが発売したキムリアは、小児・若年者の急性リンパ性白血病患者の8割で効果を示しました

小野薬品工業のがん免疫薬「オプジーボ」でさえも2~3割とされる中、驚異的な治療成績といえます。

しかも投与はたったの1回ですむ、驚異的な成績ですね。

CAT-T細胞の仕組み【2017/12/11追記】

12/8の日経に分かり易い解説記事と解説図がありましたので追記します。
引用元:2017/12/8日本経済新聞

CAR-T治療薬が高額な理由

高額な点も注目を浴びていますが、その理由も分かりやすくまとめられていました。理由は下記2つです。

  • 患者自身の細胞を使うため大量生産によるコスト削減が難しい
  • 特許使用料 遺伝子の導入、特殊な培養技術に、それぞれ別の発明者が特許をもっているため権利者に相当の特許使用料を支払っているとみられる

理由は理解できますが、それにしても高額ですね。他人の細胞を使って大量生産する方法や、iPS細胞の技術を使ってT細胞を大量生産する技術が開発中とのことで、今後に期待です。


アウトカムベース(成果報酬型)の支払い

効果があった時にだけ支払いを求めるアウトカムベース(成果報酬型)の支払いについて考えます。

キムリアは、1回の治療に47万5千ドル(約5300万円)もかかります。日本での承認にあたり懸念は日本の薬価制度になります。

オプジーボでも世間を騒がせましたが、当初患者1人あたりに年間約3500万円かかる薬価が付きました。保険財政を揺るがしかねないとして既存ルールを除外した特例が適用され、17年はじめに薬価が半額に引き下げられています。

この懸念に対する策として業界が期待している方法が、ノバルティスがキムリア発売の際、低所得者層向けに適用した「アウトカムベース(成果報酬型)」の支払い方法です。1カ月後に腫瘍が検出されなかったときにのみ、効果があったとして薬価の支払いを求めるというものです。

「キムリア」の薬価は3,349万3,407円(2019/5/15追記)

引用元↓

高額医薬品として注目されていたスイス製薬大手ノバルティスの遺伝子治療薬キムリア」(一般名:チサゲンレクルユーセル)の国内での薬価が1回の投与で3349万3407円に決まった。厚生労働省が5月15日に開催した中央社会保険医療協議会で、原価計算方式に基づいて算出した案が了承された。5月22日に保険適用され、施設基準を満たした医療機関において治療が受けられるようになる。

ものすごく高価ですが、一方で1回のみの治療で治る人は治ってしまうケースもあります。これを考えると、金額だけを見て一概に高いとはいいきれない、とも言えます。今後、費用 vs 高価を確認する必要があります。

また今回、日本では「アウトカムベース(成果報酬型)」の支払いとはなっていません。

「治らなかった人まで費用を負担すべきか。米国と同様に成功報酬払いを検討すべきではないか」といった議論は今後も継続されそうです。


「アウトカムベースの支払い制度」がイノベーティブな点

なぜイノベーティブだと思うのか?

「買ったものに対する対価」ではなく「アウトカムに対する対価」という考え方

もともと薬を買うのは、病気を治すためですが、効いても効かなくても支払いをしています。効かなかったら払わなくてもよい、というのはこれまでの考え方を覆す考え方です。

人々の暮らしをどう変えるのか?

アウトカムベースの支払いで、我々の暮らしがどう変わるのか?メリットは何か?を少し考えてみましたが、ちょっと難しいです。制度の詳細をよく理解する必要があります。

効かない場合に我々の支払いも不要であれば、大きなメリットがあります。一方で、それだったら、効く効かないに関わらずどんどん処方してもらいたいですよね。効く、効かないを処方前に評価・判断することが非常に重要になってきます。

保険財政のメリットが期待できる制度なので、処方の段階でスクリーニングされて、使用数量が減ることで総額を減らし、国民負担を減らすんだろうと推測します。そうすると、薬の乱用は防げますが、逆に、もしかしたら効くかもしれない人に処方されないケースも出てきて患者さんにデメリットとなるのでは?と思ってしまいます。

いずれにしても、画期的な新薬は明らかにメリットですので、これを本当に必要な人に使ってもらえるようにする制度設計が重要ですね。もう少し勉強してみます。

自分なりに考察してみました結果をまとめました。下記を参照下さい。

  • 「アウトカムベース(成果報酬型)の支払いのメリットについて~本当に保険財政の負担は減るのか?患者へのメリットは?~」

応用できる発想は?

「買ったものに対する対価」ではなく「アウトカムに対する対価」は、今後広がっていく考え方だと思います。私も医療機器メーカーに勤めているので、アウトカムベース(成果報酬型)の支払いについて積極的に考えていきたいです。


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1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!