東芝の悲劇「西田厚聰と東芝崩壊」~テヘランからきた男は何故変わってしまったのか?~

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テヘランからきた男 西田厚聰と東芝崩壊:児玉博

レゾナンスリーディング(参考)で物足りなかったので、最初から最後まで読んでました。

参考:「本当にたった20分で本が読めるのか?レゾナンスリーディング、試してみました(その1)」

「テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅(児玉博 著)」

【201712/10追記】

12/8に西田さんが死去された、という報道がありました。何と私がこの本を読んだ日です。偶然ですがすごく印象に残る本となりました。


西田さんとはどんな人なのか?

「組織を駄目にするのはトップの私利私欲 人災である ~東芝の悲劇~」

では、一言でいうと「トップの私利私欲が東芝を崩壊に追い込んだ」と感じました。

その中で歴代社長の中でも特に戦犯と言われている西田さんが、どんな人で、どのように考え、行動し、どうして東芝の崩壊につながったのか?をストーリーとして感じたいと思いながら一気に読みました。

面白いことに、社長になるまでの西田さんと、社長になった以降の西田さんは、まるで別人のように描かれていました。


社長になるまでの西田さんは素晴らしいリーダー

社長になるまでの西田さんは、明るく闊達、情熱と熱意に溢れ、人を引き付ける魅力ある人間性

幅広く吸収した情報をもとに大胆で夢のある戦略を描き、それを実現するために周囲を鼓舞しながら困難を乗り越え必ず結果を出すリーダー。

として、本当に素晴らしいリーダーとして描かれています。

西田さんの人となりが感じられる具体的なエピソードを整理してみました。

いつの間にか人と打ち解け、人に好かれてしまう庶民的で気さくな性格

イラン工場に西田が来た最初の日、イラン人工員で一杯の工場を案内した。きづくと西田がイラン人工員に交じってなにやら英語で会話をしていた。しかも、イラン人工員も愉しそうに西田とともに笑っていた

相手の気持ちを察することができる

PC販売のために、営業に単に発破をかけるかと思ったら、1台売るごとにインセンティブを与えてモチベーションをあげた。

(西田)「彼らは固定給ではなく、歩合制で生活しているんだ。売上はないから、生活は大変だろう。彼らの尻をひっぱたいても意味がないよ。もっと彼らの生活状態を知っておかないと営業はできないぞ

「何でお前さんがやるとそんなに売れるんだよ。秘訣はなに?」

(西田)「民族が違えば考え方も違う。そうすると、こっちのうりかたも違ってくるのは当たり前だ

欧州はそれぞれ民族が違うこと、歴史が違うことなどを説明し、それぞれの地域にあわせるような売り方をした。

好奇心旺盛。知らないから学ぶ

  • (西田)「この材料は何ですか?接合部分はどうなってますか?この機械のしくみはどうなっているのですか?」何にでも興味を示し、立て続けに質問する。
  • (西田)「経済や政治だけでなく、文明や文化の領域まで、ビジネスを支える人間としての知性、教養、知識ことが問われる」
  • いったいどこの時間があるのだろうか?と思うほどだったけれども西田さんは常に5,6冊の本を呼んでいた。本当にスーパーマンだと思いましたね。
  • 西田に講義を行った原子力事業部の幹部によれば、砂漠が水を吸い込むように原子力というビジネスを理解していった。米国から原子力関連の書籍、研究所を次々と取り寄せては読破していく。机の上に置かれた米国版原子力白書は折り込みだらけになっていった。
  • (西田)「情報を集めろ。そしてそれを重層的にしておけ。判断を下す際に、その判断に深みを与えるのが情報の多寡だ」

夢を語る

  • ロータスを何度も訪問し、その度にロータスがどんなに素っ気無い対応をしても西田が笑顔を絶やすことはなかった。笑顔の西田は情熱たっぷりに相手を口説くのだ。

「ロータスと東芝でパソコンの歴史を変えましょう」

  • 10年後のパソコン市場を考えて欲しい。10年後にどうなっているのか?10年後のパソコン市場でラップトップ型が間違いなく市場を席巻している」西田はおもむろに膨大な数字が書き込まれているノートを開くや、さもノートを読み込むようにして10年後のパソコン市場を取り囲む環境について説明し始めた。まるで催眠術をかけているかのように見えた

数字に厳格

(西田)「数字を生かすのも事業ならば数字に殺される事業もあるんだ

数字について西田は極めて厳格だった。販売目標の設定から予想される利益などの数字は徹底的に詰められた。

人一倍の負けず嫌いで、必ず達成する。

  • できな理由を考える社員が多い中、西田はどうしたらできるのかを考える人だった
  • 諦めない人、諦めを知らない人

諦めないために、あらゆる仮説を立て、その様々な仮説を練り、それを実行していった。やり遂げるまで自分を鼓舞し、部下を鼓舞し続けた。

仕事十訓

東芝ヨーロッパ時代に、西田さんが部下たちに手渡した「仕事十訓」は、本当に西田さんの素晴らしさが凝縮された言葉だと思います

  1. バイタリティを持て
  2. 常に頭脳を酷使せよ
  3. 周囲の変化に挑戦せよ
  4. 他人から信頼される人になろうと努めよ
  5. ルールはルールとして重んじよ
  6. 一度計画したものは、万難を排して完成させろ
  7. 失敗を恐れるな、失敗は次への成功の足がかりだ
  8. 今日のことは今日やっておけ、明日は明日の仕事がある
  9. おのれの時間を大切にせよ
  10. 生きがいのある職場で価値ある人生の創造を

社長になったあとの西田さんは別人に

ところが、社長になったあとの西田さんは、全く別人のように変わってしまったようです。

  • 「笑顔を絶やさずに、理路整然としてビジネスを語り、未来を語っていた西田さんが、数字のことしか言わなくなってしまった。極端に言えば、数字さえ出すなら何でもいいような雰囲気だった。その変わりように戸惑ったし、それからやはりがっかりしました。昔の西田さんじゃないと
  • 西田さんとの会話が面白くなくなっていった。彼は数字のことしか言わなくなってしまったんだ。西田さんの魅力だった、理想とか哲学とかがなくなっていった」
  • (西田)「どうしてもなりたいんだ」経団連会長のポストへの執着

最後のインタビュー

最後のインタビューのところが、本当に印象的です。

  • 後任の佐々木さんに対する批判、批評ばかりで、その佐々木さんを任命した西田さんの責任については一言も言及しない
  • 原子力部隊に対する辛辣な意見と批判。ただの”技術屋”とこきおろす様は唖然とするほどだった。しかし、買収の最高執行者は紛れもなく西田さん
  • 原子力を取り巻く環境は一変し、東芝を取り巻く環境も激変した。あれほど夢を語り、あれほど未来を語っていた西田の口から溢れるように出てきたのは、罵りと批判だった。

筆者もこんな西田さんのこんな姿は期待していなかったはずですし、残念な気持ちがあふれ出るような文章でした。

社長になる前の西田さんは、多くの人が、この人のために働きたい、と思える素晴らしいリーダーだと思います。私もそう思いました。

社長になったあとの変わりように、本当に驚きです。


何故、変わってしまったのか?

何故、変わってしまったのか?西田さんご自身の言葉を2つ取り出して、まとめたいと思います。

  • 後任の佐々木さんの評判が悪いことに対してのコメント

(西田)「社長になると変わるんですよ。器というか、地位が人間を作るんですよ。だから大丈夫と思っています」

  • 人間は保守的なので、人が下す判断の多くは自分勝手で偏見に囚われがち。したがって自分を客観視して物事を判断することが大事。

(西田)「ある意味ですね。人間は保守的なんですよ。要は、どれだけ自分を突き放して見られるかどうかが大切なんだと思います。」

私が思うに、西田さんご自身が、この大事なことを忘れてしまった、あるいはそれができなくなってしまったのだと思います。

その原因は、自分自身の器を過信し、謙虚さを忘れてしまったからではないでしょうか?器を過信し、謙虚さを忘れることで、数字を達成できなかった時に数字の操作を行ったり悪いことは全て他人事のように考え、自己保身に傾いていったような気がします。

これを読んで、常に謙虚であること、自分ごととして考える、ことの重要性を実感しました。

なかなか面白い本でした。

東芝については下記にも記載しています。興味があれば読んで下さい。

  • 「組織を駄目にするのはトップの私利私欲 人災である ~東芝の悲劇~」
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1969年生まれの50歳、会社員。自称「お困りごと解決士」。会社では多くの人がいろんな事に困っています。プロジェクトが進まない、トラブル対応で早急に対策をとらないといけない、業務効率をあげたい、新しいシステムを入れたい、売上をあげたい、コストダウンしたい、など。そんな時、必ず頼りになるのが私です(笑) 元々は核燃料のエンジニア。30歳を過ぎてから社内で様々なプロジェクトをリード、コーチングするプロジェクト屋になる。多くの人を巻き込みながらプロジェクトをリードすることが得意です。オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence、略してOpEx)、プロジェクト・マネジメント(Project Management)、チェンジマネジメント(Change Management)のエキスパート。どうすれば皆さんのお困りごとを解決できるのか?日々学んでいることをまとめています!