アウトカムベース(成果報酬型)の支払いのメリットについて~本当に保険財政の負担は減るのか?患者へのメリットは?~

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アウトカムベース(成果報酬型)の支払いのメリットについて

  • 「癌を撲滅する画期的な新薬と支払い制度~効果があった時にだけ支払いを求めるアウトカムベース(成果報酬型)の支払いが登場~」

に出てきた、「アウトカムベースの支払い」について、まだよく理解できていないので少し考えて見ました。

下記引用元の記事を参考にしました。
海外では 「Indication-Based Pricing」 という言葉が一般的のようです。


モデル1:アウトカムベースの売上 >単一価格の売上

4つの図がありますが、いずれも横軸は患者さんの数、縦軸が薬の価値になります。
患者さんは3分類として、左から

  • Indication A:薬が最も効くグループ、例えば完治する。このグループは対価として一番高い価格を支払ってもよいグループ。
  • Indication B:薬がある程度効くグループ。AとCの中間くらいの価値がある。
  • Indication C:薬があまり効かないグループ。あまり価値がない。

現在のような薬による単一価格(Uniform Price)は、患者が利益を受ける大きさにかかわらず一律の値段設定となります。図の上側は、Indication Cの価値と同じ価格が設定されているという想定です。
その場合、売上は、左上の図の緑の部分(患者数×Uniform Price)となります。

一方でアウトカムベース(Indication-Based Price)の売上げは、右上の図の緑の部分となります。
(Aの患者数×Aの価値)+(Bの患者数×Bの価値)+(Cの患者数×Cの価値)
左上と右上の緑の部分、つまり売上を比較してみると一目瞭然です。

売上は 「アウトカムベースの売上 >単一価格の売上となります。つまり、アウトカムベースでは、製薬会社の売上が単一価格よりも大きくなり、結果として保険負担の大きくなる、ということになります。

あれっ、アウトカムベースの支払いでは、保険財政の負担が軽くなるんじゃなかったのかな?という疑問が湧いてきます。ということで、モデルを少しアレンジしてもう少し考えてみました。


モデル2:アウトカムベースの売上 < 単一価格の売上

下図がそのモデルです。上のモデルに加えて、薬が全く効かないグループDも存在する(キムリアのケースで効かない人は払う必要なし)ので、そのグループを追加しました。患者グループは下記4つとなります。
またそれぞれの価格と人数も設定しました。

  • Indication A:薬が最も効くグループ、例えば完治する。このグループは対価として一番高い価格を支払ってもよいグループ。(100万、15人)
  • Indication B:薬がある程度効くグループ。AとCの中間くらいの価値がある。(50万、35人)
  • Indication C:薬があまり効かないグループ。あまり価値がない。(20万、50人)
  • No-Indication D:薬が全く効かないグループ。価値がゼロ。(0円、50人)

アウトカムベース支払いの売上は
100万×15人+50万×35人+20万×50人=4,300万
となります。

一方、単一価格を50万に設定すると、単一価格の売上は
50万×150人=7,500万
となります。

つまり、「アウトカムベースの売上 < 単一価格の売上」となり、最初の結果と全く逆になります。


2つのモデルで逆の結果になる理由

これはどういうことなのでしょうか?
ポイントは、アウトカムベースの価値の大きさ効かないグループDの患者数です。

  • アウトカムベースの価値の大きさとして、グループAの価格
  • グループDの患者数

をパラメーターとして、「アウトカムベースの売上」 と 「単一価格の売上」 の差を計算してみました。
その結果が下図です。縦軸で0よりも上側が、「アウトカムベースの売上」 > 「単一価格の売上」 となります。

横軸がグループDの患者数で、この数が多いほど 単一価格の売上 の方が有利になります。
当然です。アウトカムベースでは、グループDの売上はゼロ、それに対して、単一価格では×人数の売上があるのですから。

グループAの価格毎に、グラフを色分けしていますが、この価格が上がれば上がるほど、アウトカムベースの支払いが大きくなり、単一価格よりも売上が大きくなります。

以上のことから、「アウトカムベースの売上」 と 「単一価格の売上」 のどちらが売上が多くなるか、つまり保険負担が多くなるかは、下記2つの要因で、どちらにでもなる、ということになります。

  • アウトカムベースの支払いの場合の価格設定、特に単一価格との差
  • 効果がない、あるいは小さいグループの患者数

製薬会社は売上を増やしたいので、アウトカムベースの支払いを高く設定しようとするので、やはりここでも価格の審査、設定が重要です。

また薬が効かない人からは対価をもらえないので、製薬会社にとっては、

  • 薬を服用する前に効くかどうかの見極め
  • 薬を服用した後の効果の定量化

が重要となります。これができないと、Dの患者数が増え、Aの価格も上げられません。グラフでみると右下の方に行くことになり、製薬会社にとってはアウトカムベースの支払いでメリットが小さくなります。

右下にいけばいくほど、患者さんにとっては、効かなかったら払わなくてもよい、また保険財政負担も軽くなる、といったメリットが得られます。
でも、製薬会社にとっては、マイナスになるので、薬が効くのかどうかある程度見極められるか、投薬条件をすごく限定するか、などの条件下でアウトカムベースの支払いを推奨することになるだろう、と思います。

ということで、なかなか楽しい分析でした。

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1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!